20:狂気を超えた愛
「全く…心配をかけるんじゃない。」
「…これ以上騒ぎはごめんだ。めんどくさい。」
「ご、ゴメンナサイ?」
何で…なんで俺、ルキとニートに怒られてんだ?
とんでもなく不機嫌な二人に正座させられて見下され続けて約二時間
ルキには約束を破って花子に近付いた事を咎められ
ニートには花子を一瞬とはいえ追い詰めてしまった事を咎められてしまっている。
「花子は不安定だぞ?それでも傍に居るのか?もう間違う事はないか?」
「…ああ、大丈夫だ。俺はもう間違わない。」
ルキは心配そうにそう言ってくれる。
俺と花子を無理に離そうとしけどそれも全部俺達の為を思っての行動だって思うと
うん…やっぱ兄貴の器ってやつだなって、思う。
「ユーマ、花子の事…優しくしてあげて。一度傷付いた体も心も、予想以上に脆い。」
「…知ってる。よく、分かった。」
悲しげな声色のニートの言葉にぐっと唇を噛み締める。
悔しいけど、今は俺よりニートの方が花子の心情を察することが出来るだろう。
きっと花子が一番つらかったときにいた男がこいつなんだ。
でも…いつか、絶対に俺が花子の一番の理解者になりたい。
「俺は不器用だけどよ…でも、うん。それでも花子を愛してっから。」
こっぱずかしい台詞を赤面もせずに言えてしまうのは
それだけ本当に花子を愛してるから。
痺れた足を動かして何とか立ち上がりなんだかんだで世話になった二人に小さく頭を下げる。
すると二人は顔を見合わせて困ったように微笑んだ。
大丈夫、もう間違わない。
「あーユーマ君、もうお説教済んだの?」
「おうよ。つかお前全部解決したっつーのに通常運転かよ。このクソ駄目人間。」
花子の部屋へといつもの如く上がり込めば迎え入れる彼女が寝そべっていたのはベッドの上。
ったく…んだよ。ちっとは動くと思ったのに全くじゃねぇか。
でも、それでも変わった事は多い。
花子の髪型、服装…メイク。
全部今は俺の趣味で構成されたものではない。
出会った時のままの彼女だ。
…すっかり忘れてたけど、俺は確かにこの女に惚れたんだ。
「花子、」
「ん…ユーマ君、今の私は…すき?」
そっと頬に触れれば心地よさそうに目を細めそんな台詞。
俺のこのデカイ手が大好きなのはずっと変わってなかった。
「うるせぇ。好きどころじゃねぇわバーカ。…頭おかしいくらい、愛してる。」
「ふふ…嬉しい。ユーマ君…ありがとう。ユーマ君…ユーマ君…ふふっ」
礼なんか言うんじゃねぇよ馬鹿。
気持ちよそうにこちらに擦り寄りながら何度も俺の名前を呼ぶ彼女の声は
はっきりと人格を持っていて、柔らかくて、甘いのに…とても強い。
なぁニート、俺…お前の知らない花子、見つけたかもしんねぇ。
「?ユーマ君?」
「花子…愛してる…なぁ、もっとコレ、お前に伝えてぇよ。」
花子をそのままベッドへと押し倒してぎゅうぎゅうと抱き締める。
すげぇ好きだし、馬鹿みたいに愛してる。
言葉とか薄っぺらいもんじゃ全然伝えられなくて、不器用で馬鹿な俺が出来る伝え方ってのはもう一つしか残ってないけれど
すげぇ戸惑ってしまう。だってさっき花子に優しくするって誓ったばっかだ。
俺の揺れる瞳をじっと見ていた花子がおかしそうに微笑んで
その小さくて頼んねぇ手を精一杯こちらへと伸ばす。
ああ、ホラ…花子ってさ、意外と…強いんだ。
「ユーマ君、平気だよ?ていうか、伝えてよ。不安症で不安定な私にユーマ君の愛、伝えて?」
「…なぁなぁ、花子チャン。可愛い事言うんじゃねぇよ馬鹿。」
ニートの知らない花子。
強くて優しくて暖かい花子。
花子は俺の事、おひさまだって言うけど、きっとそれは花子の方だ。
不安定で脆いけど…けど、どっか…こういうこと、強いの…すげぇって、思う。
せめてもう泣かせないようにって、出来るだけ優しく唇を塞げば嬉しそうに笑う花子に俺も笑う。
以前とは違う、全てを俺で構成しなくなった花子の変わらないところ。
大きな俺の手だいすきな所。
やっぱりぐーたらな所。
そして…
「ユーマ君、私…ユーマ君が大好き。愛してるの。」
馬鹿みたい俺の事を愛しまくってるって事。
彼女の狂気さえも超えた愛は
酷く暖かくて愛おしくて、それに包まれる俺はいつだってその心地よさに笑顔になるんだ。
なぁ花子、俺だって愛してるから…
俺に与えるだけじゃなくて、俺のも受け入れてくれな?
「花子、愛してる。」
―fin―
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