14:ちょきちょき


「……なぁ花子、これ。見えづらくねぇ?」



「切るのが以下略」



「遂にめんどくさいすら言えなくなっちまったのか俺泣きたい。」




彼女の目の半分を遮っている前髪を指摘してやればそんな台詞だ。
俺はもう相変わらずでかい溜息を吐いて花子をぐいっと自身の足の間に引き寄せる。
ようこそサロン・ド・ユーマ様へ。



「ったく、そのままじゃ視力悪くなるからな。ちゃっちゃと切ってやるよ。」



「…目悪くなったら眼鏡付けれるよ?眼鏡プレイできるよ?」



「筋金入りの駄目人間のお前が眼鏡?無理無理ぜってぇしねーだろ。つかなんだよ眼鏡プレイって。」




花子の意味わかんねぇ言葉を軽く流して周りに新聞紙を敷いて鋏を彼女の前髪へと入れる。
…ぶっちゃけこういうの初めてではない。
花子と付き合うようになってからというもの、彼女の髪型はずっと俺が管理しちまってる。



「もうすぐ暑くなるしなー。ついでに後ろも切っちまうか?」



「どっちでもいいよー。セットするのはユーマ君だし。」



「………おい、てめぇでセットするっつー選択肢はねぇのか。」



もう呆れかえってしまってものも言えないが確実に彼女の前髪を整えていけば次第に現れる綺麗な瞳に思わずどきりとする。
…心臓ねぇってば俺。
惚れた弱みってやつが500%位あるけれど、やっぱり花子は可愛いんだって改めて再確認。
…していたけれどそんな事をのんびり考えさせてくれる程コイツは優しいマリア様じゃなかった。



「………おい駄目人間。寝るなつってんだ、」



「………ぐぅ。」



ジョキン。



「うおおおあああああ!?」



花子がお約束通りに眠ってしまい、叩き起こそうとした時
彼女がそのままガクンと前のめりになってしまったから前髪をすっげぇ切ってしまった。


そして響き渡るのは切られた彼女のものではなくて俺の断末魔。


ややややややっべぇ!!やっちまった!
どうすんだよコレ!!眉よりちょっと上まで切っちまったじゃねぇか!
………あ、でもコレ意外に可愛い。
じゃない!!!起きたら俺絶対に怒られる!どうする!どうする無神ユーマ!!



「………カールハインツ様がいるー!!!」



そうだ!あのお方なら時間戻せるって!
こう、ちゃちゃーっと数秒前に戻して頂くだけで良い!
そしたらこの俺の大失敗もなかったことに!俺超頭良い!!



そう思えばもう後は行動に移すだけで
俺は花子を起こさないようにそっと部屋を抜け出してあのお方の元へと猛ダッシュした。





「…へぇ。今回は思い切って切ったねユーマ君。」



「………まぁな。」



「で、なんで10発以上も頭にたんこぶ作ってんの?」



「………ぐすっ。」



数時間後、ようやく起きやがった花子に鏡を渡せば全く怒る気配はなく
寧ろその髪型を易々と受け入れてくれたのにはほっとしている。
彼女の前髪は眉の上で整えられている。



そして俺はカールハインツ様にすげぇ怒られて頭にたんこぶの山を作って花子に抱き付いて泣いている。
…だってそれしか思いつかなかったんだって。
あのお方なら何とかしてくれるって思ったんだって。



「花子、わりぃ。失敗しちまって…」


「…ゆーま君はこの髪形の私はキライ?」



盛大に落ち込みながら謝罪すれば見当違いの質問返しをされて首を傾げる。
あ?キライ?んん?



「嫌う訳ねーだろ?…この髪形も可愛いっつーか…」



「…じゃぁいいや。」


俺の言葉にあっさりとした様子の彼女だがそのままぎゅうぎゅうと花子も腕を回して俺の身体を抱き締める。
あ、なんか心地いいかもしんねー。



「なぁ花子、これからは美容院行けよ。また失敗しちまったらもう…」



「やだよめんどくさい。それに、私はユーマ君の手でユーマ君の好きな髪形になってたいの。」




…ぎゅんっ!



や、だからぎゅんじゃねぇし!つかなんだよぎゅんって!!せめてきゅんっでとどまってろよ俺の乙女心!!
頭ではそんな冷静な事を考えててもやっぱり心は正直単純で
花子のそこ言葉がすげー嬉しくてこれからも彼女の髪型はおれが管理しようって心に決めた真夜中だった。




取りあえず花子が首ガクガク揺らしてもそれに合わせれるようなテクニックを身に着けようと思う。



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