カナト君の場合
「あ、あの…カナト君、やっぱり私が。」
「だめです、花子さんはちゃんとテディを見ててください」
「うぅ…」
カナト君がいつもよりキリっとした表情でキッチンに立っている。
手にはテディじゃなくてボウルと泡だて器。
肝心のテディは現在私の腕の中。
そう、今日は私の誕生日。
いつもカナト君にお菓子を作っているから、誕生日位はカナト君がつくってくれるって言ってくれたのだけれど
正直不安だし、後…実は淋しい。
こうして私の為にキッチンに立ってくれてるのだって分かってるんだけどその大好きな彼の瞳に私が映ってない事実が酷く寂しいのだ。
「カナト君…」
「駄目ですよ、僕頑張るんですから。」
「うえーん…」
一度何かを決意したカナト君は頑固で、私はしょんぼりしながら預けられたテディをぎゅってして彼の部屋で待機することにした。
「うっうっうっ…カナト君が相手しくれないよぉ淋しいよぅ…ぐす、」
「………花子さんって、本当に僕の事好きですよね。」
「カナト君!」
彼のベッドを、彼のお気に入りのぬいぐるみでいっぱいにして
いつも彼が使っているであろう枕を抱き締めながらめそめそ泣いていれば愛しのカナト君の声。
勢いよく顔を上げれば少しばかり頬が赤いカナト君に思いっきり抱き付いた。
「はい、花子さん。お誕生日おめでとうございます。」
差し出されたのは小さくて可愛い苺のショートケーキ。
そして目の前には可愛い可愛いカナト君の笑顔。
「ありがとう!カナト君、一緒に食べよ?」
「…え?でもコレは、花子さんの為に作ったものだから…」
少し戸惑いがちな彼に私は微笑みかけて
カナト君の手からひょいっとケーキを受け取る。
そしてそのままありがとうのキス。
「私がカナト君と一緒に食べたいの!お願いっ」
「ふふ、お誕生日様の命令じゃ、逆らえません…」
観念してくれたのか、彼はそのまま私と一緒にベッドに腰かけて
お互いニッコリと微笑み合った。
「フォーク、一つしかないから。はい、あーん」
「だーめ。今日は花子さんの誕生日なんだから花子さんが先に食べなきゃ。…はい、どうぞ?」
ケーキを一口分取ってカナト君に差し出せば
ちょっとむすっとした彼がそのフォークを取り上げて、逆に私に差し出してくれた。
こうやって私を優先してくれる事実が嬉しくてくすぐったくて、人生で最高の笑顔と共に最高のシアワセを頬張った。
「カナト君のケーキも愛情もすごく甘くてだいすきっ!」
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