風邪〜ユーマ君の場合〜


「心配すぎる…」



1人の部屋で呟いた私の声に誰も答えてくれることはなかった。
今かぜっぴきの私の為にユーマ君がご飯を作ってくれているんだけれど…まぁ、彼は料理が出来ないという訳ではないのだが何というか豪快だ。


なのでこう…シチューの中にゴロリと野菜がそのまま入っちゃってるんじゃないかと思うと身震いがする。


「おう、起きてて大丈夫かよ。」


「あ、ユーマ君…」


そんな事を考えているとユーマ君がやってきてくれて
ずかずかと徐にベッドの傍の椅子に座って持ってきたものを差し出してくれる。


「ん、食えるか?」


「う、うん…」


ドキドキしながらその料理の蓋を開ければそこにあったのは意外なもので…


「ふ、普通だ!」


「んだよ!俺が料理できねぇって思ってんのか!?」


「ややや違うよ!頂きます!」


怒っちゃったユーマ君に慌てて弁解してパクリとソレを一つ。
それは消化にいいシンプルなおかゆで、じわりと体に染みわたって思わず顔を綻ばせると
彼は嬉しそうにニッコリ笑って乱暴に私の頭を撫でる。


ガクガクと首が揺れてしまえば慌てて、手をどけようとするからスプーンを持っていない手でそれを掴んで頭に再び乗せる。


「もうちょっと優しく…ね?」


「お、おう…」


すると彼はちょっとだけ赤くなりながらも先程よりも優しい手つきで撫でてくれて
私はそれが嬉しくてニッコリと笑いながらまたおかゆを頬張る。


ユーマ君は大きくて力が強いから私を扱う時に力加減が難しいとぼやく。
そして勢いで壊してしまわないように中々私に触れてくれない。
だからこうやって不意に触れてくれるチャンスは逃しかくないのだ。


「ん、ごちそうさまでしたっ!」


「うまかったかよ。」


「うん、すっごく美味しかった!」


そわそわしながら聞いてくるユーマ君はすっごく可愛くて私はまた飛び切りの笑顔でありがとうって言うんだ。
すると彼は徐に真っ赤な林檎とナイフを取りだして、器用にするすると皮をむいてくれる。


「ん、」


「わぁ!可愛い!」


差し出されたお皿には可愛いうさぎさんのリンゴ達。可愛らしいその光景に目を輝かせているとユーマ君は呆れたように笑って
一つそのうさぎさんを取って私の口に近付けた。


「花子は本当に可愛いモン好きだなぁ」


「うん、だからユーマ君もだいすきだよっ!」


「………あぁ?」


…あ、やばい。浮かれてつい本音が…。
だってしょうがないじゃないか。
背がとても高くて迫力美人なクセにシュガーちゃんが大好きで、家庭菜園が趣味で、意外にこういううさぎさんとかも作ってくれるんだもん。
可愛いにきまってるじゃない。


でもユーマ君は私の発言が不服だったのか、ピクリと眉を動かしてゴチンって額をぶつけてきた。


「おうおう、言ってくれるじゃねぇか花子ちゃーん。俺が可愛いってか?あぁ?」


「や、あの…ゆーまく、いたっ!」


ピンとおでこを綺麗な指で弾かれちゃってヒリヒリするそこをさすりながら彼を見やると
どうしてか不敵な笑顔。


「早く風邪、治せ。その後俺がどれだけ野獣かって事を花子の身体に教え込んでやんよ。」


「………私、一生風邪のままがいい。」



ニヤリと意地悪く耳元でそんな台詞は反則だよユーマ君。
私は顔を真っ赤にして、かわいいかわいいうさぎさんを一つ口に含んだ。



「何なら風邪薬口移しで飲ませてやろうか?その後我慢できる保証はねぇけどな。」


「やだよ!恥ずかしいし!そして保証してよ!」



からかい気味な彼の言葉に更に顔を赤くして叫べば、いたずらっ子の様に笑う彼がとってもとっても大好きで。


心の中で早く風邪治してユーマ君の格好いいところを教えてもらうのもいいかなぁだなんて考えてしまった自分に
またぼふんと赤面してしまった。



(「おい、花子…熱上がってねぇか?」)


(「ぜんぶぜんぶユーマ君の所為だもん。」)


(「はぁ!?俺が何したっつーんだよ!」)



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