溺愛〜カナト君の場合〜
「ひどい…あんまりです」
「…ごめんなさい」
「謝って済むのなら吸血鬼の世界はいりません」
…いやいやいや。
カナト君の訳のわからない言葉に困惑しつつもぼろぼろ涙を流している彼に苦笑。
テディをぎゅって抱きながらじっと私の手を見つめる。
「僕の…僕の大事な花子さんにこんな傷をつけるなんて…酷過ぎる。」
「ええっと…カナト君は私の事が大好きなのかな?」
「何言ってるんですか?当たり前でしょう?今更ですよ、馬鹿なんですか花子さん。」
物凄い暴言を吐かれたけれど、とんでもない愛の告白だ。顔を赤らめながら赤くはれ上がった手の火傷を見つめる。
するとカナト君はゆっくりその手を取ってちゅっと唇を落とす。
ピリっとした痛みに少し顔を歪めるとまたじわりと彼の瞳に涙が溜まる。
「いたいの…?」
「だ、だいじょうぶ…」
「嘘はキライです。」
何度も何度も火傷にキスをされてその度にはしる痛みに今度はじわりと私の目に涙が溜まる。
ようやく解放されたかと思えば今度はその小さな腕にギュッと閉じ込められてしまった。
突然の事でオロオロしていると震える彼の声。
「いつ治るの…?一時間後?明日…?三日後?」
「えっと、わかんない…です、」
「うぅ…ひどい」
私の答えにじわりと肩が彼の涙で濡れてしまう。
泣き虫な彼には悪いけれど、その涙が私の為に流れているのだと思うと嬉しくて仕方ない。
思わず顔を緩めていると不意に顔を上げたカナト君が首を傾げてじっと見つめてくる。
「どうしてこんな怪我…したの?」
「ええとね…」
彼の腕の中でごそごそと動いて小さなラッピングされた可愛らしい箱を差し出した。
それを見たカナト君はきょとんと大きな瞳をパチパチさせる。
「カナト君…ケーキ、好きでしょ?だから手作りしたくて…その時に、」
「僕の為に…?」
「うん、私の作ったお菓子でカナト君が笑顔になってくれたら嬉しいなぁって…でも泣かせちゃったね。ごめんなさい。」
素直な私の謝罪にカナト君は何も言わずに私の手から小さな箱を取り上げて中のケーキを取りだした。
そしてそのまま徐にケーキを口へと運んでくれる。
暫く無言でもぐもぐと口を動かしていたけれど、食べ終わったら涙を浮かべたまま私の望んでいた可愛い可愛い笑顔。
「おいしい」
「カナト君…うえぇぇぇん」
そんなカナト君の優しさに胸がいっぱいになって泣きながら彼の胸に縋り付く。
すると優しく何度も背中を撫でてくれたカナト君が本当にだいすきで、私も彼の背中に腕を回してぎゅうぎゅうと抱き付いた。
「花子さんが僕の為に何かするのは嬉しいけれど…それでこんな怪我されるのは嫌です。」
「うん…うん、ごめんなさい、ごめんなさいカナト君」
なんどもなんども謝ればカナト君はその度に相槌をうってくれる。
そしてひとしきり泣いてしまえばカナト君が優しく涙を拭ってくれた。
「花子さんは僕のなんだから…例え花子さんでも、あなたを傷付けちゃいけません。ね?」
「うん、ごめんね…」
「もういいよ。今回だけは許してあげる。」
ちゅって、お鼻にキスさてれ
それがすくぐったくてぎゅっと目を閉じればそのまま今度は唇にキス。
驚いて目を開けば困ったようなカナト君の顔。
「どうしてかなぁ。花子さん相手じゃ僕はどうしても甘くなっちゃうよ。」
そんなそんな嬉し過ぎる台詞。
私はしあわせなきもちいっぱいで、勢いそのままにカナト君をその場に押し倒した。
そしてそのままぎゅうぎゅう力一杯に彼を抱き締める。
「えへへ、カナト君だいすき。」
「もう、花子さんってば…仕方ないなぁ」
呆れたようにため息をつかれてしまったけれど
カナト君は優しい笑顔のまま甘く囁いてくれる。
「僕だって花子さんの事、だいすきだよ」
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