19:BADED大歓迎
俺、無神コウは今ピンチです…。
大ピンチです!
「し…死ぬ〜…」
あの日、花子ちゃんが倒れた日から俺は一滴も血を飲んでいない。
もう限界だ…死んでしまう。
ぐったりとしてしまっているとひょっこりと顔を出す花子ちゃん。
「あれ〜コウ君どったの?死にそうな顔して…」
「花子ちゃん…な、なんでもないよ〜あはは」
「ふーん…」
何とか笑顔を作って彼女に微笑んで見せると
花子ちゃんは気の抜けた声でそう言って何を思ったのか勢いよく俺の口をこじ開ける。
彼女の顔は今とても意地悪な顔だ。
「ふぁ!?」
「よーっし、久々にいくぞぉ〜!」
ガスッ!
「んがっ!」
彼女がそう高らかに宣言すると同時に勢いよく口の中に入って来た花子ちゃんの手
そして花子ちゃんは俺の牙を探し当てて思いっきり指を押し当てる。
「ぅ…、」
「ほーら私の血をお飲みよ〜。なぁんてね。」
おちゃらけてニコニコ笑う彼女とは真逆で今の俺は顔面蒼白だ。
口内にじわりと染み渡る花子ちゃんの血の感触は久々で、思わず理性がぶっ飛んでそのまま吸い尽くしてしまいそうになったけれど
何とか持ちこたえて力いっぱい花子ちゃんを突き飛ばしてしまった。
同時に口の中の指は離れて、口の中に残る鉄の味に顔を歪める。
「な、何考えてるの!この前俺に吸われ続けて死にかけたんだよ!?もう忘れたの!?」
叫び散らしながらも脳裏によぎるあの時の花子ちゃん。
酷く冷たくて、息もしていなくて人形のようだった。
もうそんな彼女は見たくないから、俺は今まで血を吸っていなかったって言うのに。
けれど花子ちゃんは震える俺をみて未だにニッコリ。
「何、コウ君は餓死でもしたい訳?」
「…っ!花子ちゃんが…!花子ちゃんが生きててくれるなら…それで、いい。」
それは彼女が再び俺の前に変わらない笑顔で現れてくれた日に心の中で決心したことだ。
花子ちゃんが変わらず笑っていてくれるなら別にそれでいい。
俺の所為でキミが死んでしまうだなんてそんな悲しい事絶対嫌だ。
そんな事を考えていると花子ちゃんはポンポンと優しく頭を撫でてくる。
思わず彼女の顔を見ればとっても優しくて太陽のような笑顔。
その表情は俺の考えを全部理解しているようで、気が付けばボロボロと涙を零してしまう。
「俺、花子ちゃんを…殺したくない。」
「うん…」
「でも…もう他のヤツの血なんて…吸えない。」
「うん、」
「だったら…だったら…って…!」
「コウ君」
次第に震えてきてしまう俺の声も身体も全部全部ひっくるめてぎゅっと抱き締めてくれる花子ちゃんはまるで聖人のようだ。
嗚呼、どうしてこんなにも愛しい人が覚醒出来ないのだろうか。
どうしてこんなに優しい腕を持つ人が一緒に生きてくれないのだろう。
溢れる涙は止まらなくて、彼女の腕の中で声を上げて泣いた。
すると彼女はうへへ、って相変わらず色気のない声で笑う。
「ねぇ、コウ君。コウ君は私の恋人だよね?」
「?うん…そうだよ。」
彼女の問いにぐずぐず泣きながら答えると、花子ちゃんはまた嬉しそうに笑う。
笑って、静かにまるで子供に言い聞かせるように俺に囁く。
「だったら愛しい恋人のお願い…聞いてくれるよね?」
「花子ちゃん…?」
顔を上げれば彼女は今までで一番綺麗に、優しく微笑んだ。
「私は、どうせ死ぬならコウ君の牙で死にたい。そしてその日が来るまではめいいっぱいこの人生を楽しみたい。笑ってたい。コウ君と一緒に。」
「う…ぅう…花子ちゃ…、花子ちゃぁん…」
ぶわわと、また沢山涙が溢れてしまう。
今きっと俺はアイドルにあるまじき酷い顔なんだろうなぁ。
花子ちゃんはそんな涙をぐいっと拭ってくれて困ったように微笑んだ。
「一緒に幸せになれないならさ、私を幸せに殺してよ。」
そんな悲し過ぎるお願い。
けれど彼女が、花子ちゃんがそれを望むのなら俺に選択肢なんてない。
キミが望むのならこの悲劇を生きている間だけでも喜劇に変えてあげようじゃないか。
花子ちゃんが望むなら可愛くったって格好悪くたって何でも演じてあげるよ。
だって俺はアイドルだもん。一番だいすきな人の人生の一つくらい楽しませてあげれなくてどうするよ。
「わかったよ。いつか…いつか、幸せに殺してあげる。誰よりも幸せに…」
こんなセリフ、まるでプロポーズみたいだなぁ。
そう思うと少しだけ恥ずかしくなってちょっとだけ顔を赤くすれば花子ちゃんは見逃しくれなくて「やだコウ君その表情萌える!」っていつもの様に叫んだ。
そんな大好きで馬鹿で頭おかしい彼女に泣きながらくしゃりと笑った。
ねぇ、限られた時間でもいいや。沢山笑って怒って泣いて幸せな人生にしようね。
だいすき、あいしてる。
(「まぁでも吸われまくってたら慣れるんじゃね?」)
(「え、そんな簡単な感じなの?花子ちゃんって」)
(「や、知らんけど何とかなる気がする。だって萌えという感情は神羅万象万能な感情であってそれでいて…」)
(「…や、うん。ちょっと黙ろうか。」)
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