3:かえりみち


今日も今日とてモリモリお仕事中である。
昨日の出来事が夢だったかのような平凡な毎日だか悲しい事に夢ではないのだ。



あの後いつの間にか眠っていた私はいつの間にかベッドの中にいて、周りを見てみると人の気配はしなかった。

昨夜の出来事は夢かぁと安心していたのだが、綺麗に整頓された資料の隣に置かれたメモ帳で
一気に昨夜の出来事が現実味を帯びて大きなため息をついた。



『可愛い寝顔ごちそうさま。 逆巻シュウ』



一体なんだというんだ。
全く意味が分からないイケメン逆巻君の行動が理解できないがいつまでもグタグタ悩んでいても仕方がない。
今は目の前の仕事に集中するべきだ。


「…よし、」


小さく呟き、気を取り直して再び目の前のキーボードに指を這わせる。



「………これは夢に違いない。」


「何、花子って目あけながら寝るの?」



寧ろ君の方が今にも寝そうですけどね。
心の中でそう突っ込みつつも目の前の現実から目を逸らせない私は悲劇のヒロインである。

日が沈み切った頃、ようやく仕事に区切りをつけ退社したら会社の玄関ホールで待ち構えていた昨夜の彼。
辛うじて立ってはいるがもういつ眠ってもおかしくない位うつらうつらしている。
そんなに眠いならこんな所に居ないで家に帰れよ!


「花子、かえろ?」


ヒヤリとした彼の手が私の手を包み込んでそのままゆっくりと引っ張る。
昨日とは違って私の歩幅に合わせてくれる彼は徐に繋がれた手を自身のコートのポケットに入れる。その流れるような動きに思わずドキリとしてしまい、彼の顔を見上げるときょとんとした彼の顔。


「俺の手冷たいだろ?だからこうしたら暖かいかな…って」


「じゃぁ繋がなければよくない?」


「それはヤダ。花子と手繋ぎたい。」


あ、むくれた。
くそう、格好いいのか可愛いのかどっちかにしてくれ心臓が持たないよ。
昨日から振り回されっぱなしで少し悔しいので仕返しにと繋がれた彼の手を私からもぎゅっと握ってみた。
すると彼の体は一瞬ビクリと揺れてふいっと顔を背けてしまった。
あれ、格好良いとか思ったけど間違いか、やっぱりこの子可愛い。

思わず笑ってしまえば、ご機嫌を損ねてしまったらしく不機嫌な彼は昨夜と同じく唇を奪えばそのままペロリと私のそれを舐め上げる。
そっと離された顔は年下とは思えない位艶やかで、顔に熱が集中してしまう。


「逆巻君っていったい何者…」


「花子の彼氏。」


「即答だしそう言う意味じゃないし私はまだ認めてない!」



ぎゃんぎゃん喚けば「うるさい」とまた再び唇を奪われてしまった。


だから、逆巻君、お願いだから可愛いか格好いいかどっちかにしてください!
私は普通の一般ピープルなのでこんな事されたら心臓がいくつあっても足りないんです!



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