ルキ君の場合
「こっちはどうだ?ああ、こちらも似合うか…」
「あ、あの…ルキ君。」
先程から私は着せ替え人形だ。
誤解を招きやすいけれど、こんな状況にしたのはカナト君ではなく
この可愛らしいお店で完璧に浮いてしまっている目の前のドS参謀なのだけれど…
私の考えをよそに彼は次々に可愛らしいお洋服を持ってきては私に着せていく。
そしてそんな彼を見つめる店員さんはすっかり目がハートマークだ。
仕方ないよね、ルキ君は腹が立つほどイケメンだし外面だけはすごくいいもの。
さっきだって店員さんに話しかけられていたと思えば格好良い笑顔で
「恋人に似合う洋服を選びに来たんです」
と、こっちが赤面してしまう事言ってたし…
ルキ君はどうやら私の誕生日に洋服をプレゼントしたいらしい。
珍しく朝に叩き起こされ多かと思えばぐいぐいとこの可愛らしい洋服屋さんに連れて来られて
もう飽きる位色んな服を試着させる。
…正直疲れるんだけれど、彼の気持ちは嬉しいから黙ってる。
それにしても…
「ルキ君って意外に可愛いのが好きなんだね。」
ホントに意外。
彼自身がいつもシンプルでクールなものや洋服が多いから
彼女の私に着せるのもそう言ったものだと思っていたのに、先程から選んでくるものはどれもこれもとても可愛らしいモノばかりだ。
そんな私の言葉にピタリと手を止めてキョトンとするルキ君は年相応に可愛いと思う。
「意外か?」
「うん、そりゃぁもう。」
素直な意見を口にすれば彼は小さく首を傾げてしまった。
え、そんなに意外って言われるとは思わなかったの?
「可愛らしい花子を愛しているのだから俺は紛れもなく可愛いモノ好きだろう。」
「や、あの…うん、うん…」
何言いだすのこの人。
もう私の顔は真っ赤だよ。店員さん黄色い声あげてるよ。
恥ずかし過ぎて今なら死ねるレベルである。
けれどそんな私をよそに彼はようやく決めたのか、一つのとびきり可愛らしい洋服をチョイスして店員さんに渡す。
そしてお会計を済ませている彼の隣に移動してじっと彼を見つめる。
「どうした?」
「や、どうしてプレゼントが洋服なのかなって」
ルキ君だったら何だか難しそうな洋書とか送ってくれるものだと思ってたからこれもまた意外だった。
するとルキ君は意地悪に笑ってお会計をしているレジの前だと言うのに構わずキス。
「ルキ君!?」
「花子、知っているか?男が女に服を贈るのは淫らに脱がせたいという意味があるらしいな。」
普通の世間話のようなトーンでそんな恥ずかしい事。
やめてよ、やめてよルキ君!もう私これ以上顔赤くできないからね!
恥ずかしくて恥ずかしくて思わず顔を両手で隠せば、彼の大きな手にそれをどけられてしまう。
「コラ、可愛いモノ好きの俺に花子の顔を見せてくれ。」
「もう!今日は私の誕生日なのにどうしてルキ君のペースなの!」
悔しくてポカポカと彼を殴ってみてもしれっとした様子のルキ君。
ムカツクけど非常に格好良い。
不意にぽんぽんと頭を撫でられて、見上げれば優しい笑顔の彼。
「知っている。だから花子に俺をプレゼントしてやろうと言っているんだ。」
「言ってないし!そしてソレどういう意味!?」
「ここで言わせるのか?全く…いつからそんな淫らに…」
「ごめんなさいやっぱり言わないで!」
呆れた様子で台詞の続きを言おうとしたルキ君の口を慌てて、両手で塞げばそのままベロリと掌を舐められてしまった。
びっくりして体を揺らせば彼の口を塞いでいた手は捕えられてそのまま引っ張られてしまう。
そして甘くて低い声色で彼は囁く。
「嗚呼、次は下着屋にでも行くか…誕生日だからな、特別なものがいいだろう?」
「や、あの…もう、好きにしてよ馬鹿…」
「では遠慮なくそうさせてもらおう。」
抵抗しようとしたけれど、スイッチの入ってしまったルキ君を止める人なんて誰もいないのは学習済みで、私は真っ赤になった顔で大きくため息をついた。
どうやら私は今日プレゼントにルキ君を頂くと言う名目で彼に美味しくいただかれてしまうらしい。
「可愛らしい姿で愛らしい声をあげる花子か…楽しみだな」
「お願いだからちょっと黙ってください…」
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