放棄、調教、愛玩


絶対的な主従関係は酷く心地いい。
何故なら自身で考察すると言う行為を行う事無く、絶対君主である主に全てを預ければいいからだ。

決断さえも主に委ねる最も怠惰な生き方といえるであろう。
替わりに主人には絶対的な優越感とその支配欲を満たしてやる。

結局主従関係であってもギブ&テイクなのだ。
この世の仕組みはそう出来ている。


「ああ、よく似合っているな。」


「あり、がとう…」


少しきつめにつけられた革製の首輪。
これも彼が私を所有しているという証の一つ。
満足そうにそれを撫でれば彼の支配欲が満たされている事に満足する。
嗚呼、今日も変わらず私の怠惰な一日が始まる。


彼好みの髪型
彼好みの洋服
彼好みの身体


私のすべては彼で構成されている。
彼の思い通りに動いて啼いて叫ぶ簡単なお仕事。
そこに愛なんて重いものはいらない。


「花子…」


「あ、」


そっと頬を撫でられたかと思えば胸元にその鋭い牙を突き立てられる。
確かそこへのキスは所有だったようだけれど、吸血も同じ意味になるのだろうか
嗚呼、そんなの余計な事か



私は只々彼に与えられる快楽に身を委ねればそれでいい。



小さく声をあげれば咎める様に更に深く深く入り込んできて無言のご命令通り、抑えることのなく大きく喘げばまるでそれは娼婦のよう


満足そうに喉を鳴らす彼は褒美にソレを引き抜いて深く熱くキスを落としてくれる。
嗚呼、すてき…全てを貴方へ委ねて放棄する事の心地よさよ。


「花子…俺の名を、」


「ルキ…ル、キ…ルキ、ルキ…」


強い力で首輪を引っ張られて息苦しくて詰まった声で彼の名を呼び続ける私はバグを引き起こした機械のようで少しばかり笑える。

けれど彼はそれが気に食わなかったのか私の髪を強く引っ張り上げる。
ギリギリと引き上げられて痛みで顔を歪めてしまえばルキの表情は怒りへと変える。


「花子…何を考えていた?俺以外の事を考えるなんて…まだ躾が足りないのか?」


「ごめ、なさ…ごめ…」


「貴様が俺に捨てられたいのなら話は別なのだが…」


その言葉にビクリと体を揺らす。
嗚呼嫌だ、そんな…ルキに捨てられてしまえば私はまた自身で考え、決断しなければいけない。

ゆるゆると首を横に振れば彼は表情を変えないままに私をベッドへと突き飛ばす。
ふわりとルキの香りに包まれたら調教されつくした体は反射的に悦んでしまう。


「主人の機嫌を取るのが愛玩の役目じゃないのか?」


冷たく言い放たれれば絞められている訳ではないのにギリギリと首輪が締め付けてくる感覚にもう私の思考回路も感覚も全ておかしくなってしまっている現実に歓喜する。


嗚呼、求めていたのはこれだ…


身体も思考も心も全部全部貴方で縛り付けてそして私の自我なんて絞め殺してほしい。


「ごめんなさい…どうすれば許してくれる…?」


「そんなもの、自分で…嗚呼、もうそれは難しいか…」


そう、そうよ。
もう私は自分で考えるだなんて高等な事できやしないもの。
だからルキ、お願いよ。
どうかその声で、手で、身体で私に教えて?



私は貴方の望む愛玩になりたいの



愛はいらない。
それは互いに苦しんで悩んで考えて寄り添わなければいけないもの。
だったら都合良い時に、都合の良い快楽だけ貪っていたい、可愛がられたい。



そこに本当のシアワセなんてなくたっていい。
この首輪の様に酷く冷たい結末だって構わない。
只無条件に支配されて心地よければ何だっていい。


また引っ張れる首輪。
もう息苦しささえ酷く心地いい。
ルキが与えてくれるものすべてが心地いい。


「ルキ、私に教えて?貴方が望むこと全て…」



支配されているのは間違いなく私のはずなのに
これは私の唯一で絶対的な命令だ。



「言われなくともこの身体に教え込んでやる。俺のすべてを、」



体のラインをその綺麗な指先で撫でられてしまえばお好みを声をあげる。
いかがでしょうか、この声はお気に召したかご主人様。
瞳で問えば彼はまたその支配欲に満ち満ちた視線で私に応える。


「イイコだな…花子、」


ああ、そろそろ彼の声以外認識する事さえ難しくなりそうだ。
それほどまで私の脳内も心も彼が支配して浸食している。


「ご褒美は何がいい?」そう聞かれても、私が望むものなんて全てルキの望むものなのだからそんなの愚問だ。

余計な事は聞かないで、そう言わんばかりに彼の首に抱き付けば返って来た嘲笑。

どうか今宵もこの愚かで浅ましい家畜の手を引っ張って堕として堕として奈落の底へ叩き付けて。


正反対の熱い私と冷たい貴方の身体。
ぐちゃぐちゃに混ざりあえばぬるま湯のようで酷く心地い。



ホラ、もう全部全部捨てるから
最後は貴方が私を拾い上げて?



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