4:天使の贈り物


天使と美少女が戯れるある日、事件は起こった。



「だから誰が美少女だこの野獣め…いちいちツッコムのもつかれる。」



「この中で付いてないのは私だけなんだから美少女は紛れもなく私だよねルキ君って頭悪いの?」



「………野獣貴様息をするように下ネタを挟むのをやめろ。」



「ま、まぁまぁルキ君も花子ちゃんもちょっと落ち着いてよ!!今はこの現状の犯人を捜すのが先決だよね!!」



私とルキ君がバチバチと火花を散らしていれば
焦ったようにコウ君が割って入って来たので恨めしげに舌打ちをすればあからさまに傷付いた顔をするけど全然罪悪感とかはない。


まぁアズサ君が傷付いた顔しようもんならそんな顔させた相手をふりかけレベルにまで粉末にしてやる自信はあるけれど。



チラリと彼の言葉に今の惨状を見つめる。
家に帰ってこれば荒れていたのだ。リビングも私達の部屋もそこらじゅう。



「ったく、誰だよこんな事しやがった奴…!くっそ、金目のモンとられてねぇか?」



「そんなものよりもっと大事な、国宝級のモンがあるでしょ!!ユーマ君は脳みそ筋肉な訳!?」



「うお!?な、なんだよ…そ、そんな大事なもんあったか!?」




ユーマ君がめんどくさそうに頭をわしゃわしゃと掻き毟ってそんな馬鹿な発言をしたので
私は鬼の形相で彼に迫って掴みかかると、彼は少し驚いた表情に替わり、ビクビクしながら
国宝級のお宝が何なのか問うてくる。
こ、この…!言葉にしないと分からないとかホント無神家の三男は大馬鹿野郎だ!!


「あるでしょ国宝!!!アズサ君の香りが移った枕とかその繊細な部分を守っちゃってる下着様とか!!いやもしかしたらアズサ君が吸った酸素を真空パックにして持ち帰ったかもしれない万死に値するぜ泥棒め!!!」



「う、うおおおおおけ、警察!!!いやもうカールハインツ様!!!カールハインツ様この犯罪者予備軍ボコボコにしてやってくださいキメェ!!!」



私の心からの叫びにどうしてだか顔面を真っ青にしたユーマ君は私のマブダチに助けを求めるけれど
残念無念。カールハインツ様は初めに言った通り私のマブダチである。
というかそんな事より本当に国宝持ち出されてないか心配すぎる。



そんな事を考えてじわりと涙を浮かべていると
ユーマ君の後ろにいた天使…じゃなかった。いや、あってるけど、アズサ君がぱぁぁって嬉しそうな顔になって
すすすとこちらに寄ってきて私の両手をその細いけれど大きな手で包み込んでくれた。



「花子さんは…真っ先に、俺の…事…心配してくれるんだね…ああ、キミはなんて素敵なひと…」



「あ、アズサきゅん…」



「あず、アズサ君!!天然なのも大概にしないといつかこの化け物にがぶって食べられちゃうよ!!?お、俺達が守ってあげるのにも限界があるんだからね!!!」



すごくいい雰囲気に水を差しちゃったコウ君に腹が立ったので今はアズサ君が私の両手を握ってるから
勢いよく彼の足の間を蹴り上げてやれば声にならない声をあげてその場に蹲ってしまったけれど仕方ない。
天使と美少女の青春ラブラブシーンに割って入ったんだこれくらいの報復当たり前である。



「し、しかし本当に何か取られたものはないのか…?これだけ荒らされてるんだ何か一つくらいある気がするのだが…」



「ええっと…。………っ、」



「え、あ、アズサ君?どうしたの?な、何か取られちゃったの!?え、もしかしてホントに下着!?いや寧ろ毎日使ってる歯ブラシ!?私が欲しい!!!」




キョロキョロと辺りを見回したアズサ君の目が見開かれて
その綺麗すぎるお目目にじわりと涙が浮かんじゃったので慌てて何か取られのか問いただせばそのままぎゅっと抱き締められて
震える声で彼はとられたものを口にした。




「花子さん…が、此処にやってきてくれて…きょうで、一週間…だから…プレゼント、用意…してた、のに…取られてる…うぅ」



「宜しい、ならば撲殺だ。」



「に、逃げろ…地の果てまで逃げるんだ犯人…っ!な、何なら俺が手を貸してやる!!」



事もあろうか優し過ぎるアズサ君の可愛いサプライズプレゼントを盗みやがった顔も知れぬ犯人に殺人予告をしてやれば
どうしてだか弟ではなく犯人を全力で庇う姿勢を見せたルキ君に溜息。
お兄ちゃんなのに加害者庇ってどうすんの!!!!




「んもおおお!あったま来た!!!絶対見つけ出してボコボコにして死よりも恐ろしく苦しい思いをさせてやるんだから!!アズサ君を泣かした罪は重いのよ!!」



「花子さん…俺、が…花子さんを、喜ばせてあげたかった…のに、また…俺が喜んじゃった…大好き…花子さん…だいすき」




ぎゅうぎゅう
すりすり



私の地獄の使者のような恐ろしい声と台詞に感激したアズサ君は
そのまま私を抱き締める腕に力を込めてその可愛いほっぺを摺り寄せてくれる。
んんん、これだけでも素敵なプレゼントなんだけれど…やっぱり彼が用意してくれたものも欲しい。




「待ってろ犯人!!!貴様を体が見れない位たんこぶまみれにしてやんよ!!!」



「に、逃げて!!!犯人どこにいるかわかんないけど超逃げてぇぇぇ!!!!」




私とコウ君の叫びが響き渡る中、逃げるタイミングを失ってた泥棒がビビリ倒してクローゼットの中で咽び泣いていたのはまた別の話。




結局体をたんこぶまみれにしないでくださいと土下座され、何故かルキ君、コウ君、ユーマ君に必死に庇われた泥棒は
もう二度と悪さをしないと誓って解放されてしまったがまぁアズサ君の私へのプレゼントが無事戻って来たのでよしとしよう。





改めてニコニコ嬉しそうな彼に手渡されたのは小さな黒い箱。
彼からの初めてのプレゼントが嬉しくて嬉しくて…




よだれと血涙を流しながら神棚に飾って未だに開けることが出来ない
現在無神家にやってきてから20日目である。



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