秘密の仮面


私が気に入ったのは何の変哲もないただの人間だった。




「ああ、今日も花子と会えるのか…楽しみだ。」




城の中で軽く執務をこなしながらうわ言のように呟けばそのまま顔は緩み笑顔へと変わる。
最近見つけた私のお気に入りの花子は只の人間。
特別な血も魔力もない本当にどこにでもいる餌のひとつだ。



なのに私はそんな彼女に恋をした。




「カールハインツ様…お言葉ですがその、人間などと不要に触れ合うのはいかがなものかと。」



「おや、そうかい?」



おずおずと私に意見したのは数年務めている従者。
その言葉をきっかけに他の者達も次々と花子と触れあう事を反対だと口にする。




「カールハインツ様とあろうものがイブでもない只の餌にご執心だなんて!」



「嗚呼、偉大なる王に人間の香りが移るだなんて虫唾が走る!」



「そうだ!いっそその花子というモノを殺してしまえばいいのではないだろうか!!」




次々と発せられるのは彼女への罵声ばかり。
私はそんな様子を暫く見つめて困ったように小さく息を吐いた。




そしてパチンとならされるのは惨劇の合図。




「はぁ…私はね、だいすきなひとを貶されて黙ってるほどお人よしではないよ?」



パチン、パチン



「ひっ!」



「あぁ!」




指を鳴らすたびに破裂していく醜い頭達。
飛び散る脳髄はビシャリと地面を鮮血で濡らす。



パチン、




パチン



ガタガタと怯え、この場から逃げ出そうとする花子を貶した愚者たちも全て逃さず壊してやれば
辺りに広がるのは全て首より上がない骸ばかりになってしまった。
ああもう、また掃除が面倒だ。



「ひ…っ!ひぃ…っ」




最後の1人が腰を抜かしてしまったのか
四つん這いのまま血の海を必死に泳いでこの場から抜け出そうとするけれど、そんな事させるわけがない。
だってキミが一番花子を悪く言ったのだからね。



「んー、まずはその足かなぁ。」



パチン



「ひぎっ」




指を軽くならせば勢いよく彼の両足が弾け飛ぶ。
だって先に足を失くさないともしかしたら花子を殺しに行ってしまうかもしれないからね。




「ううん、次はその腕。」




パチン



「あっ」




もう一度指を鳴らせば今度は腕。
支えを失くしたその体がビチビチとその場で芋虫の様に這いずりまわる。
だって手も残してしまったらそのまま花子を締め殺してしまうかもしれないもの。




「あ、あ…たす、たすけ…っうぁ…」




「うん、やはり最後はその頭だ。」




ぐしゃり。




「……おやおや。」



「全く、どうにも遅いと思いましたらまたこんな事に…花子が待ってますよカールハインツ様。」



「ううん、最後まで私がしたかったのに、酷いよルキ。」




最後に花子の事を酷く言った口が付いているその顔面と頭を飛ばしてやろうと指をかければ
弾く前に部屋に訪れたルキが溜息と一緒にその男の頭を踏み潰してしまった。
ぶーぶーと唇を尖らせて文句を言いながらチラリと時計を見れば先程までの余裕は一変、さっと血の気が引いてしまう。




「………ルキ、花子怒ってるかい?」



「…怒ってはいませんが少し拗ねています。」



「ううん、困った。」




彼らが余計な事をいうものだから花子との約束の時間を5分過ぎてしまった。
私情で時間を戻すのはあまり宜しくないし…
少しばかりしょんぼりしながら急ぎ足で彼女の元へ向かえばそこに待っていたのは部屋の隅でちまりとしている私のお気に入り。




「う…花子。ごめんよ、ちょっとゴミ掃除してたら時間を忘れてしまってね。」



「………カールハインツ様はゴミ掃除の方が私よりだいすきなんですねわかりました。」



「ああ!違う、違うよ花子。許しておくれ?ね?ね?」




じとりとこちらを睨みつけられて
必死に弁解する私の姿は先程とは別人。
きっとあの姿を花子が見てしまえば彼女は恐れをなして私から離れていってしまうだろう。



「うぅ…花子、どうしたら許してくれるんだい。」



「…カールハインツ様がチューしてくれたら許します。」



「!なんだそんなの私にとってはご褒美じゃないか…ホラ、おいで?」




可愛い花子の提案を素直を受け入れて
そっと手を広げれば飛び込んでくれる彼女にグッと胸が締め付けられる。
嗚呼、この感覚は心地いい。




「?そう言えばゴミ掃除したって割にはカールハインツ様綺麗ですね?どうして?」



「ん?ああ、それはね…?」




私の腕の中でホコリ一つない体に疑問を持ったのかじっとこちらを見つめる花子に対して唇に指をあてて秘密のポーズ。
これは花子には絶対に知られてはならない事だ。




「私は魔法でゴミ掃除しているからね。」




花子は知らなくていい。
残酷で非情な私の顔なんて。



花子は知らなくていい。
彼女を貶すものは全て私が潰していると言う事に。




「魔法でゴミ掃除って…どんだけグータラなんですか。」



「ひどいよ花子!」




花子は知らなくていい。
この穏やかで幸せな空間が数々の死体の山の上に出来ている事なんて。




そう、君は何もしらないまま私の腕の中で微笑んでくれていればいいんだよ?



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