ご奉仕、シて?


「すごい…いつだってその気になれば誰も敵う筈のないシュウさんに勝ってしまった…!に、人間の欲望とは恐ろしいものですね…っ」



「…ちっ。ダーツで花子に負けるとかありえないんだけど。」




ブルブルと感動と動揺で震える体をぎゅっと自身で抱き締めて感嘆の声をあげるけれど
隣のシュウさんはとても不機嫌顔。
だって仕方ないかも…シュウさんの得意なダーツで奇跡が起きて私が勝ってしまったのだ。




的のど真ん中に刺さっているのは私のダート。
シュウさんのダートは切なげに真っ二つになって地面に寝転んでる。




それもこれも今回掛けた罰ゲームが私の全集中力を奮い立たせて先に真ん中に刺さっていたシュウさんのダートを正面からぶち抜いてしまったからなのだが。
だってみたかった…見たかったのだこれだけは!!どうしても!!!




「さぁさぁシュウさん逆巻家長男として…いえ、男として二言はないですよね?ね?ね?」



「…今スグに長男をやめて性転換したい気分だよ俺は。」




キラキラと瞳を輝かせながら彼に詰めよれば諦めてくれたのか長ーいため息をついて悔しげに小さく頷いてくれたからもう大歓喜。


頑張った…頑張った甲斐があるよ!!もうもう!
いつも死んだ魚の目なのに今日は更に死んだ目をしたシュウさんに勢いよく跨って取りだしたのは測定用のメジャー。
ああこれから起こる素敵な時間に胸が高鳴って仕方がない。




「ふふ、シュウさん…じっとしてて下さいね?」



「…はいはい。花子ってほんっと悪趣味だな。…好きにしろ。」




もう今の私に何を言っても無駄だと悟ったのか
シュウさんはまた大きくて長い溜息をついてそのまま静かに目を閉じた。







「…予想以上。予想以上ですよシュウさん!何て可愛らしいんですか私だけの180cmメイドさん!!!」



「…ありがたきお言葉ですゴシュジンサマー。」




数日後、私は目の前の光景にうるうると感激の涙を滲ませながら愛しのシュウさんにぎゅっと抱き付いたけれど
当の本人のシュウさんは全く抑揚のない声で生きながらに死んだような…まさしく生ける屍状態で私の声に応える。


今の彼の姿は普段のモノではなくて、頭には可愛らしいヘッドドレス。クラシカルな黒のロングスカートに穢れをしならない純白のエプロンを纏ってくれている。


そう、あのダーツ勝負で掛けたものと言うのは「敗者はメイド服を着て一日勝者に奉仕する」というモノだったのだ。



きっとシュウさんとしては私に可愛いメイド服でも着せて主従プレイとかそういうえっちな感じに持っていきたかったんだろうけれど
「現実というモノは理想からかけ離れている…だからこそ面白いのだ」ってカールハインツ様も言ってた通りこうなっちゃったのだ。



いかにもイメクラでございみたいな露出度が高いものではなく、正真正銘のシックなものはとてもシュウさんによく似合ってる。
今私は清楚で純情そのものといった感じの自分の彼氏にメロメロなのだ!




「嗚呼、180cmだから大きいサイズを特注してオーダーメイドにして良かったです!!ぴったりですね!可愛い!!」



「くそ…花子が欲望の為に化け物並の集中力が出るとか聞いてない。」




ぎゅうぎゅうと彼に抱き付く腕に力を込めてスリスリと可愛いシュウさんに頬擦りしてれば
上の方からため息が聞こえてそのままちゅって頭にキスされてしまう。
ううん、何だかメイドさんにちゅうされるのって複雑な気持ち。



「うふふ〜さぁて今日は一日メイドのシュウさんに沢山ご奉仕してもらわなきゃ。」



「……ああ、そうだな。ゴシュジンサマにご奉仕するのはメイドの役目だもんな。」



「え」



ぐらりとご機嫌だった私の視界が揺れたかと思えば目の前に広がるのは天井と
私に覆いかぶさって意地悪く微笑んでいるかわいいはずのメイドさん。



「えっと、シュウさん?」



「ほぅら、今日は俺が奉仕してやる。ちゃぁんと、俺が動いてヤるから…な?」




ぶわっと全身に嫌な汗が出るのを感じて慌ててシュウさんの下から抜け出そうとしたけれど
両腕をガッチリ抑えられてるからそれは適わなくて、そのまま深く激しく唇を求められてしまってもはや逃げるどころではなくなってしまった。


え、嘘。まって。ウソでしょう?
私、メイドさんに食べられちゃうの?



ゆっくり唇を離されて妖艶に微笑むシュウさんは、お洋服はとってもかわいらしいのに何だかとってもえっちで、思わずドキリと心臓が跳ね上がった。




「精一杯ご奉仕させて頂きます。花子ゴシュジンサマ?」



くたりと首を傾げた彼の背後に映る窓越しの月が更に彼を妖艶に錯覚させて
私はそのまま、丸一日彼の激し過ぎるご奉仕を受ける為に自らその首へ手を回した。




なぁんだ、結局やる事は勝っても負けても一緒じゃないですか。
ああ、でも…こうやって純白のエプロンを脱がすのは何だか微妙な気分になるので今度からは私が着ようって思う。



やっぱりご奉仕はいつだって彼の従順なお世話係である私の方がお似合いのようだ。



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