7:土曜日
「ねぇスバル、最後の日はまたデートがしたいよ。」
「…しかたねーから付き合ってやる。」
だから!なんで!俺はこういう言い方しかできないんだ!!
ホントは花子とデートが出来るのが嬉しいし、今日でこうして一緒に居れるのが最後って言うのスゲェ悲しい…
なのにどうしてもこんな感じで興味ねぇような、仕方なしについて行ってやるぜアピールをしてしまう自分をボコボコにぶん殴りたい。
けれど花子はそんな俺の手をとって嬉しそうに笑っい、そのままぐいぐいと引っ張って駆け出した。
…なぁ、何でお前そんなに可愛いんだよ。
俺より年上って嘘だろホント。
彼女の笑顔につられて俺も小さく笑ってそのまま少しだけ小さな歩幅に合わせて進んでいく。
ああもう、こういうのも今日で最後になるのか。
「なぁ花子、俺、お前に言いたいことが…」
「ねぇスバル、すきだよ。」
………
は?
今から最後のデートだけれど、その前にどうしても自分の気持ちを伝えたくて
告白しようとしたら突然紡がれた彼女の言葉に思考回路も何もかもが真っ白になる。
…おいちょっと待て。お前、今なんつった。
ビシリと固まっていれば不意に頬に触れる冷たい感触に
もはやこの一週間でおなじみとなってしまったが俺の顔は相変わらず赤くなってしまう。
なぁ、そうやって不意打ちにキスすんのって俺の方だと思う。ポジション的に。
「この一週間一緒に居てくれてありがとう。スバルをますます好きになった。私はお前より年上だけれど…スバルを誰よりも愛しているよ。」
「………っ!」
彼女の言葉には少しわからない事があったけれど
それよりもそんな幸せそうな顔で言われてしまってはもうアレだこのまま何も言わないでいれば男がすたるってやつだ。
花子を強く強く抱き締めて初日から抱いてきた気持ちを思いっきり彼女にぶちまける。
「俺だってお前が好きだ…花子、別に年上とかんなの関係ねぇよ。会った時から…ずっと、ずっと」
「ふふ、そうかそうか…嬉しいなぁ。けれど、私の方がスバルを愛していると思うよ。」
「ざけんなよ…俺がどれだけお前を好きか知らねぇくせに。」
彼女の言葉に反論すれば更に「私の方が」と言われてしまい、意地になって俺も「俺の方が」と何度も何度も繰り返す。
そして遂には花子がおかしくまたケラケラと笑ってゆっくりと俺の唇を塞いで意地悪に微笑んだ。
「ねぇスバル。分かっているか?お前先程から私の事がだいだいだーいすきって言っているんだぞ?」
「な…っなぁ…っ!」
「あーあーあー私は幸せものだなぁスバル。んん?」
乗せられた!!!!
ニヤニヤと意地悪に笑う花子を見てさっきまでのやり取りが彼女の誘導だと気付いてしまい
もう限界まで顔を赤くすれば「すまない、スバルが余りにも可愛くてつい」と謝罪されてそのままぎゅっと抱き返されてしまった。
くそ…くそう!最後の最後まで花子のペースかよ!!
心の中で地団駄を踏んでいれば不意に抱き締められていた腕が離れて彼女はまた笑う。
「ほら、スバル。デートをしよう。両想いのデートだよ。」
「………おぅ。」
再び彼女と手を繋いでゆっくりゆっくりと歩き出す。
最初で最後…最初で最後の俺と花子の恋人同士のデートだ。
少しでも長く味わいたくて、二人していつもよりも遅い足取りで道を進んでいく。
「なぁ花子、明日…お前が何処かへ行っても、また…迎えに行く。絶対。」
「…………ん?」
「ん?」
俺の決意した言葉に首を傾げる花子に対して俺も一緒に首を傾げた。
ん?俺、何か変な事を言ったか?
それともここまでが花子のお遊びで好きってのも大人の嘘だったのか?
よく分からなくてずっと首を傾げていれば花子は何かに納得いったのか1人で大きな声をあげてゲラゲラと笑いだす。
「そ、そうか…スバルは私が来た時棺桶で眠っていたものな。そうかそうか…ふふ、ふははは」
「は?おい、花子…ちょ、なん…」
「いや、何でもないよ…そうだな。迎えに来ておくれ…絶対…ぶふっ」
必死に笑いを堪えている彼女の真意が掴めなくて俺は花子と一緒の最終日を
彼女と心行くまで楽しんだ。
…後日、周りが勝手に決めやがった俺の花嫁として
魔界のパーティで花子と再会して度胆を抜かれたのはまた別の話。
(「お試し期間として一週間、スバルと過ごすと言ったはずなんだけれどね」)
(「お、俺!俺!聞いてねぇし!!くそ!誰も教えてくんなかったぞ!!」)
(「まぁ細かい事は気にしても仕方ないよスバル。これからまたよろしくな。」)
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