私のゆきだるま君


寒い、さむい、いたい。


自身の身を突き刺すような寒さに小さく息を吐く。
仕事の区切りをつけ、玄関ホールへ向かえばもう既に一面白銀世界で私は大きくため息をついた。

愛しい誰かがいればこんな降り注ぐ雪に二人ではしゃいで温め合って甘い時間でも過ごせるんだろうけれど生憎私にはそんな相手はいない。
ならばこの寒い気温と景色は只々煩わしいモノで…


「あーもう…」


二三度乱暴に頭を掻きむしってこの冷え切った世界に一歩足を踏み出す。
会社自宅会社の繰り返し。
何の楽しみもない。けれど不満はない。
只少しだけ、ほんの少しだけ淋しいだけ。



周りはオシャレや恋の話をしていてとても輝いて見えるのに私には何もないから…



まぁこういう生き方もアリだろうと負け惜しみの様に考えを付けながらサクサクと新雪に足跡を付けながら歩けば不意に見える白くて大きいかたまり。




「ゆきだるま…?」


こんな会社の庭のど真ん中にそんなもの作るなんてどこの非常識だよと思っていたが近付くにつれてそれが雪だるまではない事を認識する。
だって大きい。そう、言わせてみれば大体178cm位のどっかの末っ子級に大きい。



「ス、スバル君…何してんの…?」


「…おせぇよ、馬鹿」


もう私は笑いを堪えるのに必死だ。
だってスバル君、すごく不機嫌な顔してるけどその頭には雪がもっさり積もってる。
ご、ごめんそんな格好で怒ってもひたすらかわいいだけだから。


「いつから待ってたの?」


「…………さっき。」



嘘つけお前もうホントこの子は…。
ふいと、鼻を赤くしながら私から顔を逸らせば彼の頭からどさりと雪が落ちる。
同時にもう笑いを堪え切れなくて声を上げて笑ってしまう。


「ふふ、ご…ごめんね待たせて…残業してた。」


「だ、だから待ってねぇって!話聞いてたのかよ花子!」


彼の反論なんて聞こえない。
だってそんなに頭に雪積もらせて待ってないとか説得力なさすぎるんだもの。
可愛いお鼻だって真っ赤だしさ…


「でもどうして私を待ってたの?」


「雪…降ってきたら…、花子が風邪ひくといけねぇと思って…傘、」


「…肝心の傘は?」


「……………あ、」


私の言葉にスバル君はハッとした顔をして顔面蒼白。
そしてそんな彼を見て私は腹筋崩壊。


「わ、笑うな!」


「む、無理…!無理でしょ!あは…っ、あはははは!」


もう限界とおなかを抱えて涙を流して大笑いだ。
この静かな夜に私の声は良く響く。
するとスバル君は眉間に皺寄せながら自身が巻いていたマフラーを勢いよく私に巻き付ける。


「スバル君…?」


「少しは…マシだろ。」


優しく微笑みかけられて思わず赤面。
スバル君はそんな私に満足したのか乱暴に私の手を握って引っ張っていく。
彼の背中は白くて大きくて本当にゆきだるまのようで私の顔はしあわせに緩む。


「ホントは傘どころじゃなかったんだよ…花子が心配で、気が付いたら走ってたんだ…」


「え、何スバル君。聞こえなかった。」


「独り言だバーカ」



振り返り意地悪な顔でスバル君は言うけれど聞こえなかっただなんて嘘。
しっかりと私の耳に彼の可愛い言い訳は届いている。
けれど聞こえないふりをしたのは図体デカいくせに照れ屋なスバル君の事を考えたから。


「スバル君…ありがとう」


「るせぇ馬鹿花子」


真っ白な雪に一人きりだった足跡が今は二人分。
どうやら私も彼のお蔭で他の女の子達の様に輝くことが出来そうだ。
そう考えると先程までの淋しい気持ちなんて吹き飛んで静かにふへへと笑っていた。



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