駄目人間と修羅場
「んー…まぁ人生そんなハッピーエンドで終わる訳ないよね現実辛いね主にユーマ君が。」
「おうチクショウそんな事思ってんならちったー働け。いやもうそれが無理ならせめて歩け駄目人間。」
俺の左手には日用品。
そして右手には恋人。
いやうん、ここで誰でもいいからおかしいってツッコめや。
通行人もぎょっと目を見開くだけじゃなくてこの駄目人間の頭ぶん殴れ。
「っだぁぁぁ!花子!!おめぇ自分取り戻した的なアレだったよな!?なのに何で未だに俺の小脇に抱えられて移動してんだ!あ!?」
「いやいや外見の好みは昔に戻ったけれどやっぱり歩きたくないよねドヤァ。」
何がドヤァだよでもそのドヤ顔かわいい…じゃねぇし!!
あれから…色々あったあの日々から数か月、俺も花子もようやく普段通りの平和な時間を過ごしている。
…過ごしているがいつも通り過ぎっつーかテメェマジでちっとは動け。
「ったく…いつまでもこんなんじゃすーぐデブになっちまうぞ?正真正銘の雌豚だな。」
「?ごはんはちゃんとユーマ君がバランス考えて作ってくれてるから絶対デブにはならないけど?」
「………おう。」
俺の嫌味に真顔で返してきやがった花子に赤面。
くそう、花子にハッパ掛けたかったのになんで俺がお前の事大好きだからきっちり食事作ってることを口にしやがんだよ自覚しちまって顔さっきから暑いわボケ。
すげぇ恥ずかしくなって花子からぷいっと目を逸らしたから
その時、彼女が俺の事をじっと見つめているのに全然気付く事が出来なかった。
「ん、花子。今日はちっと暑いから冷やしそうめんだぜ。あ、栄養はこっちの野菜からとれよ。ん、」
「あ」
ひょい。
ぱくり。
もうこれが普通になっちまってるが、俺がそうめん箸で持てば花子がその小さな口をぱかっと開ける。
そこに本日の料理と放り込めば嬉しそうにもぐもぐと頬張ってくれる彼女にだらしなく顔がゆるむ。
……こんなとこルキに見られちまったら甘やかすなってめちゃめちゃ説教喰らっちまうけど仕方ねぇ。
だって俺も花子のこの嬉しそうな顔が大好きなんだ。
でもちっと以前と少し変わったこともあんだよな。
「ん、ユーマ君あーん。」
「あー」
一通り口を動かした後彼女が自分の箸で食事を取って俺へと向ける。
そんな可愛い行動に俺も素直にデカイ口をあんぐり開けると中に入ったのは俺が作ったそうめん。
以前は俺ばっか花子の世話やいてたけど、今は花子もこんな感じだ。
まぁそれでも99%は俺が花子の面倒見てる事には変わりねぇが…こういうのも進歩だって思ってる。
けれどそんなほんわかした空気を打ち破ったのは意外にも彼女で、
俺はこの後盛大に思考回路が真っ白になってしまうのだが…
「ええとね、ユーマ君。明日、ウチ来ないでね。」
「………は?」
「というか今から出ていって。絶対にもう家に入んないで。後会社の周りにも来ないでと言うかどっかいってて。じゃぁね。」
パタリ。
…………え?
えええええええ!?
え、ちょ、おま…っどういう事だよ!!!
いきなり普段では考えられない位キビキビと動き出した花子にぐいぐいと背中を押されてそのまま彼女の家を追い出されてしまった。
余りにも突然の事で俺はもうどうすりゃいいのかわかんなくて扉の前で唖然だ。
「ちょ、花子!!!おい!どういう事だよ!!!な、はぁ!?なんでいきなり締め出し…オイ返事位しやがれ駄目人間が!!!!」
「おい!!今何時だと思ってるんだ!!!」
「うるせぇ!!!こちとら彼女に捨てられそうな修羅場展開で今にも大泣きそうなんだよ邪魔すんなぶっ殺すぞ!!!!」
ダンダンと、扉を全力でぶっ叩いて大声で喚けば隣人のクソ野郎が空気読めずに怒鳴り出てきたので
こっちはもうホントヤバいくらい焦ってるから人殺しそうな形相でガン飛ばして喚けば小さな悲鳴を上げてすぐにすっこんだ。
「おいいいい!!!花子!!!マジで!!!マジでなんなんだよ!!!なぁんで俺締め出されてんだよ!!!俺なんもしてねぇだろぉぉぉ!?」
何度喚いても彼女は全然出てきてくれなくて
俺の虚しい悲痛な声だけが響き渡った午前3時…
………あ、この時間に叫ぶとそりゃ怒るか。
取りあえず花子が入れてくれるようになったら隣の兄ちゃんに謝りに行こう。
「…ってそれどころじゃねぇわ!!オイ花子!!開けろ!!!開けろって!!!何が悲しくて身に覚えないまま修羅場突入なんだよふざけんな!!!」
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