ぎゅって、ね?
「もーもーもー!たまには私がシュウを抱き締めたい!」
「ん〜?」
後ろから私をぎゅうっと抱き締めているシュウに盛大に叫ぶと相変わらず眠そうな返事。
いつもいつも私ばっかりシュウに抱き締められちゃってさぁ
私だってシュウの事ぎゅってしたいよ。
そんな事を考えていたらシュウはするりと絡めていた腕を離してそのまま私の体の向きを反転させる。
向かい合わせになればもう既に眠りかかっていたのか、トロンとした瞳でこちらをじっと見つめるシュウ。
そして徐にゆるゆるとその両腕を広げる。
「ん、いいよ…抱いても」
「言い方おかしい!」
今のシュウがそんな事言うとなんか卑猥に聞こえるんだけど!
思わず顔を赤くするとシュウは意味が分からないと、ゆったり首を傾げる。
ああもうコイツ半分寝てるなぁ。
「何、花子が俺の事抱いてくれるんじゃないの…?」
「だーかーらー!言い方よ!恥ずかしい!」
ぎゃんぎゃん喚くと、先程から頭にハテナマークを浮かべていたシュウがようやく私が騒いでいる意味を理解したのかニヤリと意地悪に嗤う。
「…………えっち。」
「ぐぬぅ!何だソレ!それじゃまるで私が…ってぅわぁ!」
挑発的な台詞にまんまと乗って喧嘩腰に叫び散らせばグラリと反転する視界。
目の前には意地悪なシュウの顔。
…おい、さっきまで寝そうだったじゃないか。
「違わないだろう?こういうの…期待してたんだろ、淫乱花子ちゃん?」
「期待していない!断じて!断じてだ!」
「ああもう、煩い…」
めんどくさそうな口調とは裏腹に熱くて激しいキスがじわりじわりと私の抵抗を無効化していく。
唇が離された時はもう既に何もできなくて只々呼吸を整えることしかできなかった。
「ほぉら、花子…」
「シュ、ウ…」
彼が私の腕を優しくつかんでそのまま自身の背中へと持っていく。
そしてまたくたりと首を傾げて艶やかな笑顔。
嗚呼、もう…本当にそう言う顔は私だけにしてよね。
「ぎゅって、シテ?」
全く、いやらしいのはどっちだよ。
私は彼のご命令通りに回された腕にぐっと力を込めて冷たいその体を抱き締めた。
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