12:彼女と逆巻家の出会い


「うへへへ、嗚呼やっぱイイわぁ〜…ふわふわわたあめみたいなこの髪たまらんクンカクンカ!」


「コ、コウ!お前ちゃんと花子躾けろ!うぜぇっつってんだよ!」


「ルキ君がイイ声で“人生には諦めが必要なんだ”って言ってた。」



この異様な光景の説明でもしようか。
今俺は花子ちゃんを背中から抱き締めてぎゅうぎゅうと彼女の感触を確かめてる。

そしてそんな花子ちゃんはスバル君を羽交い絞めにしながらクンカクンカと彼の髪の香りを楽しんでいる。

スバル君はじたんばったん暴れているけれど逆巻家限定で超人になる花子ちゃんにかなうはずもなく俺に助け舟を求めている。

…そんな状況だ。

別に花子ちゃんがスバル君を抱き締めててだらしない顔でニコニコしてたってかまわないもんねー。だって今俺は花子ちゃんをぎゅうぎゅう抱き締めてるんだもん。
羨ましくない…羨ましくないんだからねスバルくんなんか!あとで俺もぎゅってしてもらおう!


「そう言えばさぁ花子ちゃんていつからそんなに逆巻さーんって煩くなったの?」


それは純粋な疑問だった。
今や彼女のライフワークとなってしまった逆巻家だがそれがいつどんなきっかけでこんなことになってしまったのか知りたい。

すると花子ちゃんは俺の問いに少しだけ切ない瞳をして小さく息をつく。
え、どうしたの?何か重大な事を聞いちゃったの俺。


「それは…そう、今から1億5000万年前、人と、悪魔、天使がいがみ合い大地と天空が割れた魔界大戦のときに」


「いやそんなスバル君(頭悪い)みたいな発言は求めてない」


「おう、コウ括弧の中逆じゃねぇか?つか馬鹿にしてんのかオイ。」


なんか訳のわからないレジェンドのプロローグを聞かされそうになったのですかさずツッコミを入れて話をぶった切る。
何故か花子ちゃんの腕の中のスバル君が低い声で唸る。


「ちーがーうーでーしょー?逆巻さん達との出会い!さんはいっ!」


「私は息を呑んだ…!美しき色取り取りの薔薇達がその狂気的な牙で麗しき蕾の乙女たちの濡れた本能を抉り出すように…!」


「だーかーらー!スバル君(厨二)発言はいらないってば!」


「いい加減にしろよお前らぁぁぁ!」


相変わらずわけわかんない話をし始めた花子ちゃんに怒ると何故かスバル君が我慢の限界と言わんばかりに暴れ出した。
その反動で彼はようやく花子ちゃんの腕から解放されたのだが、彼女の瞳にはじわりと涙が浮かぶ。
けれど俺は彼女の涙の意味を知っている。

「お、おい…花子?」

「う…ぅ…、コウ君…!」

「うんうん、そうだね花子ちゃん。」


狼狽えるスバル君に
涙を流しながら俺に縋り付く花子ちゃん。
そして死んだ目の俺。


「さっきので累計1万回目のスバルきゅんの反抗期が達成されました…!今夜は赤飯よー!」


「わーいルキ君に知らせなきゃー。」


「は…?はぁぁぁぁあ!?」



もはや棒読みな俺の台詞。
今なら大根役者と言われても反論できないだろう。
つっこまないぞ。何だよ累計一万回の反抗期ってとか
つっこまないぞ。お前いつから数えてたんだとか
つっこまないぞ!なんでそんな下らない事で赤飯だよ!とかさぁ!


「そんな訳で一万回記念にスバルきゅんにコウくんをプレゼント★」


「此処は流石につっこまさせていただきます!なんでだよ!馬鹿!」


「やだコウ君つっこむだなんて卑猥。コウ君攻めだったの?」


「そ う 言 う 意 味 じ ゃ な い !」



むぎゅっと彼女のほっぺを両手で挟み引き攣った笑顔で青筋を立てながら花子ちゃんに迫る。


「前も言ったよね自分の彼氏でホモ妄想すんなって、何スバコウスバ大ブームって?ふざけんなよ前は不覚にも襲われたけど今回はそうはいかないからねお仕置きしてやるから覚悟しなよ?」


「ふふふ…甘い。さりげない息子達への愛情をチラリと見せるカールハインツ様より甘い!」


「結構甘い!ってうわぁ!」


不敵な彼女の微笑みと共にいきなり押し倒されたかと思うと彼女は別の人物に縛られる俺の両腕。
え、アレここにいるのって俺と花子ちゃん以外で言うと…


「ス、スバル君…?」


「頭悪いだとか、厨二だとかよくもまぁ散々言ってくれやがったな無神コウさんよぉ〜」


お、怒ってるー!
そりゃもうすんごい勢いで怒ってらっしゃる…!
俺は数分前の自分の言動に後悔しまくりである。もう俺は今顔面蒼白である。


「ちょちょちょっと待って!今のなし!ノーカウント!リセットボタンを所望する!」


「コウ君、人生にリセットボタンはないの…だから今を精一杯生きなきゃ…ねぇ?」


「ひぃぃぃぃ」


笑顔怖い!花子ちゃんの笑顔超怖いよ!
ボタボタと冷や汗が流れるが必死に助けを求めようとスバル君を見やるが彼はもう既に出口へと向かっていて、一度こちらを振り向き意地悪な笑みを浮かべた。


「ああ、俺は優しいからな。鍵だけは閉めといてやるよ。」


「やだもうスバルきゅんったらそんな貴方にしびれる憧れるぅ★」


「ちょ、ちょっと!ホント調子に乗ってごめんなさいってば!スバル君マジ、お願い助け…っ!」


俺の懇願に彼はむすっとした顔で「べ」といたずらっ子の様に舌を出して一言残して足早にその扉を閉める。


「精々酷くされてろ、バーカ」


「やだやだやだ今回のテーマは花子ちゃんと逆巻さんとの出会いのはず…!」


「うるせぇ黙って私に抱かれてろ」



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