38:わたしにできること
「さて、どうしようか。俺的には撲殺がオススメ」
「な、何がですかシュウさん」
ニッコリと優しい笑顔で物騒すぎる言葉を吐くシュウさんにゆっくり起こされながら引き攣って笑顔を作る。
すると彼は笑顔と同じく優し手つきで私の頭を撫でる。
「冗談だ。今回ばかりはルキが怒るのも分かるし」
「そうなんですか?」
ルキさんに置いてきぼりにされてしまったと、どうやら眠りにやって来たであろうシュウさんが
私の状態を見て、大きな溜息をついてゆったりと動けない私の傍に来てくれた。
そして先程の物騒な発言だ。
「ルキさん…どうして怒っちゃったんでしょうか。」
「…どうしてだろうな」
私の言葉に撫でる手は止めないまま、じっとこちらを見つめるシュウさん。
私は本当に分からない。
どうして彼があそこまで怒ってしまったのか…もしかして私は知らず知らずのうちに彼の逆鱗に触れてしまう事をしてしまっていたのだろうか。
そうだとしたら謝らなければ…嗚呼、でも何が原因なのか分からないまま謝罪するのはよくない。
色んな事をぐるぐると頭の中で考えていれば
シュウさんはじっと私を見つめたまま唐突な言葉を口にする。
「俺、死のうかな」
「え?」
突然の台詞に驚いて固まれば彼ニコニコ笑ってそのまま言葉を紡ぐ。
「今回花子に教えてあげる事はないし、役立たずだから。そんな俺がお前に出来る事ってあとは視界から消える事位?」
「な、なんで…、なんでそんな悲しい事…っ!」
今までだって沢山優しくしてくれて、私の事大事にしてくれて
後…どうしてだか分からないけれど好きって言ってくれてたのに
なんでそんな酷くて哀しい事いうんだろう…
じわりと涙が浮かぶ。
シュウさんは役立たずだなんてそんな事無いのに…沢山沢山良いトコロあるのに
なんでそんな悲しい事言うんだろう。
ぎゅうぎゅうと胸が痛くなって遂にポロリと涙が零れれば、シュウさんの綺麗な指がそれを掬い上げて
綺麗な笑みを更に深めた。
「ホラ…わかっただろ?ルキの言いたい事」
「……………あ、」
シュウさんの言葉に思わずハッとすれば彼は満足げに微笑んでやっぱり頭を撫で続ける。
そして呆れたように一つ、ため息をついた。
「どう?これでルキに“ゴメンナサイ”できる?」
「シュウさん…、」
そうか…ルキさん、
ルキさんも今の私と同じ気持ちだったんだ…
だから…だからあんなに怒ってしまったんだ。
どうしよう…今更謝って許されるのだろうか…
どうしてもクセなのかマイナスな事しか頭に浮かんでこなくて
顔を青くしてしまえば不意に頬に触れたシュウさんの唇。
驚いて彼を見ればシュウさんは片目を瞑って困り顔で微笑んだ。
「花子は、花子を愛してる俺達の為に何でもしたいんだろ?」
「はい…でも、私なんかが、んむっ」
“私なんかが何が出来るのだろう”
…そんな言葉を紡ぐ前にむにっと彼の綺麗な指が私の唇を押さえつける。
「花子を愛してる俺達に対してそんな言葉、失礼だとは思わないわけ?」
「うむむむむ(シュウさん)」
変わらず微笑みかけてくれてるけれど
どうしてだかその表情は何処か悲しげだ。
…嗚呼、この表情も私が自身を嫌っているからさせているのだと思うと非常に心苦しい。
「花子は花子を好きになって。…お前にとってはとても難しい事だろうけれど、」
『それが俺達に出きるお前の最大の恩返しだ』
優しく、言い聞かせるようにそんな事を言われればじわりと私の涙腺は崩壊してしまう。
ああもう、本当にどうしてシュウさんはこんなにもやさしいのだろうか…
「が、が…んばり、ます…っ」
「ちょっとずつでいいよ。…無理するな」
泣き始めてしまった私を優しく抱き締めて何度も背中を撫でてくれるシュウさんに
手始めに自身の思う通りに縋ってみれば「遂に俺に浮気?」って茶化されてしまったけれど
でも今これが今私にできる最大限の自身への甘やかしだ。
「花子、自分の意志を持て。…俺達の為じゃなくて、お前の為に生きて」
「…………シュウさ、」
「そしたらきっと、俺もまたお前に会える」
最後の彼の言葉の真意は掴めなかったけれど
私はこの優し過ぎる吸血鬼に甘えて取りあえず気が済むまで泣こうと思う。
これは辛さとか悲しさでの涙ではなく、優し過ぎる彼等への感激と愛おしさでの涙だから
幾ら流したって足りないけれど…
「泣き終わったら…ルキの所へいこうな」
「…はい、」
大丈夫。
きっとルキさんは許してくれる。
少しずつで申し訳ないけれど、私は私を認めるよう、努力すると心に誓ったのだから。
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