5:大人しいと何だか淋しいです(…気のせいでした!)
「今日も先に帰っててね。」
「え、花子ちゃん…?」
ここ最近彼女の様子がおかしい。
いつもなら四六時中ずーっと僕にくっついてスキンシップと言う名のセクハラし放題の彼女なのに全然近付いてこない。
寧ろ避けられている気がする。
学校から帰った後だって、当然のように僕の部屋に夜這いを仕掛けてくるのにここ最近一向に部屋にやってこない。
何かあったのだろうか?
もしかしたらビッチちゃんに何か相談しているのではと思って彼女に聞いてみるけれど、ビッチちゃんも何も知らないようだった。
彼女が僕の傍に居ない、触れてこない日々はさらに続いて僕は不安で押しつぶされそうになっていた。本当にどうしたの?花子ちゃん
何かあったの?それは僕には言えない事なの?
そんなの面白くない。僕はずっと君のモノで君は僕のモノなのに
だんだん胸の奥がもやもやしてきて、嗚呼僕はこんなにも花子ちゃんが大好きで彼女に触れられていないとこんなにも淋しいモノなんだなと実感させられた。
そんなある日、僕がとぼとぼと廊下を歩いているとそこにいたのは愛しい彼女…と
「なん…で…」
彼女と楽しそうに話している無神コウだった。
「そろそろ限界なんじゃないの〜?」
「いやいやまだまだいけますぜコウの旦那…って、ライト君?」
「花子ちゃん…」
力任せに花子ちゃんの腕を引っ張ってその場を後にする。
彼女の瞳に映った僕の顔は嫉妬でぐちゃぐちゃだった。
適当な空き教室を見つけて彼女を放り込み、大きな音を立てて壁へと叩き付けた。
「…っ!ライト・・・君?」
「ねぇ、花子ちゃん。僕に飽きちゃったの…?」
そのまま花子ちゃんを壁に押し付けて顔は俯いたまま言葉を続ける。
きっと今の僕は酷い顔をしているから見られたくないんだ。
「どうして…っ!僕、何かいけない事した?
キミの気に障るような事したかな!?君の事好きになってから他の女の子とも遊んでないし、血だって吸ってないよ!?何、他に何が望みなの!僕が出来ることなら何でも…なんでもするから…
お願いだから僕を置いていこうだなんて考えないでよ…!」
「…………」
僕の必死の訴えにも彼女は何も答えてくれない。
ねぇ、どうして…なんで…!
「ねぇ花子ちゃん、何とか言っ…………え?」
「うぷぷぷぷぷ」
何も答えてくれない彼女に僕は悲しくなって思わず顔をあげてしまった。しかしそこにいたのはボイスレコーダー片手ににまにまと必死に笑いを堪えている彼女だった。
「え、花子ちゃ……え?」
状況が把握しきれていない僕は目を白黒させて混乱していると彼女の片手に収まっているレコーダーの再生ボタンがカチリと押されて、その中に収録されているのは紛れもない…
『僕が出来ることなら何でも…なんでもするからお願いだから僕を置いていこうだなんて考えないでよ…!』
かああああああ!
一気に顔に熱が集中するのが分かる。
そこに収録されていたのは紛れもない先程の切羽詰まった僕の声だった。
「ちょ、何…!?はぁ!?」
「いやぁまさかここまでうまくいくとは思わなかったよ。うふふ。ライト君は本当に私の事だぁいすきなんだね。こんなことならもっと早くに実行するべきだったかな
放置プ・レ・イ♪」
「ほうち…ぷれい…?」
「コウ君に教えてもらったんだよ?いつもくっついてばっかりじゃつまんないでしょ〜?って。嗚呼、でもこの数日のライト君断ちは辛かったなぁ」
ぎゅうぎゅうと、今までくっつけなかった分を補おうと力いっぱい抱き付いてくる花子ちゃんの体温にこんな仕打ちをされていたのにもかかわらず不覚にも安心してしまっている自分が非常に腹立たしい。
「何なのもう…サイテイ…」
安心しきったのか赤くなった顔色が元に戻る事無く僕は赤面しながら声を震わせボロボロと涙を流した。
「ホントに飽きられたんだと思ったんだからね!馬鹿!!花子ちゃんの馬鹿!!」
「ふふふ…でもそんな私が?」
「だいすきだけどね!」
僕の恥ずかしい愛の告白は学校中に響いて
のちにレイジにしこたま説教されたのは別の話。
そして後に、あのボイスレコーダーをネタに
散々彼女の超変態行為に付き合わされるハメになった話は絶対にしない。
結局彼女の虜になってしまった僕が全面的に悪いのです。
―fin―
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