仲直り〜アヤト君の場合〜


「おいいい!花子!花子はどこだ!」


逆巻家にアヤト君の怒声が響き渡る。
そしてこの寒空の下たき火を楽しんでいる私の元へ息を切らせながら走って来た。
顔は怒りに満ち満ちていて、青筋まで立ってしまっている。


「てっめぇぇ…!俺のお宝どこにやりやがった!」


「………ここ。」


私は彼の怒鳴り声に小さく返事をしてオレンジ色に燃え上がるたき火を指さす。
するとアヤト君の顔はみるみる青くなりまた大きな声で喚き散らす。


「俺のエロ本がー!!」


「アヤト君うるさい。」


そう、私はたまたま彼が留守の時にアヤト君のお部屋にお邪魔したのだが、そこで見てしまった。散乱する厭らしい本達を。
そこからの私の行動は素早いモノだった。
あっという間にそれらをかき集めて今に至るという訳だ。


「花子、てめぇ、コレ俺様がいつから集めてると思ってる!10年以上前からだぞ!?」


「知らないよ!アヤト君のエロガキ!」


「男なんてみんなこんなモンだよ!」


私に掴みかかっておでこをゴチンとぶつけて睨んでくる彼はすごく怖いけれど
私にだって譲れない事がある。



「わっ、私がいるのに!こんなの!こんなの!」


「な…っ!だ…はぁ!?」



私の叫びに一瞬怯んだアヤト君だったけれど
もはや意地になっているのか再び怒った顔になってしまった。
こうなったら私だって意地になってやる!負けないんだから!


「んだよ!花子がいつでも好きにヤらせてくれる訳じゃねぇだろ!?」


「アヤト君がしたいならいつだっていいよ!」


「はぁ!?む、無茶言ってんじゃねーよ!」


顔を真っ赤にしてしまった彼は一際大きな声で怒鳴るから遂に私は堪えていた涙をボロボロ流してしまう。


「無茶じゃないもん…あんな本にアヤト君取られるくらいなら…私…私、」


「んだよ…俺様の事好きすぎだろお前、」


「大好きだよ!大好きだもん!だからエロ本にアヤト君取られたくないよー!わぁぁん!」


「だぁぁぁあ!声でけぇよ!馬鹿花子!」


アヤト君が慌てて私の口をその大きな手で塞ぐけれどもう既にそれは遅くて
誰かの手がポンっとアヤト君の肩に置かれた。


「アヤト君…三次元の花子ちゃんがいるのに二次元のペラい雑誌に浮気とか…サイテー」


「う、うおおおおお…!て、テメェにだけは言われたくねぇよライト!」


ライト君がアヤト君をまるで虫けらを見るような目で蔑んだものだから、彼の堪忍袋の緒は易々と切れてしまってライト君に思いっきり殴りかかるけれど
それはいともあっさりとかわされてしまい、遂に完璧にキレてしまったアヤト君はライト君を追いかけまわす。


「おい花子!先に俺様の部屋行ってろ!」


「な、なんで…」


どうしていいか分からないでオロオロしていると思った表情のままアヤト君が叫ぶから
零れる涙を拭って訪ねてみると意地悪な彼の微笑み。


「仲直りの記念に抱き潰してやんよ!」


「い、いつ仲直りしたって言うのよ!アヤト君の馬鹿ー!」


「うるせぇ!俺様が仲直りっつったら!仲直りなんだよ!」


ライト君に何度も殴りかかりながらもそんな事。
もうもうもーう!


「アヤト君の馬鹿!俺様!だいすき!」


「ば…っ、最後のは悪口じゃねぇだろ馬鹿花子!俺様の方が大好きだ!ばーかばーか!」



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