お世話駄目人間


数日振りに花子の家へと上がれば小さなテーブルに所狭しと沢山の料理が並べられていた。
それら全て俺にとって見覚えのあり過ぎるものばかりで…



「花子、これ」



「ええと、今までユーマ君が作ってくれたごはんの中で特にお気に入りなものを作ってみたの」




じわり
収まってた涙が再び浮かび上がる。
以前花子は俺の作ったものに嫌いなモンはねぇって言ってたけど
もしかしたら逆に好きなもんもねぇかもしれねぇって思ってた。
けれど花子の中でもキッチリお気に入りとかそういうの、あったみたいで…



ぐいぐいと引き続き彼女に引っ張られてテーブルの前に座らされる。
うう、嬉しい。
何よりも花子が俺の作ってる料理を全部覚えててそんなかからお気に入りを俺に自ら作ってくれたことが嬉しくて仕方ねぇ。



「っし!食うか!!イタダキマス」



「だめ」



「………は?」




パチンと俺にしては珍しく行儀よく手を合わせて食事の合図をすれば
手に持った箸をひょいと花子に取られてしまった。
あ?何だよ…まさか見せるだけ見せといて食わせねぇとかそういう特殊プレイ的なアレか?
花子の意味不明な行動に疑問を抱いてれば不意に料理の一つが口の端に触れる。




「今日はね、私がぜーんぶユーマ君のお世話するの。ユーマ君は動いちゃダメ。」



「え、は…はぁ!?」




ぼふんと馬鹿みてぇに顔が沸騰すんのが分かった。
花子が俺の世話やくってアレか…ええと、こうやってメシは食わせてもらうのは最近やってきてるから慣れてっけど
ええと、その、あの…うん。
どうしてもエロい方向へと思考回路が働いてしまい、もんもんとしながら運ばれる食事を口にしてれば
やっぱり予想通り花子から爆弾発言が下されちまう。



「ご飯食べた後はお風呂いれたげるね。」



「や、あの勘弁してくれ花子頼む俺我慢できる自信ねぇから。」




ぶるぶると首を全力で振っても聞いちゃいねぇこの馬鹿野郎はそのまま全力で嫌がる俺をまたぐいぐいと浴槽へと引きずろうとしちまう。
無理!!無理だって!!!
俺絶対花子の事襲う自信しかねぇわ!!大好きな彼女が俺の体洗うんだぞ!?我慢できるかボケェ!!



……ん?花子は毎日俺に洗われてっけど余裕だな。



不意にそんな事を思えば煽り耐性0の俺は意地になっちまってそのまま自らも浴槽へと足を進めてしまった。
花子が平気なのに俺だけムラムラとかありえねぇし!!
俺だってこう…アレだ!!!なんか悟りとか開けるはず!!



「上等だ!!オラ!しっかり隅々まで洗えよ花子!俺だって毎回ムラムラしねぇ大人ってとこ見せつけてやんよ!!」



「………私、ユーマ君のそう言う馬鹿丸出しなとこ結構好きだよ。」




そんな俺の宣戦布告を聞いて花子がすげぇおかしそうに笑った。





………






「うぅぅ…盛大に穢された気分だ」



「失礼な。全部綺麗にしてあげたのに」




風呂上り、火照った体のまま花子にぎゅうぎゅうと抱き付きたかったけれど
今日世話するのは自分だと言って聞かない花子にハグを拒否られちまって俺がぎゅうぎゅうと彼女に抱き締められている。
洗われちまいました、全身、綺麗に、隅々まで。




「どぉぉぉしてくれんだよ馬鹿花子!!オメェの所為で俺色んな意味で超元気だわ!!誕生日に生殺しとかふざけんな死ぬ!!」



「しらないよーそんなの。私に触られて欲情しちゃったユーマ君が若いってだけじゃん。」




彼女の腕の中でぎゃんぎゃん喚けど包み込む腕は解放してくれなくていよいよ本気で辛い俺は最初の感動はどこへやら
今はこのスーパー生殺し拷問タイムに何とか終止符を打ちたくて必死だ。



「おう花子、アレだ誕生日プレゼントくれ誕生日プレゼント。花子がいいから今すぐ寄越せ。」



「うん、あげるよ?でもその前に…っと、」



未だに片腕は俺を抱き締めてっつーか体格的にどうしても花子が抱き付いて見えちまうけれど…
もぞもぞと片手で何かを探って俺の前に差し出した彼女に頭上にハテナマークだ。



「あ?ニートが寄越したボイスレコーダーじゃねぇか。どうすんだ?」



「これをね、カチっとオンにしてだね…いつもユーマ君とお話する以外は面倒だからあんまり声出さないからアレだけど…んんっ」




カチリとレコーダの電源を入れてさらりととんでもねぇカミングアウトしちまった花子に赤面だ。
なんだよソレ。どんだけ俺の事大好きなんだよお前。
そんなに俺とおしゃべりしたいってか?クソ、喉かれるまで喋ってやんよ。
じわじわと胸の内から浮かんでくる花子への愛しさは次の彼女の行動で決壊してしまう。




「はっぴーばーすでーとぅーゆーはっぴーばーすでーとぅーゆー」



「…っ、」




拙い、不安定な歌。
でも俺への愛情は5億点満点入ってるサイコーな歌。
ルキが言ってた泣きながらコイツを使うってこの事だったのか。



声をあげて泣いちまいたいし、今すぐ花子を抱き締めてぇけど
そんな事でこの歌の邪魔をしたくなくて必死に堪える。
今度ニートに俺の野菜いっぱい持っていってやろう。




「はっぴーばーすでーでぃあゆーまくーん」



「〜っ」



ぎゅっと、俺を抱き締める腕に力が込められる。
普段何もしねぇ花子からの沢山のプレゼント。極めつけがこの歌。
ふざけんな、感動でもう死にそうだわ馬鹿。




「はっぴーばーすでーとぅーゆー…ユーマ君、私に出会ってくれてありがとう。私を好きになってくれてありがとう」



「花子…、」




思わず声が出た。
ああ、勿体無い。レコーダーは花子の声だけでいっぱいにしたかったのに。
けれどもう止められない。
今日は俺の誕生日だろ?だったら俺の好きにさせろよ、なぁ、なぁ。



気が付けば彼女をベッドに押し倒していつもの体勢。
組み敷かれた花子の口からはもう自分が世話をするんだという不満は出ない。
代わりに出るのは俺への愛情。




「ユーマ君、好き…だいすき。」



「俺は愛してる」




首に絡められる腕はあったけぇ。
嗚呼、やっぱりシーツじゃなくて本物がいい。
確かめる様にようやく彼女を片腕で抱き締めてレコーダーの電源を空いた手でオフにする。
こっからの花子の声はいくらレコーダーでも聞かせてやんねぇ。



「さて、最後のプレゼントを精一杯愛しつ尽くすか。」



「これじゃぁ私がプレゼントもらってるみたいだね。私、ユーマ君の愛情が何よりもだいすき。」



「うるせぇばーか、もう黙ってろ。」



こうしてふっつーに俺の乙女心を撃ち抜いちまう所も相変わらずで、
もうこれ以上俺をキュン死させないようにその小さな唇を塞いでやった。



どーせ日付が変わればあの食事の後片付けだって、今から優しく抱くこの身体だって
全部俺が面倒見るんだ分かってんよいつもの事だ。
でもそれでも…うん、今回はホント花子に感動で泣かされっぱなしだった。




「おう、花子。お前の誕生日…期待してろよ。」




ちゅっと音を立てて頬にキスをして
今日の為にすげぇ頑張ってくれた最愛にそう囁けば
その笑顔は誰よりも幸せなものへと変わって、俺もそれにつられて笑顔になる。




ああもう…態度だけでも俺をきゅんきゅんさせるの、やめてくんねぇ?



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