2:月曜日


「これも可愛らしい…ああ、こちらも…スバル、どちらがイイだろうか。ババァに教えてはくれないか?」



「…どっちでもいいんじゃねぇ?」



「ううん、困った…どうしてそんなに不機嫌なのだお前は。」




花子がそう言って困ったように笑うから俺はふいとそっぽを向く。
別に不機嫌な訳じゃない。
ただ、すげぇ照れてるだけだ。


花子が来てから二日目。
互いの親睦を深めようと言い出したコイツは俺を無理矢理棺桶から引っ張り出して
夜のショッピングデートって奴に連れ出した。


はぐれてしまっては怖いからと、何事も無いように俺の腕に絡められるその白い手に余裕なく赤面してしまうし
今は可愛らしい二着の洋服をあてがって俺にどちらがいいかとか聞いてくる。


こういうの…その、恋人みたいじゃねぇか。
初日から花子に恋をしている俺には正直刺激が強すぎてこの瞬間瞬間が嬉しくて恥ずかしくてまるで拷問のようなのだ。



「仕方ない…スバル、こちらを買ってくるから少し待ってておくれ。」


「お、おう…」



こうして短く返事をするだけが精一杯で
そんな情けない自分に酷く呆れかえってしまう。
もっとこう、格好良くキメる事は出来ないものだろうか。
期限は一週間しかない。
その間に花子を俺にときめかせてできればそのまま彼女が何処かへ帰ってしまう前に恋人同士になりたいのだ俺としては。



「スバル、待たせたな。」



「い、いや別に…っておまっ!そそそそその格好!!」



「ふふ、どうだろうか。先程購入したものを着てみたのだが…可愛いか?」



暫くして彼女の声が聞こえたから振り返れば
花子は先程手に持っていた可愛らしい洋服を身に着けていて…贔屓目もあるのだろうがとてもその…アレだ。



「…かわいい。」



「!そうかそうか!スバルに気に入ってもらえて私はとても嬉しい。」



「!う、うるせぇ!!もうここには用はねぇだろ!行くぞ!!」



思わず口に出してしまった言葉に花子は本当に嬉しそうにして笑うから
男の俺がすげぇ照れて勢いよく彼女の手を掴んで足早にその店を出た。
すると俺に引っ張られる花子がまた困ったように笑う。



「スバル、手を握ってもらうのは嬉しいのだが…出来ればもう少しゆっくり歩いてはくれないか?スバルとの初めてのデートだから張り切って新しい靴を履いてきてしまったから正直足が痛いんだ。」



「…っ…っ!おま、おまえっ!そ、そういう…!そう言う可愛い事普通に言ってんじゃねぇよ馬鹿!!」


花子が可愛らし過ぎる事を言いだすからもう俺の顔面は馬鹿みたいに真っ赤だし
絶対彼女の手を握ってる手にもすげぇ汗かいてるし
吐いた暴言も酷い動揺で声が震えまくってる。
くそう、今日は厄日かよ。



「ふふ、スバルは優しいなぁ…」



「…やさしくねーし。」




彼女の願い通り少しばかりゆっくり目に歩いてやれば
花子はまた嬉しそうに笑うから、俺もまた素直じゃねぇ言葉を口にする。



“お前にだけ、特別に優しいんだよ”



そう言ってやれれば花子はきっともっと喜ぶんだろうに
俺って本気でチキンすぎる。



「なぁスバル…私達の親睦は深まっただろうか?」



「…うるせぇ知るか。………花子が深まったって思うんなら深まったんじゃねぇ?」




彼女の言葉に勇気を出して“花子”って名前を声に出してみた。
すると花子はもう何度目かわかんねぇ位また嬉しそうに笑った。



あのな、親睦親睦言うけどな。
俺ン中でお前の好感度、初日からMAXなんだからな。



…多分、っつーか絶対本人は知らねぇんだろうけれど。



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