18:堂々巡り
あれからまたルキさんは忙しい日々を過ごしている。
彼曰く“あのお方”の命らしい。
頭の中ではちゃんと理解している、つもり。
だけれど心のどこかでもやもやとお世辞にも綺麗とは言えない気持ちが渦巻いていく。
最近、彼とお付き合いするようになってから私は変わったと思う。
全てがどうでもいいと、愛されるのも諦めていた。
別にそれでいいと思っていたし、生きていくのに何ら支障もなかった。
けれど最近の私ときたらどうだ、いつもいつも頭の中は彼の事でいっぱいだ。
更には彼に愛されていたいなどと随分欲張りな事を考えてしまっている。
何だかバラバラに壊れていた自分自身が、彼の手によって組み直されていっている気になる。
もし、もし…だ。私が完璧に彼によって組み直された時、彼はどうするのだろうか…そのまま私を愛し続けてくれるだろうか?
それとも…
完成したパズルに執着する必要性はあるのだろうか?
ふいに辿り着いた疑問は一気に不安に変わり私はぶるりと体を揺らす。
彼が好きになったのは全てがどうでも良くて自身が憎い誰も愛せない私であって今の彼一色で愛されていたいと必死に願う私ではないのではないだろうか。
では私はどうすればいい?
彼に愛されるためには壊れたままの方がいいのではないか。
ぐるぐるぐるぐる。
無意味な悩みと考えが頭の中で高速回転する。
今考えていることはあくまでも私の仮説にしかすぎないけれど、でも実際あの日から、彼と想いが通じ合った時から血も吸われていない
それってつまりそう言う事じゃないのか?
「どうすれば…いいんだろ…」
「何か悩み事か?」
「…ルキさん」
不意に後ろからの声に振り向くと数日振りの彼。
まさか貴方にどうすればこれからも愛されるかを考えていましただなんて言えるはずもなくとっさにいつもの張り付いた笑顔で返事をする。
「いいえ、特に何も。」
「………花子、」
すると彼の顔は悲しげに歪んでしまって
その大きな手で優しく私の頭を撫でる。
「俺はお前が何を考えているか分からないが…俺の前で“その顔”だけはやめてくれないか。…辛くなる。」
「ごめ…なさい」
…無意識なのだろうかこの人は。
張り付いた笑顔と本当の笑顔と、こう簡単に見抜かれてしまってはどうしようもない。
それにその台詞、まるで自分だけは特別でいたいというような言い回しじゃないか。
ねぇ知ってますかルキさん。
貴方のそういう言葉、じわりと私の独占欲を満たしていくことを。
「ああ、まだそちらの顔の方が良いな」
「ル、キさ…」
不安と不安と不安。
沢山重なって私はこの気持ちを整理しきれなくて只々彼の前で情けなく涙を流すことしかできなかった。
貴方は壊れた私と組み直された私とどちらを愛しているの?
悲しい疑問はいまでも宙ぶらりのままだ。
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