25:作戦開始
「ま、まさかレイジ君がここまでやらかすとは思ってなかった…」
「父上の行動は今回ばかりは許せませんからね」
私は大きな溜息をついてもレイジ君は未だに不機嫌顔で私のヘアスタイルと整えている。
…彼が紛れもない私を一か月休養させるように仕向けた犯人だ。
あの後大きな音を立てて開かれた扉に目をやれば
本当に…本当に鬼の形相をしたレイジ君が立っていてそのまま腕をぐいぐい引っ張ってここまで連れて来られてしまった。
「全く…私は花子さん以外穀潰しの花嫁は認めないと言うのに!!」
「…レイジ君はいつからシュウ君のおかあさんになっちゃったのかな?」
そんな姑心全開な彼に何をいっても通じなかった。
…シュウ君の体裁の為とかお父様の顔をつぶしたくないとか
沢山のしがらみを伝えても只々レイジ君の眉間の皺が増えるだけで。
遂にはいつの日かのパーティー同様素敵なドレスと装飾品、ヘアセットが完成すれば小突かれてしまった額をさする。
「…貴女は余計な所まで大人になり過ぎたようだ。」
「だって、仕方ないもの…」
私だって嫌だ。
上辺だけだとしても、シュウ君に沢山の女性が群がるのとか…そんなの。
でもさ、だからってもう私も子供みたいに喚き散らせるほど思考回路は幼くないのだ。
「花子さん、私が出来るのはここまでです。」
「…………え、」
レイジ君が少し悲しそうな顔をしてそう呟けば
そっと私の手を取って扉へと促してくれる。
ここまで連れて来られて後は独りでとか…すっごく不安で
どうしても目を揺らしてしまえばレイジ君はこっそり私の耳元で
子供がスパイごっこをするかのようなテンションで囁いた。
「私は主賓の息子ですので直接貴女の傍につくことが出来ません…が、優秀な駒は扉の向こうに用意させていただいております。」
「ゆ、優秀な駒…って、うわっ!」
私の問いに答える間もなくレイジ君は大きな扉を開けて優しく私の背中を押してくれた。
少しばかり前のめりになりながらも踏ん張れば、視界に入った三人分の男性の足。
…嫌な予感しかしない。
「おまちしておりましたー!花子お姫様っ☆」
「おっ!随分別嬪さんになったじゃねぇか花子チャン!」
「ふふ…アリス…久しぶり。」
聞き覚えのありすぎるそんな声に思わず吹き出して顔を上げれば
予想通りの可愛い吸血鬼三人衆に久しぶりと挨拶をした。
…全く、レイジ君ってば優秀な駒だなんて失礼だなぁ。
「コウ君、ユーマ君、アズサ君…お久しぶり。」
私のそんな言葉にコウ君とアズサ君がぎゅうぎゅうと抱き付いてきてしまったけれど
ユーマ君が呆れたように溜息をついて二人を引き離してくれた。
「おい、コウ、アズサ、再開のハグは後だろぉ?これから花子チャンの警護なんだからよ。」
「そうだねぇ!そんでシュウ君奪還作戦だね!!」
「ふふ…俺、頑張る。」
そうか…忘れがちだが今回のパーティーもヴァンパイアしかいない。
だから私が1人でふらふらと安全に歩けるわけではないのだ。
…ん?というか、あれ?
すっごく…すっごく聞いてはいけない単語が聴こえた気がしたけど。
「あ、あの…シュウ君奪還作戦って…?」
レイジ君にされるがままに此処まで連れて来られて、ドレスアップもさせられて今ここにいるけれど私はそれ以外何も知らされていない。
顔をひきつらせて三人に問えば三人揃ってとんでもなく意地悪すぎる笑顔。
あ、まずい。
これってもしかしなくても…
「このパーティで花子チャンが盛大に、ニートの女アピールすればもう余計な雌豚は寄って来ねぇだろ?つかもういっそニート連れ去ろうぜ。」
「無茶苦茶すぎるよねソレ!ていうか無理だし!!」
ユーマ君のそんな言葉に私の嫌な予感は盛大に当たってしまって
大きな声で喚いても全く聞き入れてはもらえず
このイケメン可愛い三人の吸血鬼にエスコートされる形で私はその重すぎる足をパーティー会場へと踏み入れてしまった。
…本当にやるんですか?シュウ君奪還大作戦。
戻る