28:王子様奪還


一歩一歩進んでいく。
今度は誰かに手を引かれてでは無く自分から…。



「!花子ちゃん…!」



会場に戻ってくればコウ君達が心配そうに私を迎えてくれた。
ああ、みんな本当に優しいなぁ…


そんな三人に微笑みかけて小さな声でルキ君の事を話せばプルプルと震えだして
私の傍に居た彼に一斉に抱き付いてルキ君は後頭部を地面にぶつけてしまったけれど
うん、何だか微笑ましい。



「さて、」




じっとシュウ君がいるであろう女性たちの集団を見つめる。
すると先程までルキ君達に抱き付いていたコウ君が可愛い声で大きな声を張り上げた。



「はいはーい!逆巻シュウ様の最後のお嫁様候補ですよ!!」



「花子…、手を。」



「うん、」




彼の通る声で会場にいる全ての者の注目を浴びる。
大丈夫、ココで逃げる訳にはいかない。
ぎゅっと唇を噛んで、差し出されたルキ君の手を取って静かに前へ進む。



一歩、また一歩と進んでようやく足を止めれば
そこにはとても遠い場所にいたと感じていたシュウ君がいた。



「………、花子と申します。」




綺麗なドレスの端を持ち上げて軽く一礼をする。
シュウ君からは何の言葉もない。
チラリと目線だけ彼の顔へと向ければとんでもなく困惑しているシュウ君。



ああ、そうだよね。
だってさっき私、ルキ君とこの場を抜け出したんだから…
シュウ君は私に捨てられちゃったって思っちゃったのかな?



此処が私の部屋なら「大丈夫だよ」って抱き締めてあげられるのだけれど
今回ばかりはそうはいかない。
だから私は再び頭を下げて言葉を紡ぐ。



「貴方様の愛の大きさがどれ程なのか…私にはわかりかねます…が、どうか私の愛の大きさも察してくださいませ…」



「花子、」



ようやく、震える声で私の名前を呼んでくれたシュウ君に思わず苦笑。
だってこんな告白初めてだもんね。
ああ、あともしかして私の口調にも驚いちゃったかな?
私だって一応社会人ですよシュウ君。この場にふさわしい口調位わきまえてるってば。



今度はしっかりと顔を上げてシュウ君を見つめる。
ちょっと泣きそうじゃない…はやくその涙、拭ってあげたいなぁ。



確かにシュウ君の愛は大きい。
けれど私だって、私だって短い期間の間に馬鹿みたいなスピードで貴方への愛は育ってしまってるんだよ?
でなきゃこんな所に再び自分から足を踏み入れはしないでしょう?



「シュウ様…」



「な、に…?」



いつの間にが彼の上に跨っていた女性は消えていて、
他の人たちから見たら分からないだろうがゆらゆらとその瞳を揺らせながら私を見ている。


ねぇ、シュウ君のそんな些細な変化にも気付いちゃうほど
もう私は貴方に夢中になっているみたい。



「シュウ様、お慕い申し上げております」



彼を安心させるように微笑んでそう言えば一瞬で私の世界は真っ黒になってしまう。
ぎゅうぎゅうと、もう限界だと言わんばかりにシュウ君に抱き締められていれば漏れる彼の嗚咽と私の苦笑。


うん、頑張ったねシュウ君…私が望んだとおり何も問題起こさないでじっとしてたんだもんね。
一瞬でもこの催しがまんざらでもないのかなって疑った私を許してね。




「シュウ様、」



「花子、それ…やだ。」




彼の背中に手を回して約束通りにぎゅってしてあげながら彼の名を呼べば
変わらず震える声で私を咎めるシュウ君に首を傾げたがすぐに彼の言いたいことが分かった。


けれど訂正する前に少しだけ体を離されてシュウ君がじっと不満気な瞳で私を見つめる。
ああ、もうさっきまでの逆巻シュウ様じゃなくていつもの我儘で甘えん坊のシュウ君だ。




「“シュウ様”って呼ばないで…いつもみたいに、“シュウ君”って、」



「ふふ、シュウ君……お疲れ様」



「ん、花子………だいすき」




彼の言う通り普段通りに応えれば
彼もいつも通りの私への告白と共に唇を優しく塞いでくれた。
同時に湧き上がる周りの黄色い声。



ゆっくりそれが離されればシュウ君はニヤリと自信満々に微笑んで
辺りを見渡し、完全に私を平凡生活からサヨナラさせる宣言を口にした。




「俺はコレにする。」



彼の言葉を聞いた瞬間女性達の悲鳴に交じって聞こえたのは
無神家の歓喜の声とレイジ君の苦笑だった。



嗚呼、どうやら私は真正面から王子様を奪還することに成功したようで…




何だか今まで生きてきた中で一番大胆な行動をしたんだと今更思い返して
ちょっと怖くなってぎゅっとシュウ君に抱き付けば
それが嬉しかったのかシュウ君はホント力加減なしに私を抱き締めてくれた。



あ、あの…嬉しい。
嬉しいんですけど…ちょおおおっと痛いかな!?



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