27:再戦開始!


「すまない…数分とはいえ、花子に悲しい思いをさせてしまったな」



「あの…ルキ君、私全然状況がつかめてないんだけど。」




冷たくて優しい…大きな手が私の頭を撫でているが
肝心の私はひたすら首を傾げるばかりである。



ルキ君に強く引っ張られてパーティー会場から去ってしまったが
そのまま会場の外に連れ出されてしまうと思っていたのに現在私がいる場所はそのパーティ会場のバルコニーである。


じっと、彼の顔を見つめてどうしてすぐ追い出さなかったのかと
瞳で問えばルキ君はいつもように困ったように微笑んだ。



「…弟達を守りたくてな」



「…どういう事?」



「逆巻シュウの父上は俺達にとっては神にも等しい…そのお方の主催であるここで騒ぎを起こしてしまってはコウもユーマもアズサも…ただでは済まない」



「ルキ君…」




ルキ君のそんな優し過ぎる言葉、あの三人に聞かせてあげたい。
だってこんな状況で私を連れ出してしまったルキ君は今間違いなく彼等の中で悪者だ。
そんなの…悲し過ぎる。
ルキ君はこんなにも彼等を大切に思ってるのに。



ルキ君はそんな私の視線に気付いてまた微笑んで再び私の頭を撫でる



「だからと言って花子に逆巻シュウを諦めろと言うつもりはないさ」



「え、でも…じゃぁ、どうして」




彼の意外過ぎる言葉に思わず目を見開いた。
だってそうじゃないか。以前ルキ君は私にシュウ君を諦めろと言っていた。
それにそんな事言うならどうして今ここに私を連れて来たのだろうか…



「本来ならば弟達に任せてそのまま花子をあの花嫁候補の中に紛れ込ませたのだが…」



「ルキ君…?」




ふわりと私の顔をその大きな手で包み込んで少し悲しげに整った眉を下げる。
彼の行動の真意が掴めず正されるがままにしていれば額に彼の唇が触れる。
…私、最近額によくキスされてる気がする。




「お前がそんな自信のなさそうな顔をしていたから…」



「…………あ、」




そうか、こんな顔じゃ…こんな気持ちじゃシュウ君の前には立てなかった。
周りの女性に気圧されてきっと本当に何も出来ないまま只立ち尽くしていただろう。


自信、なくなってた…
あれだけシュウ君に大好きって言ってもらえてたのに
あれだけレイジ君に大丈夫って言ってもらえてたのに



只あの現状を目の前にしただけで私の中のソレはなかったことになっていた



私がその状態のままだったらコウ君達は見かねて本当にシュウ君をあの場から攫いかねない。
そしたら本当に大ごとだ。だからルキ君はあの場から私を連れ去ったのか…わざわざ自分が悪役となって。



「花子、逆巻シュウを連れ去るならば堂々と正面から攫え。」



「ルキ君…どうしてそんなに応援してくれるの?」



「花子が吹っ切れているようだからな…立場や種族の違いから…ああ、あと」



ルキ君はそう言って今度は困ったような微笑みじゃなくて
小さい子が悪戯が成功したかのような無邪気な微笑みをしたのだ。あ、やっぱりルキ君も可愛いかも…



「逆巻レイジが“扉の向こうに優秀な駒を用意している”…と言っていたはずだが」



「え………え?…も、もしかしなくてもそれって…」




ビシリと固まればそんな私を見てルキ君はおかしそうに笑ってゆっくりと手を取ってくれる。
…連れられるのは一時退散した戦場だ。
もう大丈夫。私はこの自信を失わない。



「俺程の優秀な駒は存在しない…策というものは二重に仕掛けておくものだ」



「…レイジ君もルキ君も、ホント流石すぎる」



どうやらレイジ君は万が一私がシュウ君の元へ行くのに戸惑った時の為に
ルキ君まで用意していたようで…本気で抜け目のなさすぎる吸血鬼を味方にしてしまっている事実に
私の自信は更に強固なものになっていく。



何だか今なら本当に堂々とシュウ君の彼女だと宣言できる気がする。




「さぁ花子…夢から醒める時間だ。大丈夫、お前は誰にも劣ってはいないさ…そんな馬鹿げた思い込みは捨てろ。」



「ふふ…やっぱりルキ君はおにいちゃんだなぁ」




優しく、最後に私の背中を押すその言葉に思わず顔をほころばせれば
ルキ君も優しく笑ってくれる。




「ああ、そうだな…“おにいちゃん”は花子が頑張る所をちゃんと見ているからな」



二三度頭を撫でられて私は最後にニッコリと
年下のお兄ちゃんに微笑みかけてから今度は自ら会場に足を踏み入れた。



さぁ、今度こそ再戦のお知らせである。



戻る


ALICE+