31:黄色の意味


カールハインツ様主催のパーティへ向かう前、知らない女の人が俺の前に現れた。
そんなすごい美人って訳ではなかったけど足元に綺麗な黄色のペティギュアが落とされてて
あ、この子がシュウ君の最愛なんだってすぐにわかったんだ。




「それにしてもシュウ君が行くの嫌そうだったからってよくも魔界に乗り込む気になったよね。ええと、」



「花子って言うの。」



「あ、そうだった。花子ちゃん。」




彼女が突然現れて「コウ君の事はシュウさんに聞いてる!私を魔界に連れてって」とか訳のわかんない事言いだして聞かないから
俺はルキ君達より少し早く魔界へと足を向けて現在洋服屋さんである。



話を聞いてみると最愛であるシュウ君が魔界への招集がきたとき、ちょっと空気が変わったんだって。
…だからってそれだけでよくもまぁ自分の血を吸いつくすかもしれないこんな所へ来ようと思ったよね。




「前シュウ君がソレ、強奪しに来たときはシュウ君が花子ちゃんにメロメロだって思ったけど花子ちゃんの方がヤバいんだね。」




スッと彼女の足先を指さして呆れた溜息をついて再びドレス達に視線を向ける。
勢いに任せて俺の所にやって来たのはいいけど肝心のドレスがないって言われてしまったので仕方ナシに彼女のモノを選んであげてる。
………何で俺がこんな事してんだろ。




「…ねぇ花子ちゃん、シュウ君にここまでする価値ってあるの?お金とか地位以外で。」



純粋な疑問を彼女に投げかけてみた。
いつだってシュウ君と言うか逆巻さんに群がる女って金と地位と後は体って感じだったから
なんか…うん、ここまでしちゃう女って言うのが正直珍しくて。



花子ちゃんはそんな俺に何も言わないままじっとこちらに視線を向けてきた




……………




「わ、わか…わかったわかった花子ちゃんがどれだけシュウ君の事大好きかわかった変な質問しちゃってごめんなさい。」



「分かってくれてよかった。」




真っ直ぐなその瞳から怒涛のように流れ込んでくるシュウ君への「すき」でパンク寸前になってしまった俺はぎゅっと強めに目をつぶって
もうお腹いっぱいですと言う感じにひらひらと手を横に振る。
すると花子ちゃんは嬉しそうに微笑んで俺と一緒に自身のドレス選びを再開した。



全く…ここまでシュウ君の事好きとかもうホントうん、シュウ君いつも愛され過ぎてツラいって思ってんじゃないかなぁ。



でも何か、ここまで誰かの事好きになるのも、好きになられるのも素敵な気がしてしまって
もう一度小さく溜息をついて俺も彼女にぴったりのドレスを選別していく。
別にシュウ君にも花子ちゃんにも何の思い入れもないけれど、どうしてだか応援したくなってしまった。




「あ、ねぇ花子ちゃん。これは?」



不意に目にとまったドレス。
淡い、穏やかな黄色がなんだか彼女に着られるべきだって主張してるみたいだ。



「うん!これにする!!シュウさんのイメージカラーだしっ!」



「……ホントどこまでいってもシュウ君なんだね。」




呆れかえってればそのドレスを持って満足気に微笑む彼女の目が静かに細められてしまった。




「コウ君、黄色ってね?楽しいとかしあわせってイメージもあるんだけど反対に不安や弱いってイメージがあるの…知ってる?」



「え、」



「私は出来ればシュウさんに前者のイメージになってほしいって、思うよ。」




きゅっと愛おしげにそのドレスを抱き締めて紡いだ言葉は酷く重くて優しくて
思わずドキリとないものが高鳴った気がして顔を赤らめた。
シュウ君は彼女のこんな顔を知っているのだろうか…



「花子ちゃんて、何者なの?」



「シュウさんの事が大好きな只の人間だよ。」




只その愛がちょっぴり大きいだけっていたずらっ子のように笑う彼女はすっかり元の馬鹿っぽい彼女で
何だか…うん、シュウ君がちょっと羨ましいって思っちゃった。



「ほーら。ソレ、とっとと着替えてきなよ。パーティ始まっちゃうから。俺のパートナーとしてお城入れたげるんだから感謝してよね。」



「………シュウしゃんを強奪するためとはいえ辛い選択だなぁもう。」



「ちょっと!このアイドルのパートナーになれるんだから喜びなよって…わわわわかったわかったから目こっち向けないでシュウ君への愛はもうお腹いっぱいだってこれ以上は吐いちゃう。」



こんな馬鹿みたいな会話をしながらも今回シュウ君と花子ちゃんの愛情劇場に巻き込まれてしまった俺を誰か慰めてくれればいいと思う。



チラリともう一度彼女の足元を見つめる。
しあわせと、弱さ…楽しいと不安。
二人がどっちに転ぶかは分からないけれど、それこそ俺の知ったこっちゃないけれど




それでもどうか、出来る事ならばハッピーエンドへと願ってしまうのは
彼女のちらりと見せた愛情がどこまでも優しいものだったからだろうか。




それから数時間後、シュウ君が消えたという女達の騒ぎを会場の隅で耳にして
ざまぁ見ろ、欲望まみれの女共って小さく笑ったのは内緒の話。



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