101:壊れた願い


「あー……今回は雨かぁ。残念…」



「仕方ねぇな…お天道様はどうする事も出来ねぇ」






今年も皆で七夕様しようと思ったのに空は生憎の雨模様…
残念そうに呟くコウとユーマの隣で俺も残念だなって思った…けど




「…………」





そっと後ろを振り返ったら花子とルキが困ったように…でも穏やかに俺達を見つめてくれていて
嗚呼、今年は俺のお願い…織姫様と彦星様はこっそり叶えてくれたんだって
皆に気付かれないようにこっそり笑ったのは内緒話。




「そう言えば最近花子ちゃんとルキ君二人きりの時間なくない?」




「そりゃぁお前がベタベタ花子にへばりついてるからだろコウ」




「そ、そんな事ないよ!?どっちかって言うとシュウ君じゃないの!?後ライト君とスバル君!?」




移動教室の途中、こっそり俺とユーマとコウで話して気が付いた
嗚呼、花子の周りはいつの間にか沢山のひとが居るようになって……
それはきっと花子の今までの頑張りが、シュウさんの優しさが、ルキの愛情が実を結んだ結果で…
勿論少しばかり俺達のお節介も入っていてほしいけれど……でも、うん




「花子と………ルキ、ふたりきりに、させたい………な」




「「…………」」





ぽつりと呟いた俺の言葉にコウとユーマは一瞬きょとんとしたように固まったけれど
すぐに二人顔見合わせて楽しそうに笑って俺の言葉に大きく頷いてくれたから俺も嬉しくなって笑顔になった。





花子の周りに沢山人が溢れるのは良い事…だけどやっぱり俺は花子とルキ、二人きりで何もない穏やかな時間を大切にしてほしいに過ごしてもらいたい。
傷付けてもらう事しか存在意義を見出せなかった俺にくれた花子のあの言葉と腕……今でも忘れない。
花子はあの時意地悪だと言ったけれど今なら分かる…あれはきっと彼女なりの優しさだったんだ。





あの意地悪は俺にとって酷く革命的で
その優しさをくれた彼女には幾らお返しをしてもまだ足りない…





花子が好き…だいすきだよ





だから一緒に居てくれるはとても嬉しい…今すぐにでも同じようにだいすきなルキと結ばれて本当の意味で俺と…俺達と家族になってほしい
そしたらずっと一緒に居れる……でもそればかりじゃダメ。
俺が一番見ていたいのは、花子とルキが二人でいる時のあの穏やかな笑顔だから…




「よーし…なら今日は俺達だけで先に帰っちゃおっか!いつも何かしら邪魔入って最近恋人らしい事できてないもんねーあの二人」




「そうだな……俺達とつるんでくれるのはありがてぇが本末転倒って奴になりかねねぇ」




「それは……駄目。ルキと……花子は、最期まで………しあわせが、いい」




俺達の内緒の作戦…三人で小さく笑い合ってたまには二人に穏やかな時間をプレゼントしようって決めて
少し駆け足で移動先の教室に向かう。



俺が花子にもらったものはとても大きくて…勿論ルキからも。
だからそんな二人が本当に望む事は何でもしてあげたい……きっと花子もルキも俺達と過ごすのは嫌いじゃないと思う…寧ろ好き。
でもきっとそれ以上に二人きりの時間も欲しいんだ……二人を見てたらそれは……わかるんだ。




嗚呼、楽しみだなぁ……きっとまた二人きりで過ごしたらルキも花子ももっともっとお互いを好きになる……俺はそれが酷く嬉しい





だいすきな二人が幸せに、穏やかに微笑むその表情が俺はとても大好きだ。





7月7日、こっそり叶えてくれた願い事…
“花子とルキの素敵な笑顔をずっと傍で見ていたいです”





嗚呼、嬉しい…叶えてくれた
だから後はそれを続けるのは俺の…俺達の役目
きっときっとこれからはずっと二人とも笑顔だよね?







そう、思っていたのに






「どう……して、」






余りにも帰りが遅い二人を迎えに行った先にあったのは
ぽつりと寂しそうに放り出された傘二つだけだった





嗚呼、俺は……
織姫様と彦星様が叶えてくれた御願い事をこうも早く壊してしまうんだろうか



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