27:キス、kiss


この際だ。正直に白状しよう。
私はいつも通り不安に駆られている。


「花子…ん、」


「ぁ…、ん…」


ルキさんはどうやらキスがお好きのようだ。
何だか気が付けばキスをされている気がする。
情けない話だけれど、私が怯えてしまうのでほとんどが触れるだけのキスなのだけれど


「ぁ、ル、キ…さ…んんぅ…」


「ん…ん、」


こういった感じにたまにだけれども深くて熱いキスもされてしまう。
その度に私は彼にされるがままで…
今の私はもっぱらこれが不安の種なのである。


「これは所謂“まぐろ”というものではないのだろうか…」


ぼそりと呟けば現実味を帯びてしまうその単語。
こういう…その、キスとか、そういうの…
どうリアクションを取ればいいのか正直分からないのである。
こんなんだったら彼に出会う前にもっとこういう色恋沙汰に興味でも持っておけばよかったと過去の私を殴りたくなる。


私の血の所為で色々あったけれどもまたルキさんと恋人同士という関係に戻ってとても嬉しいと思うし、幸せだと思う。

けど…ルキさんはどうなんだろうか。
こんなされるがままのつまらない女なんてすぐ飽きて…飽きて…


「ど、どうしよう」


ざっと嫌な汗が出る。
も、もしかしたら既に飽きられてて浮気とかされてるかもしれない。
そして後数日すれば「お前みたいなつまらない女もういらない」とか言われて捨てられてしまうかもしれない。

で、でもだからといって自分からキスしてくださいだなんておねだりが出来る程図々しくもないし
ええと、ええと…どうすればいいんだろうか。


「あっれー?そんな難しい顔してどーしちゃったの花子ちゃん。」


「コウさん…!」


「え、な、何?花子ちゃんがそんな声あげるなんて珍しい…!」


たまたま通りがかったコウさんに普段のローテンションではなく少しだけ大きくなってしまった自身の声に驚きつつも
それだけ追い詰められてしまっている事を自覚して恥を忍んで恋愛経験豊富であろう彼に教えを乞おうと決心した。



「ほ、ホントにそんな事が出来るのでしょうか…」


コウさんのアドバイスを頂いた私は先程よりも落ち込んでしまっている。
…いやいやいや私には無理だろう。ハードルが高いし。そんなそんな。


「何を1人で青くなったり赤くなったりしているんだ。」


「…ぅ、」


「その反応…どういうことだ?花子」


今一番会いたくない人がひょっこり私の顔を覗き込んだものだから
微妙な反応を返してしまうと彼の眉がピクリと上がる。

がしりと両手を掴まれて迫るその整った顔は未だに慣れることはない。


「何を考えていた。」


「あ…の、ルキさんの事…を、ですね…」


「ほう…?」


ちゅっとそのまま可愛いキスをされてしまい、少し恥ずかしくなりぎゅっと瞳を瞑ると
クスリと彼は嬉しそうに笑う。


「ふふ…その反応、もっとしてくれと強請っているみたいだぞ?」


「え、や…ちが、ん…」


そんな図々しいこと出来る訳ないじゃないか。
いや、図々しいとか言っていると心の中で私が本当は強請りたいとか思っているみたいで非常に語弊があるのだけれど

けれど彼は私の言い訳なんか聞いてくれなくて、そのまま何度も何度もちゅっちゅ、とわざと音を立ててキスを続けて
それはだんだん深いモノへとなっていく…


「ぁ…、」


「ん、花子…」


ええとええと、
コウさんのアドバイスが私の脳内に響き渡る。
どうしよう恥ずかしい、恥ずかしいけれどルキさんに飽きられてしまうのだけは絶対に嫌だ。

私は意を決したようにぎゅっと彼の腕を掴み、初めておずおずと震えながら自ら自身の舌を彼に差し出して、そのまま彼のソレにゆっくり絡めた。


「!?」


「ん、ん、ん…んぅ…ルキさ、…んんっ」


それからはもう必死で、只々一生懸命普段彼がしてくれるように拙い舌遣いで彼の動きに必死について行った。

だから部屋に卑猥な水音が響き渡っていただなんて全然気づかなくて
ゆっくり唇を離された時にようやく我に返って恥ずかしくなり彼から視線を逸らして謝罪。


「ご、ごめんなさい…やっぱり、気持ちよく…なかったです、よね…ごめんなさい…」


「………」


ど、どうしよう。
何も答えてくれない。あまりにも拙すぎて怒ってしまったのだろうか…
不安になってじわりと涙をためたまま彼を見上げると、意味が分からない光景。


「あの、ルキさ………ルキさん?」


「あ…いや、その…」


なんと真っ赤だ。びっくりするくらいルキさん真っ赤だ。
片手で口元を抑えてるけどバレバレですよルキさんすごいことになってますよどうしたんですか?


「え、あの…え?」


「すまない…暫く、見ないでくれないか」


ふいと顔を背けられてしまったが、人間の好奇心とは恐ろしいモノである。
こういうルキさんは初めて見る。
ごめんなさいルキさん、私、私…


「ルキさん、ルキさん」


「ちょ、ちょっと待て…本当に待ってくれ花子、頼むから…」


ぐいぐいと彼の袖を引っ張るが彼はブルブルと震えながら一向にこちらを向いてくれようとはしない。

やだやだ、その顔もっと見たいですルキさん。
取りあえずこれは喜んで頂けたと判断していいのだろうか…うーん、分からない。


“そういう時はぁとりあえずルキくんの動きに合わせてみたら?”



そんなコウさんのアドバイスだったが成功…したのか?
遂にしゃがみこんでしまったルキさんを前に私は首を傾げることしかできないでいた。
うん、レンアイ難しい。



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