5:かわりもの


「花子さん…やっぱり俺の事、きらい…なんだね。」



「おう。どうしてそうなっちゃったの天使君。いやアズサ君。こんなにもアズサ君を愛してる人間なんてそういないと思うよちゅっちゅ。」



相変わらずアズサ君をぎゅうぎゅうと抱き締めて全力でその可愛いぽっぺに頬擦りしてれば
どうしてだか悲しそうな顔でそんな台詞。
ううん、私の愛情がまだ伝わってなかったのか…ならばもはや手加減なしにこの場で襲ってしまっても…おおっと今はまだ早い。


そんな事を考えてればアズサ君の顔は今度は不機嫌なものへと変わってしまい
そのまま私が彼を嫌っていると思ってる原因を呟いてくれる。



「だって、プレゼント…まだ、あけてくれて、ないでしょう?」



「仕方ないよね!だってアズサ君からの初めてのプレゼントだよ!!!?嬉し過ぎて開けれる訳ないよね!!」



「うぅ…やっぱり、おれのこと…きら」



「わああああ!か、開封式!!今すぐ開封式します!!!」



遂にじわりと涙を浮かべてしまったアズサ君に対して大慌てで神棚から彼がくれた黒い小さな箱を持ちだした。


多分こんな高級な外見してるから泥棒も中身確認せずに持ち去ったんだろうけれど…
とりあえず自分の指紋が付かないように白い手袋をはめて消毒して万全体勢でその箱をパカっと開けてみる。
そこにあったのは予想外すぎるもので…



「………鍵?」



まさかと思ってその輝くカギを片手に全力疾走でアズサ君のお部屋の前まで走り抜けて
ぜぇぜぇと肩で息をしてそれを徐に目の前の鍵穴へと挿し込んでみる。




ガチャリ





…………








「はっ!」



「ふふ…花子さん…ようやく正気に…もどったんだね…おはよう」




アズサ君のプレゼントである彼の部屋の鍵で扉を開いた瞬間から記憶が飛んでいるが私は今彼のベッドの上で
彼の枕をぎゅっと抱き締めていて空いてる片手には真空パックである。



「ええと、もしかして私はアズサ君の部屋にお邪魔して一直線にベッドにダイブしてくんかくんかした後枕に顔を埋めてこの空間の空気をお持ち帰り用の真空パックに入れちゃったって感じかな?」



「うん…そう。花子さん…やっぱり、俺の事…だいすき、なんだね。ふふ…嬉しいなぁ」



「そりゃぁもう本能で行動する位には大好きだよ!!」



ぽーいと枕とパックを放り出して嬉しそうに笑ってくれるアズサ君の体を先程の様にぎゅうぎゅうと抱き締めれば
そっと私の背中にも細い腕が回される。その感覚が心地よくて思わず目が細まってしまう。



「最初は気まぐれに…俺をすき…って、言ってるのかな…って思っちゃって…でも、君は…花子さんは、ずっと俺の傍にいてくれるから…もっともっと…って思って…」



「アズサ君…」



「花子さんの気持ちを疑っていて…ごめん、ね?」



綺麗な眉を下げての謝罪の言葉に私の胸はぐっと押さえつけられる。
嗚呼、足りなかったのか。
こんなにも好きと伝えていたつもりだったけれど、もしかして伝えすぎて軽く取られていたのかなぁ?



「アズサ君、すき。だいすきだよ。私は気持ちを抑えるのが苦手だからいつだって叫び散らすけれど全部本気で全力だからね。」



「うん…うん、しってる。今までで思い知った。花子さん、は…俺の事、だいすき…だよね?」



私を抱き締める腕に力が込められる。
嗚呼、なんだかこうしてアズサ君が私を離さないように強く抱き締めてくれるのって初めてかも。




「ただ、ちょっと愛し方が…ひとと、かわってる…だけ…だね。ふふ…」



「かかかか変わってないもおおおん!!!好きな人の為に王様味方に付けたり魔界に進出する位普通だもおおおん!!!」



「やっぱり変わってる…ふふ、俺と…お揃い…だね」



初めての彼の辛辣な言葉にぶわっと涙を零せばアズサ君は嬉しそうに笑う。
自分とお揃いだと嬉しそうに笑う。



「ちょっと変わってる…けど…全力で俺を愛してくれる…花子さんが、だいすき。」



ちゅっと音を立てて唇で涙を掬われて思わず顔がにやけてしまう。
嗚呼、両想いとは何とも素敵で嬉しいものなのか!!
お返しに触れるだけのキスを彼の唇に送れば彼もその表情をへにゃりと緩めてくれるから…もう




もう我慢の限界というモノで。




「アズサ君、お部屋のカギをくれたって事はつまりこういう事も大丈夫だって事だよね!?だよね!?ていうかもう我慢できません!!!」



「俺と、遊びたくなったの?…イケナイ子。」



可愛すぎるアズサ君に可愛い可愛い美少女の理性ちゃんが限界を迎えてそのままアズサ君をベッドに押し倒して
覆いかぶさったままぐっと手首を掴む手に力を込めればまた嬉しそうに笑われてしまう。
ああ、さようなら私の愛しい理性ちゃん。




「アズサ君とイイコトできるなら私は全力でイケナイ子になっちゃいますいっただきまーす!!!」



盛大に喚き散らして彼の体に抱き付いて
そのまま大人の時間である。



ああもう!
どこまでも優しくて可愛いアズサ君が本当に本当にだいすきっ!!
二人で寄り添って抱きしめ合いながら私は幸せの海にひたすら溺れてしまった。




後日、ルキ君が
「アズサの変わってると野獣の変わってるは全くの別ジャンルだろ…というかアズサが遂に修羅の道を選んでしまった…!!」



と、失礼極まりない事を呟いていたので
取りあえず手当たり次第に彼の愛読書を燃やしてみました。



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