23:君のキスは俺のモノ!
「最近私にデレられて調子に乗っているコウ君に朗報です。」
「は、始まりから酷過ぎる!ていうか恋人なんだからデレるのが当たり前でしょ!?」
「何と!舞台で白雪姫を逆巻家と出来る事になりましたひゃっほーぅ!キスシーン楽しみ過ぎてハゲるぅぅぅ!」
「話を!俺の話を聞いて花子ちゃん!そして朗報じゃなくて悲報!」
ぶわわって泣きながら花子ちゃんの肩をつかんでがっくんがっくん揺らす。
ちょ、ちょっと嘘でしょ!?嘘でしょ!?
花子ちゃんと逆巻さん達が舞台の上でキ…キスだって!?
「やだやだやだー!誰かに替わってもらってよ!花子ちゃんが他の子とキスとか無理無理俺死んじゃう!」
「仕方ないよねぇ。最近天狗になってた吸血鬼がいけないよねぇ。うふふやだもう舞台上で理性保てるかし・ん・ぱ・い★」
絶望しきっている俺の表情とは正反対でもう今にも天に召されそうな花子ちゃんにぽかぽかと殴りかかるけれど全然効かない。
うーうーうー!いくら演技だって言っても俺以外の…俺以外の奴に花子ちゃんの唇が奪われるなんて…!
「と、言うわけで暫く演技練習するから構ってあげれないの!ごねんねコウ君!」
「うっそ!マジで!?やだぁぁぁ!花子ちゃぁぁん構って構って構って!」
「ぅるせぇ!」
ゴスッ!
我儘っ子の様に叫べばみぞおちに重い一撃。
な、なんなんだよ…花子ちゃんてどっかの格闘家だったりするの…?
その場にへなへな蹲って1人ぐすっとぐする。
けど俺だって今まで只々彼女に振り回され続けている訳じゃない。
人が成長するように吸血鬼だって成長するのだ…!
「い、今に見てろよ…!」
「はぁ?花子の相手役?」
「そう!逆巻さんの誰かって言うのは聞いたんだけどスバル君だったりする?」
俺のおごりであるジュースを啜りながらスバル君は眉をひそめた。
そう、いつまでも呆然と見つめている俺ではないのだ…!
こうなったら本番までに相手役を探して何が何でも俺と替わってもらって本番逆巻家との熱烈なキスを阻止してやる!
「あー…アレ、な…俺じゃねぇ…けど、」
「だ、誰か知ってるの!?教えて!ねぇねぇねぇ!」
「おわっ!ちょ、おまっ、必死過ぎるだろ!」
「当たり前でしょ!花子ちゃんの唇の危機!」
思わず身を乗り出せば驚いたスバル君がビクリと体を揺らす。
そんな彼を気遣う余裕なんて俺は持ち合わせちゃいない。
だって…だってもし、もし相手があの人ならば俺にもはや勝ち目はないのだ。
「えー…あー…アイツ…」
「…………まじで?」
「…………で?いきなりやってきて叩き起こしたかと思えば土下座?どういうことだ?」
「おねがいしますどうか花子ちゃんの相手役を俺と替わってくださいお願いします。」
「…めんどくさい。」
「そこを何とかお願いしますシュウ様ぁぁぁあ!」
シュウ君の腰にがっちり巻き付いて泣き喚けば大きな溜息をつかれてずるずるとそのまま歩かれてしまう。くっそ!なんて力だ!流石ラスボス!大天使!
「お願いだよぉぉぉ…シュウ君と花子ちゃんがキスとかシャレにならないよぉぉぉ同人誌どころか夢小説書いちゃうよ花子ちゃん…」
「あのさぁ…コウ、お前…花子と関わってからオタク用語多すぎて意味わかんない。」
引きずられたまま涙を流し懇願すればそんな台詞。
…いやいやいやいやまさかまさか。
俺がオタク用語とかありえない。オタクアイドルとか切なすぎる。
「別にいいだろ?キス位…舌入れるだけだし」
「まさかのディープキス前提!」
シュウ君の爆弾発言に更に涙腺崩壊である。
無理だし!嫌だし!泣いちゃうし!や、すでに泣いてるけど!
俺にそう言う趣味は無いけれど必死なのでシュウ君に抱き付いてる腕に力を込めてぐりぐりと顔を埋めて懇願。
今これを花子ちゃんに見られたら「やだシュウコウ万歳!」とか言いながら爆発するだろう。
「シュウくぅぅぅん…」
「はぁ…もう、わかった…分かったから…離せ」
「うわぁぁぁん!もうシュウ君流石大天使ー!」
俺のリアクションがよっぽどうざかったのかぐいーっと引きはがしながらそう言ってくれたシュウ君に歓喜の余り抱き付こうとしたら
無表情で思いっきりげんこつを食らわされてしまった。
痛い!でも今はそれよりも初めて花子ちゃんを出し抜けたことの方が嬉し過ぎて仕方ない!
ふふふふ…ざまぁみろ!これで本番王子様として颯爽と彼女の前に現れて舞台で堂々と唇を奪ってやる!
ああーもうっ本番が楽しみで仕方ないよーぅ!
「…………これは一体どういう事だ。」
「俺は別に王子役だなんて一言も言ってないからな。」
わなわなと震える俺。
大きなあくびをしながら眠そうなシュウ君。
そしてじわりと涙を浮かべて叫び散らす。
「だからって白雪姫役だなんて誰が予想できただろうか!」
「あーうるさい…いいじゃないか、花子とキスできるぞー。」
「だからって…だからって…!」
ひらりとスカートを翻してだんだんと地団駄を踏めばシュウ君が顔を歪めて「パンツみえる」って言うから慌てて手で押さえれば徐にその手は綺麗な指に絡め取られてちゅっと唇を落とされた。
驚いてその先を見てみれば格好良すぎる俺の王子様。
「おやおや、私を出し抜こうとして随分と可愛い格好になったじゃな〜い?コウ君。」
「あ、あわわわわ…花子ちゃん、」
今目の前にいるのはいつもの可愛いけれど腐った彼女じゃなくて格好いい王子様だ。
そ、そう言えば前男装でコスプレしてるって言ってた…!
ニヤリと笑う花子ちゃんはそのまま真っ黒いオーラを噴出してガシィっと俺の肩を掴んで引き攣った笑顔を見せる。
「折角のシュウ様とのラブシーンを奪った罪は重い…舞台上で腰が砕けないよう覚悟しておきなさいよ。」
「ひぃ。」
どばっと冷や汗が出たけれどもうすぐ開演時間だ。
俺にもはや逃げ場などないのだ。
今程自分の行動を後悔したことはない。
「おて、お手柔らかに…ね?」
「誰が手加減するかばーか」
そんな悪態をつかれて思いっきり背中を押されて舞台へと飛び出してしまった。
俺の女装姿にエム猫ちゃん達は普段より数倍の大きくて黄色い声を上げる。
し、しにたい…!
チラリと舞台袖を見ればイケメンな笑顔でこちらに手を振る花子ちゃん。
そんな彼女に思わずぼふんと顔を赤らめてしまう。
ううーもう、もう二度と花子ちゃんを出し抜こうなんて浅はかな考えは持たない!
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