39:俺の独占欲


少し前、行方不明だった花子を気持ち悪い笑みを隠しきれてないシュウが抱えて帰って来た。


その表情はすげぇ幸せそうで、それでいて何処か決心したような…そんな顔だったから
俺達弟は、何も聞かなくても奴が何を決意して花子を連れ帰ったのかなんて全部分かっちまった。




あのシュウがここまでする花子…
本人気付いてんのか分かんねぇけどヤバいくらい愛されてる。




「つー訳だスバル。食え。」



「は?」



ようやく名実ともに花子とシュウが一緒になるんだって感傷に浸ってれば
ずいっと差し出されたにぼしに眉間の皺を寄せる。



差し出してる張本人はアヤトだ。
コイツの真意が掴めずに固まってればずぼっと煮干しを突っ込まれて思わず咽る。
一体…一体何だってんだ!!!



「ちょ、アヤト!!いきなり何…ぶふっ」



「一々文句言わずに食べてくださいこの僕がケーキを施してあげるんです感謝してくださいね。」



アヤトに怒鳴ろうとしたら間髪入れずに今度はカナトがデカいホールケーキを突っ込んできたのでもう咽るどころじゃない。
死ぬ。俺、コイツらにホント殺される。
そのケーキは真っ白で味は生臭くて気持ち悪い。
こ、コイツ!ケーキに魚入れてる!!!



もう声もあげることが出来ずに悶えていればそこに流し込まれる液体に一安心
…って、牛乳?
意味が分からず一通り飲み干して上を見てみるとライトがハァハァと気持ち悪く笑ってたからぞわりと悪寒が走る。
……これが俺の兄貴とかもうホント嘘だと言ってくれ。



「ああん、白い液体…牛乳だけど必死に飲み干しちゃってスバル君ッたらそっちの筋だったの?厭らしいね〜んふっ♪」


「うるせぇよ!!!そんなのあんだけ色々突っ込まれたら取りあえず何でも飲むだろ!!」


「突っ込まれるとか!!!流石僕の弟だ!!!!優秀過ぎてぞくぞくしちゃうよぉぉ!!!」


「何が優秀だよ!!!なんの優秀だよ!!!ってそんなのどうでもいい!!何なんださっきからお前らっ!!!」



もう我慢の限界が来て口もようやく空になったことだし、盛大に叫び散らすと
三つ子は数秒互いに顔を見合わせてすげぇマジな顔でこっちに詰め寄って来た。




「ダル男がついにあのチチナシ花子と結ばれちまう。と言う事はだ」



「もう彼女の腰への攻撃も更に頻繁に行われるって訳ですよ」



「だーかーらっ、僕達に被害が及ばないようにスバル君の腰の強化を…ね?んふっ♪」



…………俺は生贄かなんかかよ!!!
いやいや生贄の花嫁ならなんかこう…まだ格好いいけど生贄の腰とかもうどうあがいてもただひたすらに可哀想なだけじゃねぇか。



しかし…しかしだ。



コイツらの言い分もわかるっつーか…うん、花子の抱き付きの強さはシュウへのトキメキ具合に比例するらしく
特に唇にキスされた時はホントアレ絶対ヒビ位入ったんじゃねぇかって位強く抱き付かれちまう。
そりゃぁ誰だってそんな力で腰破壊されたくねぇだろうよ。



後…あと、うん。




「残り貸せばーか。」




三つ子から煮干しと魚入りケーキと牛乳を取り上げる。
そしてそのままスタスタと自室へと足を向けると背後から奴らの不思議そうな視線を感じたので気まずいけど振り返ってやる。
そして言葉にしたのはちょっとばかり素直じゃない言葉。




「お、俺は慈悲深いからなっ!これ全部もらってやる。」




それだけ言い捨てて足早に部屋に駆け込む。
正直三つ子の腰がどうなろうと関係ない。いっそぶっ壊れればいいと思ってるいつもうるせぇし。
でも…でも。



「花子の…ねーちゃんのサンドバッグは俺だけで十分だっつーの。」



パタリと部屋の扉を閉じて小さく一言。
花子と出会ってから少しずつ芽生えてた馬鹿すぎる独占欲。
いつだってシュウへの好きが溢れたら俺のとこに来て腰を破壊していく俺の扱いが雑すぎる花子。
けれどふと思ったんだ。もしこの役割が誰かに取られたら…って。
そう思うと何だかイラッとした。



「だぁぁぁ!!なんだコレ恥ずかしいなオイ!!!!」



大きく喚いてもぐもぐと煮干しを噛み砕いて牛乳を流し込む。
多分この気持ちも一緒に噛み砕けばアレだ、大好きなねーちゃんを他の奴に取られたくねぇって言うガキすぎる独占欲。


恋心とはまた違うこの気持ちがくすぐったくて恥ずかしくて…でも、嫌じゃなくて。
ぐるぐると色んな考えが頭を巡ってもうこれ以上は頭がパンクしちまうって思って考えるのをやめてやけになって魚入りケーキも死ぬ思いで完食。



「はぁ…腰、強くしねぇとな。」



自分で言ってて意味わかんねぇけどでもそう言う事だ。
けれど…うん、俺の腰の役目もそんなに長くないって思ってる。
それは花子がこの腰を粉々に粉砕するってそう言う事じゃなくて。



「多分、そろそろ…気付くんだろうな。」



シュウも花子もお互いにまだ気付いてないことがある。
それに二人が気付くまでそんな時間もかからねぇだろ。




だったらそれまで…短い時間だけど
俺はこの腰を最後まで頑丈にして仕方なしに自身の姉になるであろう花子にバキバキにされようじゃないか。




「おーいレイジ!カルシウム剤とか持ってねぇかー!?」




ひとつ、息を吐いてもうちょっとドーピングしとこうって扉を開く。
自分の事じゃねぇしどうでもいいはずなのに、シュウがあれだけ愛されてるの見ると俺も何か…




「あーあーあーらしくねぇ。」




俺も、花子みたいな。
ねーちゃんみたいな俺の事好きすぎてツライ女が欲しい…




…なんて、な。



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