1:毎朝7時に起きましょう


最近俺は寝不足である。
そして筋肉痛でもある。



それもこれも全て今盛大にベッドでねこけてやがる俺の彼女の所為だ。




ピピピピピ…




申し訳程度の目覚ましが爆音で鳴り響く。
けれどやっぱりいつも通りコイツは…花子は目を開けることはない。
そんな彼女を見て俺は盛大に大きな息を吐いて今日も一発目のコイツとの戦いを開催させる。



「おい!花子!!起きやがれ!!!もう朝の7時だぞ!!!!」



「…声大きいよ、ユーマ君。大きいのは背だけにしてよ。背だけに。」



もぞもぞと布団の中で動いてそんな台詞。
よし、今日はどうやら俺に勝機がありそうだ。



「いいから起きろ!!今日は平日だぞ!!!仕事早く行け!!!!」



「…私の一人や二人や500000人いなくなったところで世界は変わらない」



「格好いい事言ってねぇで起きろこのクソダメ人間がぁぁぁぁ!!!!」




全力で体を揺すっても一向に目さえ開けようとしない花子にいい加減堪忍袋の緒が切れて
ベッドから転がり落としてやる。
…けれど花子はピクリとも動かず転がされた冷たい地面の上で更に眠りに入ろうとし始める。


今日は珍しく一声目で返事が来たから俺の勝ちだと思ってたのに!!



小さく舌打ちをして本日も恒例、花子の服を勢いよく脱がせて
テキパキとビジネススーツに着替えさせる。
おかげさまで今や俺の早業はコウのステージの早着替えなんかよりも素早い。



「オラ、顔あげろ」



「重力に逆らうだなんて従順な私には難しい…」



「ホント花子はどうしようもねぇな!!!!」




顔も歯も綺麗に磨いてって最後に化粧をしてやろうと思えばそんな台詞。
花子を見てると逆巻のニートがすごく機敏に動いている気がしてならない。



「あ、やべぇそろそろ出社の時間じゃねぇか。」



…そもそもなんで俺が花子の出社時間に焦らなきゃなんねぇんだよ。



1人心の中でツッコミつつも未だに起きようとしない花子を抱え上げて玄関まで連れていって
朝食の代わりにエネルギー補給のゼリーを片手に持たせて、もう片方にはビジネスバッグを持たせる。
そこでようやくこのダメすぎる眠り姫のお目覚めだ。



「おはよーさん、花子」



「心地い睡眠を私から取り上げる無神ユーマ滅びればいい」



「よし、取りあえず一発殴らせろ」




ゴチンッ!
朝からデカイ音を立てて花子の頭にげんこつを食らわせればようやく虚ろな瞳はいつもの大きなものへと変わる。
ったく…世話かけさせやがって。



「…とりあえず帰ったら昨日寝落ちしたケータイゲームの課金しなきゃ…スペシャルイベントやるんだって」



「その前に仕事をしろそしてちゃんと寝ろケータイゲームの課金しすぎるな今月何万目だよそして彼氏である俺を構え」



「…………ヴァンパイアが人間の常識に捕らわれるとか、ユーマ君頭おかしいんじゃないの?」




日頃の鬱憤をノンブレスで吐き出せば愛しの彼女から盛大のため息とそんな言葉。
それを合図に俺は玄関の扉を勢いよく開けて家主である花子を全力で放り投げた。




「花子はヴァンパイアじゃなくて人間だろーが!!ちっとは真人間になりやがれ!!!!」




ったく!俺がいなきゃアイツ絶対仕事クビになってるし!!
つかそもそも生きていけてねぇだろ。
怠惰なんて言葉じゃ足りない位ダメ人間過ぎる自分の彼女の背中を見つめて盛大に溜息。
…これから家の掃除と洗濯ものと洗いものだ。
俺はルキじゃねぇのに…



「つか俺なんで花子の事好きなんだ?」




彼女の面倒を見るのに寝不足。
彼女を所かわまず運ぶのに筋肉痛。




…あ、やべぇ泣きそうになって来たから深くは考えないでおこう。
とりあえず母の日にはカーネーション位ねだってみるかと考えた平日の早朝。



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