死にたがりに救済を
「…っ!…っ!」
「大丈夫…大丈夫だ花子…ゆっくり息を吐け…そう、イイコだ。」
「ぅ…ぁ…はっ、」
息が出来ない彼女を優しく抱き締めて、軽く背中をさすってやる。
嗚呼、このような姿、誰かが見たらなんというだろうか。ありきたりのように、可哀想だとでも言うのだろうか。馬鹿馬鹿しい。
「ぁ…ル、キ…ルキ…もう、やだ…や、」
「花子…愛してる…愛しているから、そんな事…」
「うそ…うそ…!もういい、もういいよ…!嗚呼、愛してるのなら殺して…死なせてよ!」
「花子…!」
ヒステリックに叫び散らす彼女を抑える様に抱き締める腕に力を込めた。
それでも彼女は叫ぶことも暴れることもやめようとはしない。
薄暗い部屋に響くのは悲痛な彼女の泣き声だけだ。
きっと花子にとって生きているというだけでこの上ない苦痛なのだろう。
出来ることならば俺達の手で彼女をその苦痛から解放してやりたい。
けれど、それは出来ない話なのだ。
「愛してる…愛してるんだ…!」
なにより、だれより。
だからそんな愛する者を手にかけるということは出来ない。
いっそこの叫び散らす口を塞いで身体でも奪ってしまった方が良いのだろうか。
けれどそんな事をしてしまえば愛など欲を吐き出すための戯言だと、彼女は思うのだろう。
馬鹿にされ
笑われて
蔑まれて
辱められ
彼女は遂に自身の価値を見失ったのだ。
もう少し早くに出会っていればこんなことにはならなかったのだろうか…
なんて、どうしようもないことを考えてしまう。
「花子、花子…愛してる…愛してる」
「ん…っ…ル、キ…」
まるで呪いのように繰り返し囁かれる愛の言葉。
そんな不安定で朧な言葉の鎖で今日もまた彼女を生者の世界へ繋ぎとめる。
彼女は優しい。優しいから自分の所為で悲しむものがいると見せつけてやると自ら死を選ぶと言う事はしない。これは、俺のエゴだ。
揺れる瞳に小さく口付けを落とすと今にも闇に消え入りそうな声で俺の名前を呼ぶ。
俺は彼女自身が消えてしまわないようにとしっかりと腕に抱きもう一度、呪いの言葉を紡ぐのだ。
「誰よりも、お前を愛しているよ。」
人間だというのにひどく冷えたその体は只々、愛おしい。
もし、もしお前を救えるというのならば誰だっていい。
俺が英雄じゃなくてもいい。
お前が幸せだと、笑えるのなら、それで、いい…
誰でもいい。
御伽の国の王子様、どうかこの死にたがりを救ってやってくれ。
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