28:男子会と女子会
「ああもう一時はどうなっちゃうかと思ったけど、ホント良かったねぇ!」
「俺なんかもう感動で三日は泣いたな。」
「ふふ…花子、早く俺のお姉さんになってくれないかなぁ」
今日は珍しく花子ちゃんがいない。
なので久しぶりに男だらけの食事だ。そして話題はもっぱらルキ君と花子ちゃんとの事ばかり。
本人のルキ君は先程から俺達の言葉にピクリと顔を歪めている。
「つーかよぉルキぃ。おめぇ週何回だ?」
「は?何がだ?」
ニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべながら問うユーマ君にルキ君が不機嫌なまま質問で返す。
「んなもん言わなくても分かれよ。セ…っ、」
ガタンっ!ガチャン!ゴスッ!
…?
ユーマ君の台詞の途中でルキ君は持っていた食器を盛大に落とし、コップを割ってしまいテーブルに頭をぶつけてしまった。
え、まさかこの反応…
「え、ちょっと…嘘でしょルキ君」
「おいマジかよ。」
「ルキって不能だったっけ…?」
「断じて違う!」
アズサ君の的を得過ぎた言葉に顔を真っ赤にして吠えるルキ君に俺は問答無用で掴みかかった。
顔はかろうじて笑顔だがビキビキと青筋が経ってしまっている。
「ねぇちょっとマジふざけないでよ。俺が大変な思いで花子ちゃんを攫ったって言うのにまだ何もしてないって?普通再会したその日のうちにお召し上がりデショ?何考えてんの?ヘタレ?ヘタレ参謀なの?ねぇねぇねぇ!」
「し、仕方ないだろ!無理に抱いて嫌われてしまったらどうする!無理だろ!というか大事にしたい!」
「ルキ君のドSどこいったよ!思いだせ!自分のキャラを思いだせぇぇえ!」
ガクガクとルキ君の肩を振りまくるけれど返ってきた言葉に更に激昂する。
あの!あのルキ君がこんな臆病になるだなんて!!
ぎゃんぎゃん喚いているとアズサ君がぷくーっと頬を膨らませて爆弾発言。
「俺…弟か妹、ほしい…ルキ、早く花子と作ってきて」
『………は?』
えっと、お兄ちゃんの子供だったら甥か姪になるんじゃないかな?
…なんて、そんなサムイつっこみを入れてみるものの、その場にいる全員が氷のように固まって動かなった。
―同時刻―
「じれったいわ」
「は?え…?な、何…」
何だかすごく恐ろしい形相で私を見降ろしているのはいつも優しい笑顔のはずの小森さん。
え、え、どうしたんですか。
まさか血の吸われ過ぎでおかしくなったとか…?
「あんたねぇ、この娘の中から見てたけどじれったいのよ!愛している男がいるなら殺す勢いで迫りなさいよ!」
「ど、どうしたんですか…発言がいちいち狂気的ですよ大丈夫ですか…」
今日の小森さんはすこしおかしい…
突然私をお茶に誘った時からいつもとは違った雰囲気だった。
そんな彼女に苦笑しながらも先程出された紅茶を口にする。
「ガキの恋愛に興味はないのだけれどあんた達、もうホント…どうにかならないの?」
「は、はぁ…」
私の曖昧な返事に小森さんは大きな溜息。
だって仕方がないじゃないか。彼女のこの変わりっぷりについて行けるはずないだろう。
「顔と身体、血、自分の全部使って誘惑するくらいなさい。」
「ゆ…誘惑、って…!」
思いもよらない単語に思わず吹き出してしまうけれど曖昧に微笑んだまま目を伏せる。
「無理ですよ…私なんて、」
「ねぇ、花子。そんなこと言っているとあの坊や、アタシがもらうわよ。」
「え。」
思わず顔を勢いよくあげればニヤリと挑発的に微笑む小森さん。
そしてコツンと私の額をはじく。
「嫌なら精々頑張りなさいな。ねぇ?」
「ぅ…え、…えぇ〜?」
が、頑張るって何を…?
そのゆ、ゆうわく…ってやつを…です、か?
「ぐ、具体的に…どういった事を…?」
「そうねぇ、じゃぁまずは…」
ニタリと、とても妖艶に微笑む小森さんは本当に今日どこかおかしいのではないのだろうかと心配になる。
―後日―
「………」
「………」
き、気まずい。
昨日小森さんからとんでもない事を言われてから非常に気まずい。
というか、私がそわそわするのは分かるけれど、どうしてルキさんまでこちらを見ないんだろう。
チラリと彼の方を見てみれば、バチリと視線がぶつかり再び勢いよく互いに逸らす。
取りあえずこの状況を打破する為に私は小さく息を吐いて一大決心をする。
「あ、の…ルキさん?」
「な、なんだ?」
…どうしてそんなに挙動不審なんですか。私何かしましたか?
けれど今ここで決心を揺らがせるわけにはいかない。
「少し、屈んでいただけますか?」
「?」
私の言葉に何の疑問も抱かずに屈んでくれたルキさんに感謝しつつ彼の首筋に顔を近付ける。
「花子?…っ、おま…っ!何を…!」
「ん………あれ?」
ちゅっと音を立ててルキさんの首に吸い付いたのはいいものの、肝心のモノが付いていない。
あれ、これでいいって小森さん言ってたんだけど…おかしいなぁ。
ちょいっと先程吸い付いたところをなぞれば大きく揺れるルキさんに私もつられて驚いてしまう。
「ルキさん、ど、どうしたんですか?」
「お前がどうした!」
ガシリと強い力で両肩を掴まれて赤い顔のルキさんが凄んでくる。
怖い…こわいけど、何で赤いんだろうか?
「昨日アイツ等から言われたばかりでいきなり俺の理性を飛ばそうとするのかお前は俺を一体どうしたいんだ!?」
「え、あの…話の内容が分かりませんが…」
昨日は授業が終わった直後にいつもと雰囲気の違う小森さんに引っ張り出されてそのままお茶をしたので彼の行動など私には分からないのだがこの様子だと何かあったらしい。
「えっと、昨日何か…」
「言えるわけないだろう!」
…理不尽に怒られてしまった。
そんな彼に少しばかりむっとしてしまった私は随分と言い御身分になったと思う。
思うけれどそれはそれ、これはこれだ。
私は未だに真っ赤に待っている彼を力の限り引っ張ってもう一度と、その白い首に唇を落とした。
「あれ…やっぱりつかない。」
「〜〜〜っっ!花子―――!!」
彼の怒鳴り声は今までで一番大きくてとても恐ろしかったのを正座させられながら思い返す。
現在おなじみ長男様のお説教中である。
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