21:無知からの爆弾発言


以前カールハインツ様が私の血はまずくはないと保証してくれた。




けど、不味くはないからと言ってルキさんに飲んでもらえないのなら意味はなくて…
どうすればいいのかとうんうんと暗中模索する中、ふと前ルキさんが言っていた台詞を思い出した。




「そう言えば…血って、味変わるんだった。」




以前ルキさんが「血の味を変えられてもおかしくはない」と言っていた。
と、言う事はだ。吸血鬼の皆様はどうやら人間の血の味を変えることが出来るらしい。
私の血が不味くなくても、もしかしたらルキさんのお口には合わないのかもしれない。
だったら私に出来ることと言えばただ一つだろう。




「…よし、」



私は意を決して携帯を取りだした。






「どうしたの?花子ちゃんが俺達にお願いしたいことって、珍しいねぇ〜」


「俺馬鹿だからあんま難しい事はできねぇぞ?」


「でも…花子が望むなら…がんばりたい…な」



お忙しい中呼び出してしまい大変申し訳ない気持ちがずしりののしかかるが
今はそれよりもお願いしたいことがある。


コウさんはジュースを飲みながらニコニコ
ユーマさんはシュガーちゃんをかじりながら難しい顔
アズサさんは愛用のナイフをいじりながらきょとん
私は小さく咳払いをして彼等にお願いしたいことを口にする。


「あの、私の血の味を変えてほしいんです。」


『ブフォ!!』


私がそう言った瞬間三人はそれぞれとんでもないリアクションで返してきた。
あれ、私は別におかしなことを言っていない…はず。


コウさんは飲んでいたジュースを盛大に吹き出すし
ユーマさんはかじっていたシュガーちゃんをのどに詰まらせる。
アズサさんに至っては衝撃で思いっきりナイフで腕を切ってしまった。


「な、何言っちゃってんの花子ちゃん頭大丈夫!?」


ガクガクと私の肩を掴んで勢いよくコウさんが前後に私の体を振る。もう顔は真っ青だ。一体何だというんだ…


「や、あまりルキさんにお手間をかけさせたくないのでもし宜しければ皆さんに味をと…」


「やややや寧ろルキにしか無理だろ!?お手間かけさせてやれよ!」


ユーマさんは真っ赤になって私を怒鳴りつける。え、ヤダすごく怖い…


「折角なのでこっそり味を変えてサプライズをと思ったのですが…」


「…それは…とんでもない、サプライズ…だよ、」


少ししょんぼりしていると
アズサさんが何故か憐みの目で私を見つめていた。うん…彼のこういう目は初めて見たかもしれない。

ていうかさっきから三人の様子がとても変なのだがどうしたのだろうか


「あ、もしかして味を変えるのって結構大変だったりするんですか?」


「や、大変っつーか、簡単っつーか…」


湧き出た疑問を口にすれば目を泳がせる三人何なんだ…
すると徐にユーマさんが私を担ぎ上げてズカズカとルキさんの部屋に向かって足を進め始めた。


「え、あのユーマさん?」

「とにかくだ!血の味を変えてぇならルキにしてもらえ!」


「そーそー♪ま、花子ちゃんなら大歓迎なんだけどぉ」


「俺達…まだ、死にたくない…から」


バーンと勢いよく彼の部屋の扉が開かれてまたいつかの日の様にぽいっと放り込まれた。
そして今度はあろう事かガチャリと鍵のしまる音。
正直彼らの行動が理解できない。


「花子?どうした、アイツ等に放り込まれて…」


「あ、あの…」


先程まで静かに読書をしていたのだろう
パタリと手に持っていた分厚い本を閉じてこちらに歩み寄り優しく頭を撫でてくれるルキさんに思わず目を細める。


「えっと、血の味を変えたくて…」


「は?」


私の言葉にルキさんの手がピタリと止まる。
あれ、まただ。なんでこんなリアクション?


「それで、コウさん達にお願いしたんですが…」


「はぁ!?」


滅多に聞く事のないルキさんの大きな声に思わずビクリと体を揺らす。
どうしよう、すごく怖いんだけれど…


「でも、ルキさんに変えてもらえって…言われて」


「当たり前だ!!」


更に大きな声で私を怒鳴りつけるルキさんにもはや涙目だ。
どうして血の味を変えるだけでここまで怒られなくてはいけないのだろうか訳が分からない。
けれどそんな私をルキさんはいつもより強い力で抱き締める。


「ふざけるなよ、俺をここまで溺れさせておいて今更俺以外の男に血の味を変えてもらうだと?そんな事許すはずないだろう」


「え?は…、え?」



ちょっとまて、ちょっとまて
ルキさんの口調から察するにどうやら血の味を変えると言う事は何やら大それたことのようだが
一体何なんだ…


「あ、の…ルキさん?えと、血の味を変えるのって…」


「はぁ…無知とは恐ろしいモノだな。いいか、花子。血の味を変えるというのはな…」



不意に耳元でその方法を囁かれ
私は顔を真っ赤にしてへにゃりとその場にへたり込んだ。



「………しにたい。」



そりゃ、あのお三方もあんなリアクションするよ。というか私だったら大歓迎ってどういうことですかコウさんそしてルキさんもルキさんで自分以外に血を変えるだなんて許さないってそのあのその…


「さぁ花子…わかっているな?」


「ひぃ。」


優しい声色なのに綺麗なお顔に青筋が経っていますルキさん。

あの違うんです私は只貴方に美味しく血を吸ってもらいたくてですね別に貴方のご兄弟とレッツ浮気だなんてそんなビッチな考えこれっぽちも思っていなくてええっと…


心の中で必死に弁解するものの目の前の美しき怒りの形相が恐ろし過ぎて言葉にできない。
ガシリと肩を掴まれたかと思うとやはりニッコリと笑う彼にもはや引き攣り笑いしか起こせない。


「楽しい楽しいお説教の時間だ」


「お…おて、お手柔らかにお願いします…。」


仕方ない。今回ばかりは仕方ない。
知らなかったこととはいえ100%私が悪い。
地べたは痛いだろうからと、ベッドの上に正座させられて懇々と彼のお説教を聞きながらも
先程の彼の言葉に顔を赤くする。


「聞いているのか花子!」


「は、はいぃ!」


“血の味を変えるというのは処女を奪われると言う事だ”



嗚呼もう、このお説教が終わったらあの三兄弟にも謝りに行かなければ。



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