【September】Do not alone
酷く暑い夏がようやくすぎて…
それでもやっぱり急に過ごしやすくなと言う事はなく、残暑が続いていた。
そして私の体があの日から…一度真夏の暑すぎる部屋である意味死にかけた日から少しおかしい。
「ん…ぅ、」
ふらふらとおぼつかない足取りで廊下を歩く。
どうしたんだろう…最近体がおかしい。
夏に脱水症状とか起こしたり今年はいつも以上に暑かったから体がおかしくなったのだろうか。
「花子、平気か?」
「………?シュウ?」
「…花子?おい、花子!」
少し視界がぼやけてしまった時に聞こえたシュウの声
声のする方に向いたと思ったんだけれどどうしてだか辺りは真っ暗で何も見えない
それにシュウの声…ちょっと遠くなってる?
「え?シュウ…どこ?えっと声もあまり聞こえなくて…ええと、」
「…くそっ」
オロオロとその場に立ち尽くしていればまた何か小さな声が聞こえたような聞こえないような…
瞬間体がどうしてだか宙に浮いてしまって酷く上下に揺れたので怖くなって手を必死に泳がせて何かに捕まろうとしたけれど何故か手に力が入らない。
布みたいな感触の何かに触れるのが精一杯だ。
「花子、花子…聞こえるか?もう目は見えないみたいだけど…くそ、頑張れ…頑張れよ。」
「?…??…シュウ?あ、…ぅ、」
ようやく耳に聞こえたその声はいつもより酷く震えていてとても近い。
と言う事は私はもしかして今シュウに抱え上げられていて何処かへと運ばれている途中なのだろうか。
そんな事を考えていた瞬間、突然全身が酷い痛みに襲われた。
「あ、…あっ!?…んぅ…ん、」
「大丈夫…大丈夫だよな?…そうだろ?花子…」
痛い、苦しい、怖い
もう何も見えない目をめいいっぱい見開いてびくんびくんと体が痙攣を起こすのに逆らえず呼吸さえひゅっひゅと浅くなる。
そして震えっぱなしのシュウの声での言葉で今自分が置かれている現状をようやく把握した。
嗚呼、私…遂に体が造り替わるんだ。
「ぅ…しゅ、…あ、うぁ…シュウ…っ」
「花子、花子…大丈夫…大丈夫、だ」
何も見えないまま必死に手を伸ばすとすぐに何かが触れて包み込まれた。
気が付けば体もふわふわなものに包まれている感覚がしたので恐らくここはベッドの上だろう…
もう香りを感じることが出来ないのでここがシュウのベッドなのか私のベッドなのかさえ分からないけれど。
ぐっと体全体に強い圧迫感を感じる。
そして「花子、花子」と何度も私を呼ぶ声が酷く近くなったのでシュウに抱き締められているのだと理解した。
…ホントなら今すぐに彼を抱き締め返して「大丈夫」って言いたいのにそれさえもかなわない。
今の私に出来る事と言えば息も絶え絶えに彼の名前を呼ぶ事だけである
「ひ…っひ…っ、あ、あ、あ」
「う…くそ…くそ…っ!」
ぐっと潰されるんじゃないかと言う位体が圧迫されて一緒に感じる震え。
どうしよう…私、今シュウをすごく不安にさせてる。
私もだけれどきっとシュウも今不安で怖くてどうしようもないんだろう…
声も体も震えてしまってるシュウに手を差し伸べたいけれどもう感覚がない。
全身の細胞ひとつひとつがボロボロと崩れ落ちてしまう感覚に絶望が心に覆いかぶさろうとしてしまう。
でも決めたんだ。
私は決めた。
この約一年間の間でシュウに愛されて私もシュウを愛して決めた。
絶対に彼を独りにしないと。
精一杯、人間として恐らく最期の力を振り絞って私は彼にその気持ち全てをぶつけるように一つの表情を作った。
「………こんな時まで笑うなよ、馬鹿花子。」
涙に濡れきった今までで一番震えた声で紡がれたその言葉は
泣いているのにも関わらず酷く幸せそうな声色だったので
私は最期にこの声と言葉が聞けて良かったと、意識を深く深く闇のそのまた奥底へと静かに落として消した。
大丈夫、大丈夫だよ。
絶対に独りになんてしないからね?
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