14:ドッキリ☆大作戦!
おはよーございまーす!
現場の無神コウでーす。え、何でこそこそしているかって?
そりゃ今から愛しの恋人、花子ちゃんを寝起きドッキリするからでーす!
いい加減可愛い恋人の姿が見たい俺は強行突破を試みることにしたのだ!
そう、流石の花子ちゃんでも無防備な寝起きならきっと可愛らしい姿を見れるに違いないって思ってさぁ!
ふふふ…そうたとえば…たとえば…
「んぅ…コウ、君?ぁー…コウ君だぁ…えへへ」
とか言いながら笑顔で擦り寄っちゃったりするかもー!
…アレ?俺もしかして花子ちゃんの妄想癖が移ってる?いやいやそんな事無い。
「おじゃましまーす…」
小さくそう呟いて静かに彼女の部屋の扉を開ける。
ベッドの上でシーツが規則正しく上下しているのを確認!
ふふふ、眠ってる眠ってる…!
俺はそっとそのシーツをはぎ取る。見えたのは可愛らしい彼女の顔。
…うん、惚気かもしれないけど寝てたら、黙ってたらホント可愛い。
そんな彼女の寝顔をドキドキしながら見つめていると不意に右腕に衝撃が走る。
え、何?疑問に思い、自分の腕を見てみるとギリギリと白い手に掴まれている。
こ、これはもしかしなくとも…
「えっと、花子ちゃん…?」
俺の言葉に静かに瞳をあける彼女。
その眼は未だに夢から覚めていないのか虚ろだが何故かぞくりと背中に冷や汗が。
これは今までの俺の経験からはじき出された本能の警告だろう。
「………誰だ。」
「ひぃぃぃ!こ、コウ君です!花子ちゃんの彼氏の無神コウ君です!!」
地を這うような低い声で唸られてしまい、上ずった声で自己紹介。
おかしい…!俺が望んだ展開じゃないこんなの!
ガタガタと震えていると花子ちゃんはニヤリと嗤ってまた低い声で囁いた。
「なんだ…淋しかったの…?いいよ、おいで…コウ、」
「や、やだ…そんな普段俺の事呼び捨てになんてしないくせにそんなセクシーな声でそんなそんな…お邪魔しまーす!」
きゅんきゅんどきどきしてしまった俺はもう彼女にメロメロで
そのまま勢いよく寝起きの花子ちゃんに抱き付いた。
「ちっがーう!俺が望んだのは可愛い花子ちゃん!格好いい花子ちゃんはおなかいっぱいなの!」
あれから数時間。
たっぷり寝起きから堪能されてしまった俺はぶーぶー文句を垂れながら次のプランを考える。そう一回失敗したからって諦める俺じゃない!
そ、そうだ!明らかにキャラが違う人物と俺の人格が入れ替わっちゃうドッキリとかどうよ!
きっと混乱しちゃって不安で花子ちゃん泣いちゃうかも!そうすれば遂に可愛い花子ちゃん発動のお知らせ!
と、言うわけで俺はクールで格好いい俺達のイケメン長男に土下座の決意をする。
「ふざけるなよコウ。俺を巻き込むな。」
ギリギリと頭を鷲掴みにされてしまったけれどもう俺は可愛い花子ちゃんを見る為だったらプライドなんかかなぐり捨ててやる!
「で、でもルキ君も見たくない!?女々しくって可愛い花子ちゃん!」
「ふむ…確かに。…わかった、お前に俺の迫真の演技を見せつけてやろう。」
…ん?なんかルキ君の謎のスイッチを押してしまったみたいだけれど
心強い味方を手に入れた俺は満足げに笑った。
「花子ちゃーん!どうしよう!俺、ルキ君と入れ替わっちゃったみたいなんだよ〜!うわーん!」
事情を知らないユーマ君とアズサ君は目の前の異様な光景に真顔で噴出した。
そして俺も限界突破しているが目的のために必死に笑いを堪えている。
くっそ…くっそ!何だこの光景!
「え、ちょ、ルキさん?」
「ちーがーうーよー!俺はコウだよ〜!もうもうもーう!彼氏の事もわかんないの!?」
今作戦決行中のルキ君は花子ちゃんの腰に抱き付いていつもの俺の様に瞳に涙を浮かべながらぎゃんぎゃん泣いている。あの甘いセクシーボイスで泣きわめいている。
これが…これがプロ!
…いやいや違う違う。プロはどっちかって言うと芸能人の俺だから。
心の中でツッコミを入れつつ俺も演技に集中する。
「全く…煩いぞ、コウ。少しは落ち着いたらどうだ。」
いつものルキ君の様に宙を仰ぎ溜息。
そんな俺をじっと見つめた花子ちゃんの口角が少し上がった気がした。
あれ、気のせいかな?
「そっかそっか、可哀想なコウ君…どうしよっかなぁ」
優しい手つきで腰に抱き付いてるルキ君の髪を撫でる。
くっそ、後でどんな気持ちだったか聞いてみよう!羨ましい!
そして何を考えたのか花子ちゃんはルキ君の頬をそのままゆるゆると撫でまわす。
「は?あ…花子、ちゃん…?」
一瞬素になったルキ君が慌てて俺のマネを続行する。
そしてそんなルキ君に事もあろうか花子ちゃんは極上の微笑みで爆弾発言。
「こういうのって何かの呪いよね大体…ああ、呪いは王子様のキスで解けるよね。ねぇコウ君?どんなキスがいい?」
固まってしまったルキ君にだんだんと彼女の唇が近づいてきて
色々限界を突破した俺とルキ君が大きな声で叫んだのだ。
『嘘ですドッキリです!ごめんなさい!』
「やっぱりねー。朝からなんかおかしいとは思ってたのよー。」
「ううう…ごめんなさい。」
あの後俺に利用されていたルキ君は咎めないで俺に二人分のげんこつをお見舞いした花子ちゃんは今俺の腕の中で鼻歌交じりに誰かにメールを打っている。
「だってだって可愛い花子ちゃんが見たくってさぁ〜」
「何言ってるの。私はいつだってコウ君の前ではプリティ美少女じゃん。」
「嘘つき!ダメ!絶対!」
ぎゃんぎゃん喚くけれど彼女は軽くデコピン攻撃をしてきて再び携帯をいじる。
「もー!さっきから誰とメールしてるの!?俺というモノがありながら!花子ちゃんの浮気者!」
「ぷんすこやきもち妬くコウ君萌えー。あ、電話。ハイ、花子です。あ、動画届きました?でしょでしょ?超ウケません?コウ君のマネをするルキさん。もう腹捩れますよね。え、よじれた?あはは流石っす。」
…え、ちょ、ちょっとまって。
花子ちゃんの会話内容に全身の血の気が引く音が聞こえる。
もし今の会話が事実ならば明日の俺の命はルキ君によって抹消されてしまっている。
「あああああの花子ちゃん?ど、動画って…も、もしかして…もしかして…!」
震える俺の言葉にくるりと首だけこちらを振り向き、ニッコリと可愛らしい笑顔。
そして間接的俺への死刑宣告。
「さっきの入れ替わり騒動ね、最初から動画撮ってたの。んで折角だからメル友に送っちゃった☆」
「ちょっとぉぉぉぉ!何してくれちゃってんの!?ていうか今の会話察するに花子ちゃんのメル友めっちゃ笑ってんじゃん!ちょっと貸して!」
焦って彼女の携帯を取り上げて電話の向こうの彼女のメル友を怒鳴りつける。
「ちょ、ちょっとどこの誰かわかんないけど今すぐその動画消して!俺が殺されちゃうから!」
すると応答したのは全く予想していなかった人物に俺はクラリと眩暈がした。
うそだ…誰か嘘だと言ってくれ。
『ふふ…そ、それは無理な相談だねコウ…ふふ、ふふふ…』
「ちょ、花子ちゃん…この人、じゃなかった…この方…もしかしなくても…」
「私のVIPでBIGなメル友さんだけど?」
ガタガタ震える俺の体は更にそのお方の声で震えてしまっている。
もはや携帯のバイブどころではない。
そしてそのまま震える声で泣きながら電話越しに懇願する。
「ご…ごめんなさい…どうか、動画を消してください…カールハインツ様」
もう二度と花子ちゃんにドッキリを仕掛けないと心に誓った夜更けでした。
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