2:悪魔の書と聖書


「ああん!もうもう!アズサ君は今日も天使だなぁ!!こんな素敵なイケメンの彼女とか光栄すぎて涎しか出ない!!」



「…まぁ占いでは貴様とアズサの相性は最悪だがな。ホレ。」




ずいっ





今日も今日とて愛しの愛しのアズサ君をぎゅうぎゅうスリスリして
嬉しそうな彼の頬に何度もちゅっちゅしまくってれば
げんなりとした表情のたれ目が私の前に占いの本を差し出した。




「あ…本当だ。俺と、花子…さん、さいあく…って書いて…」



「せいっ!」



バリッ!!!



「お、俺の本が…!!」




アズサ君が地獄の使者を5000体位召喚しそうな言葉を言い終わる前に
私はたれ目…ええと、ルキ君からその分厚い本を奪いとり、そのまま真っ二つに引き裂いてやった。
因みにその本の厚さは広辞苑クラスだったけれどそんなの私とアズサ君の愛にしてみれば薄っぺらいチラシ程度である。




「こんなインチキ臭い占い本なんて信じないで?アズサ君!私はいつだってアズサ君の事が大好きだから!!」



「花子さん…っ!ああ、どうしよう…花子、さん…俺、今…すごく、うれしい」




ウウィィィン
バリバリ…ガガッ




「しゅ、シュレッダーに…!シュレッダーにかけるんじゃない!!俺の本!!ああ、シュレッダーが壊れてしまった…!」




数千ページ程あったその悪魔の書をもう二度と見れないようにシュレッダーにかければ機械がもう無理ですと悲鳴を上げて壊れてしまった。
流石悪魔の書。機械さえも破壊するなんて恐ろしすぎる。
私とアズサ君の相性が最悪とか書いてるんだもの…そんなの悪魔の書に違いない。


ルキ君は粉々になった占い本と煙を上げてるシュレッダーを抱きかかえて泣いてるけれどそんなの慰める気にもならない。
というか私はルキ君慰めてる暇があるなら私の言葉に感激してきゅんきゅんと嬉しそうなアズサ君の事をもっとギュってする。




「まぁルキ君の愛読書だけじゃなくてこっちの雑誌もぜーんぶ花子ちゃんとアズサ君の相性サイアクってでて…」



「そい!」




ルキ君と私達を見てたあざとアイドルが嫌味に何十冊もの雑誌を手に笑うので
その手に持ったままの状態で勢いよく点火してやれば「ああああっつぅぅぅう!?」と甲高い断末魔を叫びながら何処かへ行ってしまった。
流石吸血鬼の棲む屋敷だ…悪魔の書が山ほどある。




「全く…油断も隙もない!アズサ君と相性サイアクな訳ないでしょ!!気にしない気にしない!!」



「………、」




ぷんすこと怒り心頭でいればそんな私をじっと見てたアズサ君が徐に立ち上がって何処かへ行ったかと思うと
すぐによたよたと戻ってきてくれてニッコリと私を見て微笑んだ。
右手には油性ペン。左手には雑誌サイズの紙が一枚。



「アズサ君?」



「ふふ…えっと、」




アズサ君が何をするのか分からずに首を傾げてると、彼はその笑みを深めて
徐に机に紙を置き、何かをきゅっきゅと書き始めて。
そして暫くして完成したものを私にゆるゆると見せてくれた。



「はい、俺…と、花子…さんのあいしょう…100ぱーせんと…ええっと、いつまでも…ずーっと一緒に…いれる、こと…でしょう。」



「あ、あず…あずさく…っ」




それは彼お手製の占いページ。
何だかんだで心の底では彼と相性最悪という四文字がのしかかっていた私の事を気遣ってくれたのだろう…
私はそんな彼の優しさに遂に本日一発目の愛おしゲージが振り切れて破壊されてしまった。




「聖書!!聖書がやって来たぞー!!吸血鬼君お手製聖書が私の前に降臨なされたぞぉぉお!ひれ伏せ愚民共!!私とアズサ君の相性100%おぉぉお!」



「ふふ、花子…さん、よろこんで、くれ…た?」



「喜ぶどころじゃないよね!?家宝にして末代まで語り継ぐよアズサ君!!あ、でも末代までって事は子孫つくらなきゃ!!アズサ君に頑張ってもらわなきゃ!!」




彼の手からその聖書を受け取って高々に神が降臨されたかのように恭しく持ち上げれば
そんな様子を見たアズサ君は嬉しそうに微笑んでくれる。
ああ、やっぱりアズサ君は吸血鬼以前に私の天使だ!!



こんな素敵なひとを好きになって本当に良かった!!




「ああもう!アズサ君もっともっともーっとだいすき!!」



ぎゅうぎゅうと折れそうなくらい強く抱き締めれば
彼は本当に嬉しそうに微笑んでくれた。



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