4:ぶくぶくおふろ


「俺は今逆巻のニートすげぇ偉いって思ってる」



「え、なんで?シュウ君超穀潰しじゃん。あの子、ちょっとは動くべきだと思う。」



「花子にだけは言われたくねぇと思うけどな!!!」




わしゃわしゃと花子の頭を泡立てながら盛大に顔面を赤くしながら叫べば
俺の声は酷く響き渡ってしまう。



現在花子と風呂場で二人きり。


時間は遡り数分前。




「お風呂って、入ると疲れるからユーマ君が私と二人分はいるべき」



「おい意味の分かんねぇ理屈言ってねぇでさっさと入ってこい湯が冷めちまう。」



当然の様に俺が風呂の用意してやったにも関わらず、花子はそのまま、また眠りにつこうとしていた。
もうお約束の様に溜息をついてやっぱり花子を抱え上げて脱衣所まで運んでやると
今度は花子が溜息をつく番だ。



「…今日はここで寝ろって?んもう、仕方ないなぁ…ちょっと寒いけどまぁいっか」


「よくねぇよ俺は服脱いで風呂入れっつってんだよお前は馬鹿なのかよぶっとばすぞ」


わしっと頭を鷲掴みにして凄んでみてもびくともしない花子はなんともまぁここで爆弾発言しやがった。



「そんなにお風呂にいれたいならユーマ君が入れればいいじゃん」






「くっそ!お前は身の危険とか感じねぇのかよ、俺だって男で花子の彼氏なんだぞ?分かってんのかよ」



文句をいいながらもざばーっと彼女の頭を洗い流せば
ブルブルと犬みてぇに首をぶんぶん振りやがるから水がこっちにまで飛んできちまった。


「…さむいよー。ユーマ君、さむいよー。」



「あーもう!はいはい!わかった!わかりましたよ!!」




うわーん、と力の抜けた声で泣きごとを言いだすもんだから
慌てて抱え上げてそのまま湯船へと入れてやる。
…ババァの介護してんじゃねぇんだぞ俺は。


けれど、彼女のお気に入りの入浴剤をあらかじめ入れていたので花子の顔はご機嫌だ。
…まぁこの顔が見れただけ今回はよしとしようか。



「花子、きもちいいか?」


「うん、ぽかぽかする…あ、でも」



その場にしゃがんで彼女を見つめればへにゃりと笑う俺の駄目人間。
ああ、やっぱ可愛いわお前。


でも花子は何を思ったのかそのまま俺の手をわしっと掴んで
自身の頭に乗せてしまう。
ん?なんだよ。どうしたっつーんだ。


そんな事を考えていれば、花子はそのままぐりぐりと頭を動かし始めてこう言いやがる。



「こうやってユーマ君になでなでされてる方がもっときもちいい…」



「〜〜〜っ!」



本当に気持ちよさそうにそんな事言いやがるから
風呂に入ってねぇのに俺の方が顔を赤くしちまって、そのままべたりと浴室にへたり込んでしまった。
くそ、服濡れちまったし…全部花子の所為だし。



「…100、数えるまで出るんじゃねぇぞ」


「えー」


「えーじゃねぇし…」



頭に添えられた手はそのままに俺の言葉に対して文句を言い始める花子にまた溜息。
全く、コイツはアレだ、俺の心をぐしゃっと鷲掴んでぶっ潰してくるからたちがワリィ…




「ねぇねぇユーマ君、何でさっきから下向いてんの?」



「花子の所為だし…」



結局100までも俺が数える羽目になって
勿論当然様にその後花子の身体もちゃんと拭いて服着せて
そのままベッドへダイブだ。


「なぁ花子…俺にここまでやらせといてなんのご褒美もねぇってか?あ?」



湯上りの桃色に染まった肌に舌を這わせれば彼女の身体はピクリと動いたが
もはやそれまでだ。



「ドリンクバーだけどさぁ…セルフサービスだし、…んじゃぁ」



「は?お、おい、花子…ちょ、」



俺の野生児スイッチは彼女の訳分かんねぇ台詞と共に
中途半端に入っちまったまま放置されてしまった。



今はもう既になんかの夢の中である花子はもぞもぞと俺の腕の中で動くばかりである。
んだこれ…びっくりするほどの生殺しなんだけど。



「くっそ!明日の朝その頭ボコボコにしてやっからな!!!」



もう既に俺の言葉なんか聞いてねぇ花子に対してそんな捨て台詞を吐いて
俺も仕方ねぇから眠りにつく。



だって、明日も平日で…俺は数時間後、またこいつの為に
吸血鬼なのに朝一で起きなきゃなんねぇ。




花子の恋人ってすげぇ大変。



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