沢山食べる君がスキ


私の中はいつも空っぽ
だってそれは大好きな大好きな彼が望んだことだもの。



「ふふ、可愛いなぁ花子さんは。はい、あーん」



「あー」


言われるがままに口を大きく開けると
ひょいっと甘い甘いショートケーキが放り込まめる。
そのままもぐもぐと口を動かすととても嬉しそうな彼の顔。



「まだまだ沢山あるから、ね?」



「うん」


にこにこと二人して笑いあうこの瞬間がとても幸せ。彼の言う通り周りは綺麗なスウィーツであふれかえっている。片手にはフォーク、そしてもう片手にはテディ。
愛しい愛しい彼とのこんな時間はもうどれだけ経っただろうか。


「ねぇねぇカナト君、テディはケーキ要らないの?私ばっかりで申し訳ないなぁ。」



「大丈夫だよ。テディも花子さんの美味しそうな顔が見たいって…」



「ふふ、テディは優しいね。」



「………ねぇ、僕は?」



私がテディに微笑みかけると少し頬を膨らませて拗ねてしまった彼に苦笑。
馬鹿だなぁ、私にカナト君以上に好きなものなんてあるわけないのに。


「カナト君が一番大好きだよ。」


「本当?うれしい…はい、どうぞ?」


「あーん」


機嫌を直したカナト君は今度はトロトロのプリンを私に差し出した。
そして私はそれをまたさるがままに口に運ぶのだ。



「今日も沢山食べたね…さぁ口をあけて?」



先程よりも微笑みを深めた彼が優しく私にそう囁くから彼の言葉に従いまた大きく口をあける。沢山宝石のようなお菓子を放り込まれた後は必ずこの行為が行われる。


「さぁ…いっぱいいっぱい苦しんでね?」



「んぐ…っ」


彼の言葉と同時に喉の奥の奥まで突っ込まれる指。
そして込み上げる嘔吐感を抑えようとはせずにそのまま彼の指に身を任せる。






「ぅ…、う…」


「これで全部かなぁ…?ん、」


「ぅえ…!え…っ!」


先程まで食べていたものを全て吐き出して涙を流しながら肩で息をしていると確認作業の様に再び指を入れられてまた嘔吐感が込み上げるが
出てきたのは只の胃液だけ。それを見たカナト君はまた嬉しそうに微笑むのだ。



「ああ、よかった。これで全部みたいですね。」


「ぅ…ん、」


そっと震える手で、私の唾液や胃液などで汚れてしまった彼の手を取って
ゆっくりゆっくり、音を立ててそれを舐めとる。ちゅっちゅっと可愛い音だけが部屋に響いてカナト君はまたその可愛らしい顔を笑顔にしてくれる。
嗚呼、嬉しいなぁ。


「かわいい、花子さんかわいい…」


「ん、」



優しく抱き締められて私の顔も笑顔になる。
嬉しい嬉しい嬉しい。
カナト君に可愛がってもらって愛されるだなんてこんなに嬉しいことはない。


彼に可愛がられるためなら幾らでもお菓子を放り込むし、幾らでも吐いて捨てる。
私の胃袋は貴方が望むからいつだって空っぽなの。


「ねぇねぇカナト君、私おなかすいちゃった。」


「ああ、そうだね。花子さんのおなかの中を満たすのはお菓子じゃないもの…」


そう、私の世界を彩るのだって
私の欲望を満たすのだって
私の空腹を満たすのだって
全部全部全部カナト君だ。
私のすべてはカナト君で構成されなきゃおかしい。



「ねぇ、カナト君。頂戴?」



首を傾げたら彼はまた嬉しそうに幸せそうに微笑んだ。
いつの日だったかこんな私達を見た人がおかしいと言っていたけれど一体どこがおかしいのか分からない。
自分のすべてを好きな人でいっぱいにしたいと思う事は全然おかしくないのになぁ。


「さぁ、花子さん。僕をあげるよ?たくさんたべてね…?」


その言葉を合図に私は嬉しさのあまり彼の唇に噛み付くのだ。



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