18:きえたい
ふわふわ
わしゃわしゃ
冷たいはずなのにその大きな手もニッコリ笑った顔も
とってもあたたかいの。
まるでおひさまみたいなユーマ君は
穢れきった私を変えてくれるって、思ったの。
「お疲れ様です」
仕事先の同僚に笑顔で会釈をする。
彼女達はそんな私に引き攣った笑顔で作り笑いをする。
ああ、もう…その笑顔、きらいだな。
ユーマ君と離れてもう一か月だ。
彼のお兄さんに全て見抜かれていたのは意外だった。
だって仕方ないじゃない。
あのひとに襲われて…周りにこうして腫れもの扱いをされている私なんかいらないじゃない。
自分で手を下せるほどの勇気はない。
だったらああやって全てユーマ君のものになって事実上私を殺してしまえればよかったのに。
小さく息を吐いて独り帰路へ着く。
彼は…ユーマ君は私の全てを愛してくれると言ってくれた。
酷く嬉しかった…こんな汚い私もまだ愛される資格があるのだと。
けれど、私はそんな優しい愛情に包まれた事が無いから
「ゆーまくん…」
虚ろな私の声に嬉しそう笑って頭を撫でてくれる人はもういない。
全部、ゆーまくんの好きな私でいたかったなぁ…
ゆーまくんが大好きだから、嫌われたくないから、全部全部ゆーまくんの趣味で形成される私でいたかったなぁ…
「きっと、もう…叶わないのだろうけれど。」
自身を嫌うどころか嫌悪してしまっている私の彼への依存心は恐ろしいのだと気付いてはいた。
きっとこんな私のままだと私はおろか、彼さへ潰れてしまう。
狂ってしまう。
彼に嫌われないというのならば害になる私はきっと…
「…うん。…うん、」
ひとりきりで納得して完結する。
丁度いい機会ではないか。
日中は気を遣われ、夜は独りきり。そんな人生、生きてて何が楽しいのだ。
もう私には太陽のような彼に抱き締められることは無いのだから別にいいではないか。
今まで楽しかったのだからもう…
もう、いいじゃないか。
一旦家に戻りユーマ君がいつも使っていたものを持ち、再び出かける。
ああ、今夜は月が綺麗だ。
辿り着いたのは白い花々が咲き乱れる場所。
良い香りがする…ここなら、少しは淋しくはないだろう。
「あー…」
何処がいい?
何処を刺せば即死になるのだろうか…
まぁいいか…誰もいないのだ。
テキトーな所を深く刺して放置していればいずれ逝けるだろう。
どうせ死ぬのなら彼の手が良かった。
けれどもういないので、いつも私の身体を心配して美味しい料理を作ってくれたこの刃物で最期にするの。
咽返るこの香りの中に私の血が混じるのは少しだけ罪悪感を感じてしまうけれど
それは許し欲しい。
誰にも見送られることなく逝くのは淋しいから…ごめんなさい。
心の中で綺麗な花達に謝罪をしてそれを振りかざす。
彼に…ユーマ君の害になる私を消すことが
きっと今の私に出来る唯一の…
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