1:日曜日
一目惚れなんて、そういうの、正直ねぇって思ってた。
「………」
「今日から一週間だけお前の世話になる花子と言う。よろしくな、スバル。」
突然俺の前に現れたこの花子って女を見て
思わず心臓がドキリと高鳴った。
別に顔が綺麗だからとかじゃなくて…いや、うん綺麗だけど。
なんつーかその、雰囲気と言うかその柔らかい感じに
一瞬で全部持ってかれた。
ふわふわ
にこにこ
只々穏やかに微笑んでいる彼女は今日から一週間、俺の傍に居るらしい。
どういった経緯でこんな事になってしまったのかは正直棺桶で今まで眠っていたから分かんねぇけれど
取りあえず、一週間。
一週間は彼女と一緒に居れるらしい事に、馬鹿な俺は心中で小さくガッツポーズを取った。
「?スバル…どうした、先程からぼうっとして。…私の顔に何かついているか?」
「い、いや!別に…つかお前その喋り方なんだよババァみたいだ。」
花子が固まってしまっている俺の顔をずいっと覗き込んで首を傾げるから
勢いよく後ろに下がって誤魔化してみる。
そして指摘するのは先程から気になっていた花子の口調だ。
なんつーか…落ち着きすぎだろ。
すると彼女はきょとんとしてからケラケラとおかしそうに声をあげて笑いだす。
なんだよ…俺、何かおかしな事でもいったか?
「ふふ、スバル…ババァみたいではないよ。私はババァだ。…そうだな、お前の父上より少し下位だと思ってくれればいい。」
「は…?はぁぁぁあ!?」
彼女の言葉に驚愕の声をあげればまた大きな声で笑い出す彼女を俺は只々呆然と見つめるしかなかった。
すると一通り笑った花子はするりとその白くて細い指を俺の頬へと滑らせる。
「ほうら冷たいだろう?…私もお前と同族だから…仲良くしておくれ。」
「う、う、う、うるせぇババァ!ばーかばーか!!」
「おやおや、初日早々嫌われてしまったか。困ったな…」
ヒヤリとしているはずなのに触れられた部分と胸がグッと熱くなって
俺は好きな相手に暴言を吐いて自室から飛び出してしまった。
嘘だろ!?あんなに綺麗で可愛いのに俺よりすげぇ年上!?
や、違う。綺麗で可愛いとか思ってるけど思ってねぇし!!
いや今はそんな事はどうでもいい。
「やべぇ俺、すっげぇ年増趣味…?」
所構わず走り抜けてようやくその足を止めて小さく呟いた言葉に愕然とする。
いや、そんなはずはない。
俺は至ってノーマルだ。
花子が特別なだけ。
俺の恋した吸血鬼はどうやら俺よりとんでもなく年上の大人って奴らしい。
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