66:無神アズサの独白
初めて出会った時の花子もとてもかわいかった。
コウは不細工って言ったけれど俺は可愛いって、思ったよ?
「うわ…っ、数、やっばぁ〜」
「花子、平気か?足は痛くないか?」
「だい、だいじょうぶ…ですっ、…っ」
コウが茶化すように後ろを振り向いてそう言うけれどその表情は全然余裕じゃない。
寧ろどうしようって焦ってるみたい。
花子も必死に俺達について走ってくれてるけれど女の子だもん、しんどいよね。
チラリとコウを見つめる。
するとコウは俺が何が言いたいのか分かってくれたのか困ったように笑って「後でちゃーんと合流してね、アズサ君」って言ってくれた。
こういう大事な時に俺の好きにさせてくれるのって本当にコウはお兄ちゃんだなって、思うよ。
花子は俺にいじわるしてくれた。
心地よくて温かな意地悪。
ずっと一緒に過ごしてきたけれど花子はどんどん表情豊かになったし
自分の事を考える事も始めた。
こないだなんてルキと自分がって…自身を犠牲にしてではなくて一緒にって…言ってくれた。
俺はそんな大事な未来の家族を失いたくはない。
ピタリと一人だけ走り抜ける足を止める。
コウもユーマも俺が今からすることを解ってくれてる。
ルキは勿論。ああ、でもルキ…とても悲しそう。
だいじょうぶ、俺はこんな所で死ぬなんてそんな事、しないよ。
「アズサさん…?」
「花子、」
花子だけが俺が何をしようとしているのか分からずに首を傾げる。
大丈夫…大丈夫な筈なんだけれどちょっと不安だから一応言っておくね?
ゆるりと手を上げてひらひらと振ってみる。
すると花子もそれが意味している事が理解できたのかぶわっと涙を零してしまう。
嗚呼、ごめんね…おれ、酷い事、してるのかなぁ。
「花子、ばいばい。」
俺の言葉に大きな泣き声が聞こえてしまったけれど仕方ない。
誰かが此処で足止めをしないと皆共倒れだ。
それでも…うん、全員を止める自信はないけれど…出来る限りは。
「ねぇ、俺は…ね?花子と…ルキ、守りたいんだ。」
花子に敵意剥き出しの彼等にそう言っても全然聞いてはくれない。
嗚呼、困ったなぁ…
初めて俺の手で守りたいって思った。
初めて心から幸せになってもらいたいって思った。
はじめて、だいすきだよって…思えた。
「俺の、大事なものを…壊すなら…俺も、容赦なんて…しない。」
海で俺が作った砂のお花。
俺もあの花の様にルキと花子をちょっと遠くからでもいいから見守ってたい。
そしてルキも花子も俺の事を見てちょっと微笑んでくれたら嬉しい。
お城の庭園に咲いた花を見つめるように…
「ルキも…花子も…俺の大事な…家族なんだ。」
くしゃり
砂の花畑が崩れた音が、した。
ばいばい、花子。
だいすきなお姉ちゃん。
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