3:魔法の薬


「手に入れた…遂に手に入れたこの秘薬!!」



「………おい花子、教室の隅で逆巻ライトが号泣しているが何をした。」




じとりと私を睨みつけるルキ君の視線なんてこの際無視だ。
私は自身の掌にある可愛らしい小瓶の中にあるピンクの液体に夢中なのだ!




「どっかのエロ本でしか存在しないと思ってた媚薬ゲット!!こ、これをアズサ君に飲ませれば今夜はアズサ君が厭らしく…おおっとよだれが。」



「き、貴様その媚薬もしかしなくとも逆巻ライトから奪い取ったな!?か、返してやれ!!逆巻ライトボロボロだし泣き止まないじゃないか何をやらかしたんだ貴様!!」



大きな怒鳴り声なんて私には全然届いてないよルキ君。
だって今脳内で乱れるアズサ君を妄想するのに忙しいんです私!!
ルキ君のその無駄な怒鳴り声は虚しく教室の窓ガラスをビリビリと揺らすだけだからね。



「よおおし!こうなればすぐにでもアズサ君にこの媚薬をごっくんさせるんだ!!アズサくーん!私のアズサ君どこー!?」



「ささささ逆巻ライト!ウチの野獣がすまない!!今度マカロン作ってやるから今は他の誰かに慰められていてくれ!!俺は弟を守るのに忙しい!!」




猛ダッシュでアズサ君を探しに走りだしたら後ろからルキ君が一生懸命ついてきちゃうけれど
ごめんねルキ君、私アズサ君以外に追いかけられても全然ドキドキしない。




「アズサ君!アズサ君何処!?ごっくんタイムのお時間ですよー!?」



「花子!貴様卑猥な言葉を叫び散らすのをやめろ!!」



真夜中の学校、私とルキ君の大絶叫がこだました。





「そう…俺の事、さがしてくれてたんだ…ごめんね、花子さん…」



「ううん!いいのいいのー!!時間過ぎても居残ってた私が悪いの!!アズサ君は全然悪くないよ!?」




しょぼんとしちゃうアズサ君をぎゅっと抱き締めて全然気にしてない事を伝えれば
彼はそのままスリスリと頬を寄せてきてくれるから私はだらしなく破願してしまう。


どうやらアズサ君は授業が終わってそのまま1人ですぐに家に帰っちゃったみたいで学校にはいなかったみたい。
なので私は二時間ほどアズサ君を名前を叫び散らしながら校内を走り回ってたのだけれど。




「それで…?えっと、俺に飲んでほしいものが…あるん、だよ…ね?」



「うんそう!これ!!甘くないと思うからアズサ君でも平気だと思うよ!?」



おずおずと本題を切り出してくれたアズサ君にずいっと先程を媚薬を差し出して中身が何なのかは言わずにニコリと微笑むと
彼は疑いもせずにそれを一気に飲み干してくれた。
今夜はアズサ君とフィーバーフラグ!!!!



「ん、おいしい…ありがとう、花子さん…ふふ」



「こちらこそありがとうアズサ君!!!」



「?」




ニッコリ微笑んでお礼を言ってくれる彼の両手を包み込んでちょっと息荒く自らお礼を言っちゃえば
私が何でお礼を言ったのか分からない彼はくたりと首を傾げる。
ふふふ、後数分…後数分すれば天使なアズサ君からえっちなアズサ君に…そして今夜は…




そんな事を楽しみにしながらも私とアズサ君は普段と同じく晩餐を口にして
ナイフ君達の手入れを見て…
ぎゅーって抱き締めたり抱き締められたりして



それから…




「ふぁ…今日も楽しかった…おやすみ…花子、さん…」



「うん!おやすみ!!アズサ君っ」





スヤァ




………。





「解せぬ!!!」





うとうとしながら遊び疲れたアズサ君が私のベッドで気持ちよさそうに目を閉じたのを見届けて
部屋の主である私は地を這う声で叫びながら床を叩き付けた。



な、何故だ!!!
アズサ君は媚薬飲んだはずなのにめちゃめちゃ通常運転で天使だった!
一ミリも発情しなかったけど何、媚薬にも不良品ってあるの!?
いや寧ろ天使には媚薬とか爛れたエロアイテムは効かないというのか!!!




「うう、えっちなアズサ君とイチャイチャタイム…」




ぐすっと鼻を鳴らしながら自身のベッドで夢の中な彼の表情を見つめる。
目の前に自身の発情を心待ちにしてた彼女がいるだなんて知らない彼の表情はとても幸せそう…



「まぁ…いっか。かわいいし。」




ふにふにと傷だらけのほっぺを突けば
くすぐったかったのはふにゃーっと微笑みながらも身を捩るアズサ君に苦笑。
んもう、ホント…アズサ君はどこまで天使なのかなぁ。




「おやすみーアズサ君。」



ちゅっと大好きなその唇にキスをして
私も眠くなっちゃったからもぞもぞと彼と同じベッドにもぐりこんでぎゅっとその体を抱き締めて瞳を閉じた。




勿論この出来そこないの媚薬を持っていた帽子がトレードマークっぽい変な語尾の吸血鬼への報復を忘れないまま。





報復後、何かメガネのオカンっぽい棒人間に呼び出されて正座させられた挙句「弟を苛めないでください!」と
めちゃめちゃ説教されたけれどそもそも不良品持ってた帽子が全面的に悪いんだと反論したら説教3時間増えたのでもうちょっとこの眼鏡には逆らわないでおこうって心に決めた夜。



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