12:リセットボタン


以前と違った道のり
以前と違ったルート
以前と違った行動


以前と違ってひとりきり


「あの、花子…ちゃん?」


「なんでしょうか。」


おずおずと遠慮がちに声をかけてきたのは小森さんだった。
嗚呼、相変わらず可愛らしい人だなぁ。


「この前の、事なんだけど…。」


「大丈夫ですよ。誰にも言いません。」



ニッコリと張り付いた笑顔でそう言ってあげるとほっとしたように微笑み「ありがとう!」と言って去って行った。
そんな彼女の背中にひらひらと手を振って、一つ溜息。



早いものであれからもう一週間がたとうとしている。
私はあの日からルキさんを避けるようになった。声をかけられても聞こえないふり。
そもそも行動パターンをまるっきり変えて彼の目に映らないようにしたのだ。



私は彼の事が好き



それを自覚したのは皮肉な事に彼の瞳が私以外の女の子を映しているときだった。
そして同時に私だけ、私だけを見て、愛してほしいと醜い独占欲も生まれたのだ。
この感情はとても気持ち悪い。だから、私は彼に関わる事をやめた。


そして後は時間がこの恋心も嫉妬も独占欲も全部忘れさせてくれるのを待つだけだ。
なに、最初に戻ったと考えればいい。失くしただなんて考えるからつらいのだ。


次の授業が行われるのをただひたすらにぼーっと机に突っ伏して待っているとバーン!と大きな音を立てて教室の扉が開き女子生徒達の黄色い声が沸き起こった。
なんだ、なんだ。どっかのアイドルでも降臨したか?
…ああ、そう言えば彼の兄弟にもアイドルいたなぁ。



「花子ちゃん!花子ちゃんいる!?」



大きな可愛い声は、なぜか私の名前を叫んでツカツカツカと足音はだんだん近づいてきて、


バァン!


机が大きく揺れたから、のそりと顔をあげれば
すっごく不機嫌なアイドル様の顔。もしかしなくても相当怒ってらっしゃる。



「コウ、さん…?」



「来て」



がっしり乱暴に私の腕を掴んでズルズルと引きずって教室を出る彼。
私は訳も分からずその歩幅についていくのに精一杯だった。廊下をずんずんと歩いている中空しく授業開始のチャイムが鳴り響く。



「あ、の。授業…私、」


「うるさい。黙って。今からルキ君のとこに行くんだから。」


「!!嫌…っ!」


ルキさんと言う単語に私はビクリと体を震わせ足をつっぱってその場に踏みとどまる。
それを見たコウさんの眉間のしわは更に深くなって有無を言わさず私を抱きかかえて再び歩き出した。



「はな…っ離してください!!会いたくないんです!!」



「ルキ君!!」


大きな声で彼の名前を呼んだから、びっくりして言葉を詰まらせる。
コウさんは私を抱え、前を向いたまま歩き言葉を続ける。


「ルキ君、もうずっと部屋から出てこない!ご飯も食べてない!血も吸ってない!!」


その言葉に私は驚きを隠せないでいた。



「なん…で」



「全部…全部花子ちゃんの所為でしょ!?責任取りなよ!!」


言葉はすごく怒っているのに
コウさんの顔が今にも泣きだしそうな顔をしていたから私はそのまま何も言わずにおとなしくすることにしたのだ。



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