62:信じてる
花子にはふたり、花子がいる。
いつだって俺達に沢山の愛情を分けてくれる花子と
そんな花子の事をだいきらいな花子。
ルキが花子に教えた『花子自身を大切にする事』。
彼女はそれが自身が出来る唯一の恩返しだと、一生懸命に実行している。
けれど根本の花子はそれを認めない。
きっと自分を嫌う時間が長かったんだと思う。
人間も吸血鬼もおなじ。
根本はそう易々と変えることができるものじゃない。
「花子…、」
「ん、ぅ…」
そっと彼女に近付けば疲れていたのかソファで座ったまま眠ってた。
珍しく花子の大好きなルキは傍にいない。
じっと顔を覗き込めば眉間に皺。
嗚呼、まだ…まだ花子の中の花子は花子をいじめているの?
「花子、へいき…だいじょうぶ…だいじょうぶ。」
「んぅ…ルキ、さ…」
「ふふ…俺は…ルキ、じゃぁ…ないよ?」
抱き寄せた俺をルキと間違ってうわ言で呼んじゃう花子に苦笑。
本当に花子はルキがだいすきだね。
以前もこうして彼女は自身に認めてもらえないと嘆いて泣いていた。
きっとそれは今でも変わっていないのだろう。
それはきっとまだ、花子も…彼女の中の花子も互いが互いを嫌っているから。
自身を嫌悪する花子と同時にそんな花子を嫌悪しているのも紛れもない花子だ。
自身を大切に…それはとても素敵な事。
でも、だからって以前の自分を全て否定していいって訳じゃないと俺は思う。
だって花子に酷い世界から花子を守って来たのは紛れもない自身を嫌うという行為を行ってきた花子だもの。
「いつか、気付いたら…いい、ね」
そうしたら、きっと花子の中の花子もきっと笑ってキミとひとつに溶けてくれる。
それまでは…“花子が花子を認める”までは俺が…ユーマが…コウが支えてあげる。
「ルキは…だめ。ルキは花子と一緒…だから。」
ルキもよく「自分はいいんだ」ってよく言う。
弟の俺達を優先して我慢してることがたくさんある。
だからルキは駄目。
ルキはきっとこれから花子と一緒に変わるんだ。
「少しずつ…少しずつ…花子が花子の全部を好きになれたらいいね。」
今の花子も、昔の花子も全部、ぜんぶ。
そんな願いを込めて俺はルキと花子本人に内緒でそっと彼女の額にキスをした。
確かルキに前借りた本に額へのキスは祝福って書いてあった気がする。
これから花子が歩く道、沢山の幸せがありますように。
「花子…また、俺に…いじわる、してね?」
初めていじわると言う名の愛をくれた花子。
俺の全てが何か変わったわけではないけれど
花子がそうしてくれてからちょっとだけ俺も変わる事が出来たから…
「だいすきだよ、おねえちゃん。」
今はまだキチンと俺の姉な訳ではないけれど…
でも、うん。
きっと…きっとルキと一緒になって俺の大切な家族になってくれるって
俺はずっと心のそこから花子とルキを信じてる。
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