溺愛〜アズサ君の場合〜


アズサ君と両想いになって数日。
けれど彼は何もしてくれない。手さえ握ってくれないのだ。
いつもいつも一定の距離を保って私の傍に居るだけ。


「ねぇ、アズサ君…」


「ん、なぁに…?花子…」


私が名前を呼ぶととても嬉しそうにニコニコ微笑みながらその距離を詰めてくれる。
けれど決して私に触れてくれることはない。

その事実が酷く悲しくて思わず涙を零してしまう。するとアズサ君は驚いてオロオロと挙動不審になってしまう。


「ど…どうしたの…?なにか、あったの…?誰かに…苛められた…?」


「アズサ君…」


ボロボロと涙を零しているのに彼はそれを拭ってくれることもしない。
ああ、悲しい…かなしいなぁ


「ねぇアズサ君は…私の事…きらいなのかなぁ」


「…どうして?どうして、そんなこと…言うの…?俺は、こんなにも…花子が、好き…なのに…」


今度はアズサ君がポロポロと涙を零してしまう。
お互い止まらない涙を必死に拭いながら、私は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


「だって…アズサ君、全然…触れてくれない…かなしい…さみしいよ…」


「花子…」


私の言葉を聞いたアズサ君が初めてぎゅっと手を握ってくれた。
ヒヤリとしたその感覚に思わずビクリと体を揺らせばアズサ君は困ったように微笑んだ。


「ホラ…花子は、つめたいの…苦手でしょ?…だから、触れなかったの…でも、」


今度はそのままぎゅって抱き締めてくれる。
ああ、やっぱり体もつめたいんだなぁ…でもこうしてアズサ君に抱き締められていると安心する。


「俺が触れなくて…花子が、悲しむのなら…さみしがる、なら…触れてあげないと…ごめんね…?」


「ん、あず…アズサ君…」


ちゅっちゅっちゅ…
今まで触れなかったのを補うかのように額、瞼、頬とキスをされて
最後に何度も何度も唇にキスをされてしまった。

突然のスキンシップの嵐に私は混乱と羞恥で顔を真っ赤にしてしまう。
そんな私を見てアズサ君は本当に嬉しそうに笑う。


「照れてる花子…かわいい」


「やだ、見ないで…」


「どうして…?かわいいのに…ねぇ、花子…俺にそのかわいい顔…見せて…?」


両手で顔を隠せばその手にさえアズサ君の唇が落ちてくる。
観念して恐る恐る手をどければ満足そうに微笑んでくれた。


「ねぇ花子…ベッドに行こう?」


「え…?」


ゆるゆると手を引かれてされるがままに彼の部屋に足を向けながら首を傾げれば可愛らしい笑顔と共に爆弾発言。


「もっとたくさん…たくさん、花子に触れてあげる…そうすれば、さみしくない…よね?」


「え、ま、まって…アズサ君…まって…!」


本能が危険信号を出していて、だらだらと冷や汗を流して必死に足をつっぱっても
その細い身体のどこにそんな力があるのか知らないけれど、ぐいぐいと力強く彼の部屋へと引き摺り込まれてしまう。


「だいじょうぶ…やさしく、シてあげる…ね?」


「うーうーうー…!」


そんなそんな…可愛い笑顔でそんな事。
私は観念して繋がれた手をぎゅっと握り返した。


「よ、よろしく…おねがい、します」


「………花子がかわいすぎて優しくできる自信なくなっちゃった。」


「何で!?あ、でもそのふくれっ面可愛い!」



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