大失敗デート
それは俺と花子ちゃんが付き合い始めて間もない日の出来事…
「はーあ、サイアク……まーさか花子ちゃんが行きたいところってこういう場所とかさぁ」
色々紆余曲折があって付き合うことになった女の子
名前は花子ちゃん。
まぁ俺の目からしてみればちょーっとは可愛いかなって子で
今日はそんな彼女と初めてのデート。
「やっぱ初デートで失敗したくないからねぇ」
デートの待ち合わせ場所に小さく鼻歌を歌いながら上機嫌。
やーっぱせっかく付き合うことになったんだし、初めてのデートでアイドルのこの俺ががっかりされるとか意味わかんないから
事前に彼女の頭の中を読んで花子ちゃんの描く理想のデートコースってやつを既に組み立ててきた。
これでデートに満足してもらったらギブアンドテイクで
血でももらっちゃおうかなー…まぁ不満な訳がない
だって今日のデートコースはデートする本人の頭の中そのものなんだから
まぁその内容がアイドルの…というか俺にとっては最高に理解できないものなんだどね。
「花子ちゃーん!おまたせっ!!待った?」
「うん待った」
「え」
待ち合わせ時間5分位遅れて待ち合わせ場所につけば当たり前だけど先に来てた花子ちゃんになんの悪びれもなく近づけば
開口一番に眉間に皺寄せた彼女から紡がれた言葉にちょっぴりカルチャーショック。
へぇ、彼女って言っても俺の餌のくせに俺と対等だって思ってるんだ…面白いね。
少し目を細めて彼女を見やるも、今日の完璧なデートで感激させて見返りに血を求め、主従の差をハッキリさせてやろうと思い
気持ちを切り替えてニッコリ営業スマイルを作ってやった。
「そんな怒んないでよ〜!ほらほら、デートいこ?今日はねーとっておきのコース考えてきたんだっ」
「…………そうなの?」
ぐいぐいと強引に腕を引っ張ってそんな台詞を紡げば
ようやくその眉間の皺は取れて少しばかり空気が丸くなった気がする…
あーあ、ほーんとドイツもこいつもチョロイなぁ……
ま、今回はここから俺が頑張らなきゃいけないんだけど…
俺の精神……このデートコースに耐えきれるかなぁ
彼女の手を引っ張って今から足を運ぶ数々の………
その………腐海にゴクリと息をのんだ
「た、た、た、たの……楽しかったねぇ花子ちゃ……うぷ」
あれからもうすっかり日は暮れてしまって
俺のテンションもすっかり暮れちゃってしまってる…
や、もう今日は花子ちゃんにとって最高なデートだったはずだけど見返りの血は後日でいいや…
何かもう……今日で何個新しい扉強制解除させられただろ思い出しただけでやばい
今日俺達が訪れたのは腐海……
言うなればホモ、薔薇、そういう薄くて少しだけ大きな本がひしめき合ってるお店ばかり
や、初めに付き合う頃に花子ちゃんに
ちょーっとアニメとかゲームとか好きかもしれないとは聞いてたよ?
聞いてたけど……まさかのその登場人物の男同士を物理的に繋げる本大好きとか聞いてない
この数時間でそういう本が「同人誌」って奴だってことと
ピンクのシールで18って数字が書いてある本はパンドラの本だってことは学んだ…
一冊うっかり見ちゃったけど、もう何だか色々つらい
まぁけどこれが花子ちゃんの抱いてた理想のデートならまぁ
別の日に見返りも完璧だろうしよしとしてやろう
「コウ君」
「ん?なーに?嗚呼、いいよいいよお礼なんて……お礼は後日ゆーっくり、」
パァンっ!!
ぐったりと肩を落としていればふいに名前を呼ばれて
てっきり「理想のデートができた!コウ君大好き!!」って言われると思って
今はそれどころじゃないからテキトーにあしらってやろうとすれば響き渡ったのは大きく乾いた音
そして左頬に酷すぎる痛み
「ちょ…オマエ…!何するのさ!!折角今日俺が目を使ってお前の理想のデート………っ、花子、ちゃ」
「コウ君のバカ」
数秒後、俺は彼女にビンタされたと認識してブツリと何かが切れてしまって
目の前の彼女の胸倉を掴み上げたけれど目に入ってきた花子ちゃんの酷く怒っているようでがっかりしたような…
それでいて裏切られたような酷く悲しそうな表情に思わず言葉が詰まった
「花子ちゃん………」
「コウ君のバカ、アホ、ボケ、総受け」
「え、は、え最後のソウウケって何?え?」
どうしてだかその表情を見てしまえば
胸がぎゅううううと酷く死んじゃうんじゃないかってくらい締め付けられて
耐えきれずそのまま彼女を強く強く抱き締めた。
すると弱弱しく俺の背中に回される腕に
今度はぐっと泣いちゃいそうになってようやく…そこでようやく俺はとんでもなく酷い事をしてしまったんだと自覚したんだ
「花子ちゃん、花子ちゃん、今度もう一度デートのやり直しさせて?今度は俺、目使わない」
「今度じゃなくて私には一生使わないで……総受けコウ君」
「や、だからそのソウウケって一体……」
ぎゅうぎゅうと、酷く悲し気な彼女を強く抱き締めて
小さな誓いをひとつ
うん、俺…
もう二度とズルしない
今度から俺が自分で君の事を考えるよ…
ってあれ、俺…花子ちゃんの事、彼女といえど餌だとか主従をとか言ってたのにおかしいなぁ
「花子ちゃん、ごめんなさい」
どうしてだか彼女の酷く悲しい表情を見たら
もうそんなのどうでもいいって思っちゃったんだ。
酷く痛む左頬に苦笑しながら
未だに酷く落ち込んじゃってる最愛を必死に宥める…
初デート
格好つけるつもりが盛大に大失敗
けどその代わり
ひとつ、彼女を付き合っていくのに大事なことを学んだ気が…する
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