シュウさんの場合


「花子は俺が好きなんだよな?」


「?う、うん…そうだね?」


「よし」



数日前のこの訳のわからない会話が悲劇を産むだなんて誰が想像しただろうか。



「…どこだココ。」


いつも通りすやすやと眠っていればなんだかヒヤリとした感覚で目を醒ます。
するとそこは自分のベッドじゃなくて何処かの舞踏会等で使用されるような豪華なホールだった。


そしてどうしてだか自身の姿を見てみれば真っ白なドレスに身を包んでいて、どうやら髪も綺麗にセットされてるらしい。


え、なにコレ…どういった状況?


「あ、花子。起きた?」


「しゅ、シュウ君!」


キョロキョロと辺りを見渡せば上の方からシュウ君の声が聞こえて見上げる。
すると普段のラフな格好とは違った彼に思わず息を止める。
彼はそんな私を見て意地悪に微笑んだ。


「何?惚れ直した?」


「え、あの…や、うん。って言うか…ここ何処?」


真っ黒なタキシードに身を包んだ彼はすらっとしていてモデルさんみたいに格好良い。


そんな彼に手を取られて立ち上がればようやくあたりの雰囲気を認識できる。
なんだか大勢沢山の人がいるみたい。
え、何かの集まりなのかな…


みんなきらびやかな衣装をまとっているけれど、なぜか白いドレスは私だけで
どうしても浮いてしまっている。


「ねぇシュウ君。おうち帰りたいんだけど…」


「んー…ちょっと待って」


私の言葉に少し考えたそぶりをしたシュウ君はそのまま手を繋いで何処かへと歩き出す。
彼の意図が分からずされるがままにしていれば辿り着いたのは檀上。


え、アレ?どういう事?


キョロキョロと辺りを見れば沢山の人の中に彼の兄弟も交じっているようで、仲の悪いはずのレイジ君が泣きながらハンカチで涙を拭っているのが見えて思わず笑いそうになった。


するとシュウ君がそれに気付いてグイッと私の頬を両手で包み込んで彼の方へと顔を向けさせる。


「今から俺と花子の結婚式なのに他の男とか見ないで」


「…………は?」


彼の核爆弾級の発言に本気で石になりそうな勢いでピシリと固まれば首を傾げるシュウ君。


…いやいやいやいや、全力で首を傾げたいのは私の方だからね!?


何がどうしてこうなったの!?
そんな私を見てキョトンとする彼にわたしもきょとんだ。



「だって花子、俺の事が好きって前言ったろ?」


「は?う、うん…まぁ、言ったね?」



そう言えばこないだそんな会話した気がする。
けどそれがどうしていきなり結婚につながるのか意味わからないし、プロポーズだってされてないし、ああもう頭が混乱してついて行かない。


けれどシュウ君はそんな私をよそに更に爆弾を投下する。


「だから誕生日の今日に俺をプレゼントしようと」


「話が壮大すぎやしませんかねぇ!?」



そんな誕生日に『君の好きなものをプレゼント★』みたいな軽いノリでまさかこんな大それたことするとは誰が思うだろうか!


頭を抱えて座り込みたかったけれど彼に腰を抱かれてしまってそれはかなわない。
そしてずいっと近付いてきたいつもより真剣な顔に思わず心臓が跳ね上がる。



「花子の誕生日に俺の全てをあげる…うけとって?」



ああ、もう…
そんな最高に格好良い台詞言わないでよ馬鹿。


もう私の中の「断る」と言う選択肢がいともあっさり踏み潰されちゃったじゃない。


観念して私は受け入れると言う意味を込めて自ら彼に口付けを落とすと幸せそうに微笑んだ。


「プレゼント、大切にさせて頂きます。」


「ん、いつまでも大切にしてくれよ…?」


二人して微笑み合い、今度は同時に誓いのキスを交わしたのだ。



何気ない会話から起こった悲劇。
それは私が人間社会からサヨナラする物語。



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